原油価格
視点:米国産原油価格が空前の下落 シェールオイル産業が崩壊寸前
国際市場の原油価格は、世界の石油需要を減少させた新型コロナウイルスの蔓延とサウジアラビアとロシア間の原油価格戦争という2つの要因により、ここ数ヶ月空前の急落に直面しています。
OPEC石油輸出国機構とその他の産油国から成るOPECプラスが、原油価格の上昇を期待して石油生産量を1000万バレル削減するとした最近の合意にもかかわらず、原油価格の下落傾向が続いています。 これは米国のシェールオイル企業にとって非常に悪いニュースです。
日本経済新聞がニューヨークから伝えたところによりますと、ニューヨーク原油市場で原油価格が初めてマイナスとなる異常事態が起こりました。指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の5月物は一時1バレルマイナス40ドル台と前日より58ドル以上下落しました。5月物の取引終了を21日に控え、原油の現物を引き取りたくない投資家が投げ売りしています。ただ、期先の6月物は1バレル21ドル前後と前日より4ドル安程度にとどまっています。
WTIの原油価格がマイナスとなるのは1983年の先物上場以来、初めてです。このまま期日を迎えれば買い手は原油の現物の引き渡しに加え、現金も受け取ることになります。
この価格の下落は、主要な産油国の生産量削減をめぐる先週の合意が、市場の需要にほとんど影響を及ぼさなかったように思われる中で生じています。と同時に、産出した原油の備蓄スペースが残り少なくなっていることに対する懸念の高まりも、この価格の下落に影響を及ぼしています。
トランプ米大統領は、米国のシェールオイルの大幅な生産増加により、米国が石油の点では独立していると繰り返し強調してきました。しかし、今では米国産原油価格の空前の下落により、シェールオイルの生産継続はもはや経済的にも正当化できるものではなくなり、現在の状況が続けば、企業が破産に追い込まれる可能性があります。原油価格の下落後に米国で最初に倒産した企業は、ノースダコタ州でシェールオイルを採掘するホワイティング ペトロリウム社でした。 市場価格の下落は、テキサス州やノースダコタ州などで経済の停滞を引き起こす可能性があります。英ロンドンのコンサルティング企業エナジー・アスペクツのシニア専門家であるアムリタ・セン氏は、「米国はこの点において、いくつかの方面で深刻な被害を被り、シェールオイル生産企業は甚大な被害を受けるだろう」と述べています。
ロシアとサウジが生産量削減で折り合わず、OPECプラスが合意できなかった後、原油価格は50%も低下しました。米国の基準原油であるWTI(ウェストテキサスインターミディエイト)の価格は、先月6日のロシアとサウジ間の価格戦争が開始される前には1バレル45ドルで取引されていましたが、今月1日には20ドルにまで下がっています。しかし、トランプ政権の圧力により成立した最近のOPECプラスの合意でさえ、原油価格の下落を防ぐことはできず、その後米国産原油は1バレル15ドル未満にまで下落しました。これは、シェールオイル企業にとって決して採算がとれるレベルではなく、このままではこれら企業の経営には暗い未来が待ち受けています。
2018年以降、米国は世界最大の石油生産国となっています。今年3月、米国は市場での原油価格の下落にもかかわらず、1300万バレルの原油を生産しました。トランプ大統領は、2020年11月の大統領選で国民の票を得るため、原油価格の下落とそれに伴うガソリン価格の引き下げを狙っていたものの、歯止めの利かない原油価格の低下が引き起こす損失、特にシェールオイル企業の破産による損失を突き付けられ、、米国が現在の石油戦争の主たる犠牲者となる可能性を考慮し、ロシアとサウジ間の調停を買って出ようとしたのです。
石油市場の専門家によりますと、米国原油の現在の取引価格は、1バレル当たり10ドルから15ドルの間を推移しており、場合によっては、石油企業は倉庫の不足から、顧客に対し費用を払い、さらには無料で石油を供与することさえ行っています。パイオニア・ナチュラル・リソーシーズのスコットシェフィールド所長は、「もし原油価格が下がったままであれば、米国のシェールオイル企業の50%が今後2年間で倒産するだろう」と語っています。
シェールオイルが生産能力を喪失することで、米政府は再び輸入石油に依存することになるでしょう。トランプ大統領は以前、米国はもはや「西アジアの石油を必要としない」と豪語していましたが、シェール石油企業を倒産に追い込むような石油産業の現在の動向は、もはや米国にとって予断を許さないものとなっています。
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