視点
故ケネディ大統領暗殺文書公開の再延期
バイデン米大統領が、故ケネデイ元米大統領テロ暗殺に関連する機密文書の公開の延期を命じました。
これらの文書は、1963年11月22日に米テキサス州ダラスにてリー・ハーヴェイ・オズワルドにより暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領の死から58年が経過しようとする中で、来週公開されることになっていました。
ドナルド・トランプ前米大統領も2018年に、安全上の理由からケネディ大統領暗殺関連の文書の公開を、今年10月26日まで公開しないよう命じていました。もっとも、バイデン現大統領は声明の中で、資料を2022年末に公開する旨を約束しています。
ケネディ大統領暗殺関連文書の公開の再延期は、改めてこの事件に関する不透明さ・疑惑に拍車をかけています。法的には、この文書の公開を差し控えるべき理由は全く存在しません。1992年に可決された「JFK暗殺記録収集法」により、これらの資料は全て25年以内、すなわち2017年10月までに公開されるはずでした。しかし、この法律は一部の事例において、資料公開における公共の利益よりも国家安全保障に関する懸念が勝るケースにおいては、これらの資料の公開の延期を許容していました。
現在までに、ケネディ氏暗殺から数十年が経過しても、なぜアメリカ政府がこの事件の語られざる側面を公開しようとしないのか、またそれよりも重要な事柄として、どの治安・政府系機関や人物がこの暗殺事件に関与し、今なお何故隠されたままとされねばならないのか、もしくはそれらの公開がバイデン大統領の主張するとおり、アメリカにとっての損害となるのか、という大きな疑問が浮上していますが、今なおこの疑問には回答が示されないままとなっています。
こうした中、アメリカ合衆国の建国から現在までに、同国では4人の大統領がテロ暗殺されていますが、中でもケネディ氏の暗殺に関しては今なお曖昧な点が多く存在します。2017年以降の資料公開許可が出されたにもかかわらず、第35代米国大統領たるケネディ氏暗殺の中のどのような秘密が、その後58年経った現在もなお語られぬままとなっているのかが問われる必要があります。ケネディ氏暗殺の隠蔽工作の理由が、特定の個人の威信や面目維持のためであれば、この事件の容疑者や首謀者は58年経った今は既にこの世にいない、と言わねばなりません。
バイデン大統領の声明によれば、問題の資料公開はNARA米国国立公文書館の提案により延期されたということです。その主張によれば、「資料文書校正検討の責務を担う機関」に、新型コロナウイルスの蔓延が大きな影響を与えて作業が遅れたということです。このように、バイデン米政権は今回の資料公開延期の口実として、コロナの感染拡大を提示しています。
ケネディ氏暗殺後の長い年月の中で実施されてきた様々な世論調査からは、アメリカ市民の大半がケネディ氏暗殺がリー・ハーヴェイ・オズワルドにより単独で行われたものではなく、ほかにも複数名が関与していたとみていることが判明しています。一方で、市民の意識には、この暗殺事件は陰謀であったとする様々な説も広がっています。
こうしてみてくると、ケネディ氏暗殺事件は今後も不透明なままとされ、これに対する多数の疑問も回答が与えられないままに残されると思われます。
『歴史の再生:ジョン・F・ケネディの暗殺』の著者であるヴィンセント・ブグリオシ氏は、21年間に渡る調査研究やインタビュー、資料収集の結果、「この著作において、自分はすべての事柄をあらゆる側面から扱った結果、ケネディ氏暗殺に終着点はなく、この物語の最後は依然として終わりのないままとなる、という結論に達した」と述べています。
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