イランのピクニック展示会
テヘランにあるゴレスターン宮殿で、今年の秋、「イラン人のピクニック」をテーマにした展示会が開催され、その魅力が紹介されました。
イギリス人のジャーナリスト、ルイス・プライス氏は、イランを訪れたとき、何よりも、イラン人のハイキングやピクニックに興味を持ったと話しています。プライス氏はインディペンデントの記事の中で、これについて次のように記しています。
「イラン人のピクニックを見たことがなければ、何も見ていないのと同じだ。お茶やお菓子を用意して他の人たちを迎え入れるのが、イラン人のピクニックの特徴である」
イラン人のピクニックに興味を持ったのは、プライス氏だけではありません。1930年代にイランを訪れたイギリスの東洋学者、フレヤ・スターク氏も、それをイランの魅力的な特徴のひとつだとし、このピクニックに行ったことがある人なら、その楽しみを知っているとしています。
イラン人のピクニックは、長い歴史を有しています。歴史資料によれば、イラン人ははるか昔から、解放的な空間に出ること、内から外へと向かうことを人生の楽しみと考えていました。この行動に呼び名はなかったものの、イランの文化のさまざまな時代の映像、絵画、じゅうたんでは、ピクニックの様子を垣間見ることができます。
この外の空間で過ごしたり、ピクニックをしたりする際の、最もシンプルで一般的な形だったのは、家族や親戚同士で、庭にある池の傍らや屋上に集まり、じゅうたんや木製の台の上に座って、木陰で休むというものでした。また、さまざまな食べ物を口にしたり、おしゃべりをしたりしていました。
イランの観光・文化遺産研究所のべへシュティ所長は、イラン人の文化における娯楽の重要性を強調し、庭の存在に触れ、次のように語っています。「イラン人の家の中で最も重要な空間は、庭である。すべての扉や窓は、安らぎに満ちたときを過ごすため、この庭に向かって開かれる」
べへシュティ所長は、イラン人の食卓も、富める者から貧しい者まで、すべてのイラン人に属するものだとし、次のように語っています。「イラン人の食卓の最後の任務は、人々の腹を満たすことであり、最初の任務は、気持ちを満足させることである。イランの料理はよい香りを漂わせるもので、たんぱく質やビタミンを取ることだけではない」
べへシュティ所長はまた、「ケルマーンにあるギャンジアリーハーンの浴場は、公衆浴場に出かけることですら、イラン人にとっては娯楽であったことを物語っている」と強調しています。また、市場に出かけることも、イラン人の娯楽のひとつであったとされています。
べへシュティ氏は続けて、多くの都市の近くには、娯楽のための公園や空間があるとし、次のように語っています。「マシュハド、イスファハーン、ガズヴィーン、シーラーズには著名な庭園が存在した」
べへシュティ所長は、「イラン人のピクニックは、これらすべてを合わせたものであり、イラン人の家族は、余暇を過ごすために集まり、その中で、健全な娯楽の手段を整えていた」と強調しています。
イラン人のピクニック展示会では、研究、芸術作品の形で、初めて、イラン人のピクニックや外出が、歴史的、文化的に重要なテーマとして紹介されました。イラン人の文化の中で、この伝統は3000年の歴史を有しており、芸術家によって常に描かれてきたテーマです。この展示会では、イラン人の自然への親しみやピクニックが、学術的な研究、現代芸術、歴史の3つの部門によって初めて紹介されました。この展示会の事務局長を務めたジャヴァーヘリヤーン氏は次のように語っています。
「今回の展示会は、3つの部門で構成されている。一つは、細密画や歴史的な写真などである。もう一つは、絵画や写真など、イランの現代芸術家21人の作品である。そして三つ目は、考古学、建築、都市開発、ペルシャ文学やタイル細工などの芸術研究といった専門的なテーマによる研究結果や芸術イベントの紹介である」
ジャヴァーヘリヤーン氏は、イランのピクニック展示会の傍らで、イランの庭園やピクニックに関する2つの貴重な書籍が発表されたことを明らかにし、「一冊目は、歴史的な庭園を紹介する本で、二冊目の本は、イラン人の自然の中の過ごし方に関する研究や、これに関する芸術作品を紹介するものだ」と語りました。
イラン人のピクニックや自然の中での過ごし方について、それをエコツーリズムに含むべきだとする人々もいます。しかし、この2つは根本的に異なっています。
エコツーリズムは、昔から人類の注目を集めてきました。人々は常に、驚くべき自然の魅力を目にしています。エコツーリズムの最大の活動は、生きた自然に基づいており、環境を保護し、その地域の人々の生活の質を向上させるような、責任のある自然への旅を意味します。つまり、少なくとも、その地域の自然や文化を損なわないような自然散策です。
また、エコツーリズムは、自然や開放的な空間に広がる観光です。国際エコツーリズム協会は、エコツーリズムの定義として、環境を保護し、地域の人々の福祉が注目されるような自然への責任ある観光としています。
一方で、イラン人のピクニックは、イランの文化的、地理的な条件に注目した上で定義され、それをイラン人特有のものと考えることができます。
イラン人のピクニックの定義において、ペルシャ語で外出というときには、基本的に、閉ざされた空間から外に出ることをさします。そのため、内側から外側の空間に入ることを言い、イランにおけるピクニックの形態は、庭にある池の傍らで、じゅうたんや台に座ってひと時を過ごすものです。この他、公園に出かけ、自然の中で一日を過ごすスタイルもあります。
イラン人のピクニックはにぎやかで、子供の嬌声や笑い声、音楽などが聞こえます。
イラン人のピクニックで重要なもう一つの要素は、香りをかぐことです。悪いにおいから逃れ、植物などのよい香りをかぐことは、よいピクニックの条件のひとつです。花の香り、芝生や緑の香り、水の香りは、ペルシャ語の詩や文学によく出てきますが、それはこれらの要素の重要性を物語っています。
このように、休日になると、わずかな緑の空間で大勢のイラン人がくつろぐ姿が見られることは、文化的な象徴のひとつです。このような社会的行動からくる芸術作品を見ることは、こうした行動を分析するための方法のひとつです。今回の展示会でも、この問題は、人類学者の注目を受けました。