ラマザーン月、聖なる月(13)
(last modified Fri, 29 Apr 2022 09:04:00 GMT )
4月 29, 2022 18:04 Asia/Tokyo
  • ラマザーン月
    ラマザーン月

今回はまず、心理的な緊張や心配事に対処する上で、神と親密な関係を築くことの役割についてお話しすることにいたしましょう。それから、コーランの教えについてご説明してまいります。そして最後に、ラマザーン月に留意したい食生活や医学面でのポイントについてお話することにいたしましょう。

ラマザーン月に断食をする人々の美しい経験の1つは、神と親密な関係を築くことです。この関係は、精神的な緊張や不安に対処する上で、効果的な役割を果たします。悲しみや緊張は、人間の心と体に大きな害をもたらします。それではここで、1つのたとえ話をお紹介しましょう。

木は、樹齢が高くとも、耐え難い夏の暑さや激しい嵐、そして冬の厳しい寒さに耐えることができます。しかし、1匹の虫により幹の内部から根にまで食い荒らされてしまうと、短期間のうちに枯れてしまいます。この樹木の例を見ても、厳しい環境には耐えられるものの、1匹の小さな虫により内部から食い荒らされ、完全に破壊されてしまう可能性があることが分かります。

人間も、この木と似たようなものであり、不安やためらいといった幾つかの要素は、命に影響を及ぼし、これによって生きることへの喜びや希望が失われることになります。しかし、神の恩恵を心の中に受け入れている人は、内部からの破壊的な要素によって影響されることはありません。確かなよりどころにしたがっているからです。

 

緊張したり不安になる原因の1つに、その人に対する常軌を逸した過剰な期待が挙げられます。人は普通、全てが自分の思い通りであって欲しいと考えるものです。しかし、人間の欲求の全てが実現されるわけではないため、こうした願望は現実にそぐわないものです。

時には、過去のつまらない出来事をくよくよと悩んだり、将来どうなるかと恐れることも、懸念を引き起こします。このような状態に陥ると、実生活において物事を客観的に捉えられなくなります。このような人は、貴重な人生の時間をむなしく苦しい思いの中で過ごしています。しかし、神の恩恵を心の中で受け入れている人は、神を思い起こすことが決して一方的な関係ではないことから、神がこの上ない恵みを自分に惜しみなく与えてくれると確信しています。神は、自身を思い起こす僕たちを片時も見放すことはありません。

 

それでは、ここからはコーランの朗誦をお聞きいただきながら番組を進めていくことにいたしましょう。まず、コーラン第41章、フォッスィラト章「解明」、第30節をお聞きください。

“「我らの主は唯一神であられる」と言って、その後正しくしっかりと立つ者、彼らには、天使が下り、「恐れてはならない。また嘆いてはならない。あなたがたに約束されている楽園への吉報を受け取れ」と語りかける”

コーランのこの節は、神の命にしたがい、また神に従っていることと表明する信心深い人々について述べています。こうした人々は、神の存在を認めた後、恒久的な真理と忍耐の道を歩みます。こうした人々には恐れや悲しみが悪影響を及ぼすことはありません、

一部の人々は、神の慈愛や優しさを主張しますが、実際にはそれらを最後まで信じていません。彼らは、欲望の嵐の中に置かれると信仰心をないがしろにし、唯一の神に対する信仰を止めてしまいます。そして、自らの利益が危険にさらされると、そのわずかな信仰心すらも失ってしまうのです。

何かを主張したり、言葉だけで唱えるのはたやすいことです。しかし、忍耐強く実行するのは困難です。一部の人は、神の慈愛について語るのみですが、中にはこれを行動でも示し、神の命に従う人もいます。ですが、他人からの理不尽な行動や中傷、敵対、嘲笑といった困難な出来事には耐えられません。

もちろん、正しい行動による忍耐強さが、信仰心によるものであることを忘れてはなりません。それは、信仰心がその人の存在の深くに浸透したときに、その人は忍耐強くなります。そして、神の道における忍耐強さが信心深さを増します。この2つは相互に影響しあいます。

 

人間の心と体の健康を維持する手段として、適度な運動が常に奨励されてきています。ラマザーン月、特にラマザーン月の月末、スポーツはより大きな役割を果たすことができます。適度な運動は、断食に矛盾しないのみならず、原則に従って正しく行われれば、断食をする人のストレスを解消し、安らぎをもたらすとともに、忍耐力をも高めてくれます。

ラマザーン月のスポーツは、体内での脂肪の蓄積を阻止し、エネルギーの燃焼を促進します。さらに、身体能力にプラスの効果をもたらすのみならず、精神力や学習能力の向上にも重要な役割を果たします。

今年も、ラマザーン月が夏の暑さの厳しい時期に到来していることから、断食をする人は健康維持に、より注意を払う必要があります。断食に加えて、厳しい暑さもスポーツを初めとする日常の身体活動に支障をきたすかもしれません。しかし、定期的に体を動かすことに慣れていれば、自らの活動の全てを一度に止めてしまうことはないと思われます。

スポーツを継続することは、ラマザーン月をより快適に過ごし、健康を維持するための適切な方法の1つです。正しい食生活を守れば、断食をしながらでも定期的な軽い運動を行い、それにより心と体の健康を保つことができます。

ラマザーン月に体力が弱まらないようにするには、激しいスポーツを控えることです、この月に断食をしながら激しいスポーツをすると、より多くのエネルギーを消耗し、日中に大量の汗をかくことになり、その結果、のどの渇きや血圧の低下を招くことになります。運動量をある程度減らすことで、活動そのものを止めることなく、またエネルギーも失わずに済みます。例えば、走ることの多い人には、速度を落として早足で歩くことをお勧めします。これについて、イランの医科大学教授で、スポーツ医学の専門家マザーヘリーネジャード博士は、次のように述べています。

「断食により、心と体の健康が維持される。スポーツも断食と矛盾するものではなく、正しい方法により行えば、特に暑い時期の断食による困難や疲労に対する耐久力を強化してくれる」

マザーヘリーネジャード博士はまた、断食をする人のスポーツと、倦怠感や疲労を防ぐこととの関係について、次のように述べています。

「スポーツをすることで、体内の脂肪が燃焼する。断食をする期間には、体内に入ってくる炭水化物の量が減ることから、脂肪がより多く燃焼される」

スポーツをする人が断食をする場合には、ラマザーン月に牛乳を初めとする乳製品、パンなどの穀類、野菜や果物、肉類や卵といった6つの基本的な栄養素をきちんととることが強調されています。それにより、スポーツと断食の双方を行う人は、健全な食生活を送ることにより、体に必要な栄養素を確保しながら、断食による健康面での効果も得ることができるのです。