イスラエル政権がソマリランドを国家承認することの政治的・安全保障上のリスクとは?
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「アフリカの角」におけるソマリランドの位置
シオニスト政権イスラエルが東アフリカ・ソマリランド地域を国家承認したことを受け、この行動が政治的、安全保障上の危険な結果をもたらすとの警告がなされています。
【ParsToday国際】イスラエルによるソマリランドの国家承認は、その危険な政治的・安全保障上の結果について、地域・国際レベルで否定的な反応を引き起こしています。ソマリアのハッサン・シェイク・マフムード大統領はこの点について「イスラエルはパレスチナ人をソマリアに再定住させようと画策し、また戦略的な水路の支配権の掌握を狙っている。ソマリランドに対するイスラエルのアプローチは、平和的目的とは全く無関係である」としました。また「イスラエルは以前からソマリランドに進出・存在しており、今回の承認は秘密裏に進められてきた関係正常化である」と明言しました。さらに「ソマリランドは同地へのパレスチナ人の定住、イスラエル基地の建設、そして対イスラエル関係正常化を謳うアブラハム合意への参加に同意した」と語りました。
こうした中、南アフリカ外務省は声明で懸念を表明し、「ソマリランドの承認はソマリアの国家主権と領土保全を侵害するものである」と強調するとともに、「シオニスト政権によるソマリランド地域の独立国承認決定はアフリカの角と呼ばれる東アフリカの平和に対する『直接的な脅威』である」と警告しました。またこの声明は「イスラエルの行動は分割を確証するものであり、不安定の連鎖を生み出す危険性がある」としています。
加えて南アフリカ外務省は脱植民地化と分離主義を「明確に」区別し、「前者は主権を回復し、後者はそれを破壊する」ものだとしました。南アフリカはまた、「紛争防止のため独立時に確立された国境を尊重する」というAUアフリカ連合の原則への支持を表明し、国際社会に対し「イスラエルによる外部からの干渉に反対し、統一され安定したソマリアを支援する」よう呼びかけています。
シオニスト政権がソマリランドを国家承認したことは「アフリカの角」地域のみならず、地域全体において広範な政治・安全保障上の影響を及ぼす可能性があります。またこの決定は、ソマリアの国家主権と領土保全を脅かすと共に、地域の緊張の高まりや過激派集団の活動を助長しかねません。
イスラエル政府によるソマリランドの独立国家承認は、国際的に見ても初めての事例です。ソマリランドは1991年のソマリア中央政府の崩壊後に独立を宣言し、過去30年間「事実上の国家」として機能してきました。しかし、国際社会は植民地時代の国境維持の原則および、他の分離主義運動を助長することへの懸念から、これまで承認を控えてきました。イスラエルの決定は、この世界規模での見解の一致を打ち砕き、「アフリカの角」地域における新たな外交危機を引き起こした格好となっています。
さらに政治的な観点から見ると、イスラエルの今回の行動はソマリアの国家主権に直接疑問を投げかけ、同国の中央政府の弱体化をまねく可能性があります。ソマリア政府は、この決定を「国家統一への明白な攻撃」だとし、違法とみなしています。加えてイラン、トルコ、エジプト、サウジアラビアなど多くの地域諸国のほか、アフリカ諸国も、これに強い反対を表明しています。
そして安全保障の観点から見れば、ソマリランドへのシオニスト政権の進出・存在は、「アフリカの角」と紅海における情勢不安と緊張の大幅な高まりを引き起こすと考えられます。この点に関して、紅海を挟みソマリランドの対岸に位置するイエメンのイスラム抵抗組織アンサーロッラーは、ソマリランドにおけるイスラエルの存在を正当な軍事目標とみなすと表明しています。これらの脅威は、地域における軍事衝突と不安定化につながる可能性があります。さらに、ソマリランドは自らが主張する領土の全てを完全には支配しておらず、中南部スール州や北部サナーグ州などでは、地元の反対勢力や武装蜂起に直面しています。イスラエルがこの状況に介入すれば、これらの緊張がさらに悪化し、より広範な内戦に発展しかねないのです。
一方、ソマリランドは地理的には紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡と紅海に近接しており、地政学的に重要な位置にあります。この地域は世界で最も重要な航路の1つであり、イスラエル軍や治安部隊が同地域に駐留すれば、地政学的な競争が激化する可能性があります。地域諸国は、今回の動きがソマリランド沿岸でのイスラエル政権による軍事基地の設置につながり、海上安全保障がさらに脆弱化するのではないかと懸念しています。
総じて言えば、シオニスト政権によるソマリランド国家承認は、アフリカに新たな外交危機をもたらしているとともに、ソマリランド、ソマリア、そして「アフリカの角」地域全体にとって深刻な安全保障上のリスクを引き起こしていると言えるでしょう。イスラエルの今回の行動は不安定化と情勢不安の増大や、地域間の対立の激化に拍車をかけ、既存の国境の尊重に基づく国際秩序を損なう可能性があるのです。

