アジア経済関連ニュース|イランとロシアがデジタル・トランジット輸送面での協力を拡大
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イラン・ロシア間技術協力の新たな章;20項目の合意内容と5つの契約が成立
ECO経済協力機構の10か年ビジョン文書の最終決定とシルクロード南部回廊の活性化を前に、イランとロシアが5つの技術契約と20の協力協定に署名し、強靭な経済及び地域の多国間主義の実現に向けて大きな一歩を踏み出しました。
アジア経済には過去1週間において、今後10年間の地域協力の構図を一変させうる3つの大きな動きが見られました。それらは第1に、イランとロシアの技術協力がかつてないほど深化したこと、第2に、歴史的な貿易回廊を復活させるECOの10カ年ビジョン文書の最終決定、そして第3に、中国からヨーロッパに至る最も安全かつ経済的な鉄道ルートとしてのイランの役割が強化されたことです。こうした中で、2025年前半にロシアとEU欧州連合の貿易が減少したことでロシアにとって新たな経済パートナーの必要性が浮き彫りになり、またウクライナ和平交渉の結果を待つ中で原油価格が変動しています。
【ParsToday国際】このニュース記事では、ここ数日のアジア経済の動向を分析していきます。
イランとロシアが技術協力を開始:AIから共通市場まで
イランとロシアの主要テクノロジー企業5社が、サイバーセキュリティ、AI人工知能、通信インフラの分野における協力に関する覚書に署名しました。この合意は、3年間にわたる継続的な交渉と両国合同情報技術作業部会の第5回会合の成果であり、「政治関係の黄金時代」を「経済協力の黄金時代」への転換というイランとロシアの決意を示すものです。
イランのメイサム・アーベディ通信情報技術次官は、第3国市場における両国の進出・参入に関する新たな議題に言及し、「この分野での共同契約が来年締結され、第6回会合がテヘランで開催されるよう希望する」と述べました。また、駐ロシア・イラン大使のカーゼム・ジャラーリー氏も、大手グローバル企業におけるイランの若者の役割を高く評価し、民間部門における直接的な協力が「両国の認知度と利益を高める基盤となる」と述べています。
ECOが新たな10カ年戦略を策定、シルクロードの活性化も議題に
ECOは二国間協力の発展と並行して、は2026年から2035年までの10カ年ビジョン文書の最終版が作成されつつあります。イラン外務省のベフザード・アーザルサーECO局長によりますと、この文書の最終版は今後6ヶ月以内に完成し、「世界情勢を踏まえた様々な協力分野」を網羅する見込みとされています。
この戦略文書は、イラン、トルコ、パキスタン、中央アジア諸国を含む10の加盟国を対象とし、航空、陸路、鉄道の回廊の連携に焦点を当てています。アーザルサー局長は。ECOが多国間主義の象徴であることを指摘し、イラン周辺国間の協力に欠けている部分をこの組織を通じて補填できると考えています。
シルクロード南回廊:中国から欧州に至る最も安全な鉄道ルートはイランを経由
イラン、中国、ウズベキスタン、トルコ、トルクメニスタン、カザフスタンの6カ国間の合意に基づき、移動時間の短縮されたシルクロード南回廊が均一料金により開通します。この動向は、アジアのトランジット経済の地理的構造を一変させる可能性があります。イラン鉄道のシャフリヤール・ナギーザーデ対外貿易局長は「イランを通過するシルクロード南回廊は、中国から欧州に至る鉄道貨物輸送において最も安全で経済的なルートである」とコメントしました。
また、中国からヨーロッパ向けに年間6000万トンもの鉄道貨物が輸送されていることに言及し、「これらの貨物のわずか10%でもイランを経由すれば、イランは莫大な経済的利益を得られるだろう」と強調しました。さらに「中国からテヘランへの40フィートコンテナ1個あたりの輸送コストは4500ドル、輸送時間は最大3週間であり、海路に比べて競争力がある」と述べています。
ロシア・EU間貿易が減少、アジアのパートナーにとっては千載一遇の機会
一方、ユーラシア大陸の反対側では、今年上半期におけるロシアとEUの貿易額が、前年比8.3%減の309億ユーロに落ち込みました。ロシアのEU常駐代表部は、ウクライナ紛争勃発以来の両者間の貿易が74%減少したことを明らかにしています。
この急激な減少ぶりは制裁、ロシアのエネルギー資源放棄、そして新たな関税によって引き起こされたもので、この現象によりロシアは貿易相手国の多様化をはかる必要に迫られています。そこで、この貿易ギャップを埋めるための解決策として、対イラン技術協力と南部回廊の活性化がロシアにとっての解決策の1つとなることが見込まれています。
原油価格は平和を待ち望む:米国在庫増加で価格下落
国際原油市場では原油価格が2日連続で下落し、ヨーロッパ産主要銘柄のブレントは1バレル62.46ドルに達しました。この下落は、米国の原油在庫が248万バレル増加したことと、ロシア・ウクライナ和平交渉の行方に対する市場の期待に一致するものです。アナリストらは、緊張が緩和されればロシアの原油供給が増加する可能性があり、それが価格に影響を与えうると見ています。
これらのことを総括すると、この1週間はアジア経済の同調における転換点となったと言えます。イランが経済外交の手腕を駆使し、アジア・欧州間の技術・輸送面での架け橋としての地位を確立した一方で、ECOなどの地域的組織が戦略の刷新により、歴史的な協力のパターンを新たな形で復活させようとしています。一方、ロシアの対EU依存度の低下により、アジア諸国にとって千載一遇の好機が生まれています。イラン・ロシア・中国という枢軸は、ユーラシアの新たな経済構造の主要な柱の一つになりつつあると考えられます。

