精神性への扉(3)【音声】
(last modified Sun, 26 Mar 2023 12:07:00 GMT )
3月 26, 2023 21:07 Asia/Tokyo

これまでの番組で、人間は本能的に、神を求める傾向を持っていることをお話しました。

人間は生まれたときからそうした傾向を持っており、神を崇拝するように教わる必要はなく、おのずと、本能的に神を求めていきます。しかし、物質的な現象や悪魔の誘惑により、そのような本能が妨げられることがあります。

 

しかし、人間が危険を感じ、なすすべを失ったとき、その本能が顔を出します。そうして神の存在を見出し、そのような状況から脱するために、純粋な心で神を求めます。これについては、前回の番組で、高いところから落下しそうになったり、水に溺れそうになったり、地震などの自然災害にあったりなど、危険を感じたときの人間の経験についてお話しました。このような場面では、誰もが、心の中のより所を求め、それに助けを求めます。そのより所が、神なのです。

 

コーランでは、創造世界の多くの神秘が述べられています。コーランの中で述べられていることでで注目すべき問題のひとつは、世界のすべての存在物やものが、唯一の神を賞賛する、ということです。コーランは、世界の全ての現象は、唯一の創造主を賞賛し、神の御前で頭を垂れるとしています。コーラン第24章アン・ヌール章み光り、第41節には次のようにあります。

 

「汝は見なかったのか、天と地にいるすべてのものが神を賞賛するのを。また鳥たちが空を飛ぶ際に羽を広げるのを。彼らはそれぞれ、礼拝と賞賛を心得ている。神は彼らが行うことを知っておられる」

 

人間の物質的で限定的な視点では、他の存在物の賞賛を理解することはできません。しかし、神は全能の管理者であり、賞賛に値する存在であることを認めています。神は慈悲と美、恩恵の源であり、すべてのものは、その偉大さを前に頭を垂れます。コーランによれば、天と地、そこにあるすべてのものは神に感謝していますが、私たち人間は、それらの賞賛を理解できないのです。

 

重要なのは、すべての存在物やものが、全知全能の神に対して高慢になることはなく、すべてが神の無限の偉大さを前に頭を垂れるということです。これに基づき、多くの人は、風の音や大地に降り注ぐ雨のしずくは、実際、偉大なる神を賞賛し、崇拝しているのだと考えています。また、鳥たちのさえずりは、唯一の神に対するこの生き物の賞賛の声だと考えられています。

 

現代の社会は、さまざまな犯罪や精神的な圧力、危機に直面しています。社会的な孤立や鬱は、現代世界の人々の特徴として知られています。アメリカの自殺に関する統計によれば、自殺者の動機の72%はうつ病、13%はアルコール依存、8%がその他の精神的な疾患、7%が突発的なものとされています。さらに、西側社会で最も影響を受けやすいのは高齢者の男女であり、彼らは加齢や退職、家族と離れ離れになることによって、社会的に孤立しています。

 

さまざまな精神的ダメージを解消するため、精神分析学者は数々の方法を提示しています。宗教の専門家も、これについてさまざまな方法を提示していますが、それらは精神科医とは幾つかの点で異なっています。たとえば、宗教の専門家は、精神的なダメージを減らしたり、なくしたりする上での祈祷や崇拝の役割は、検討に値するものだとしています。彼らは、人間が鬱状態から脱し、人生に希望を持つために、祈祷や崇拝は重要な役割を果たすとしています。

 

宗教社会では、祈祷や礼拝を行う高齢者は、精神的な世界観を持ち、来世を重視することにより、老年期を、罪を悔い改め、神との契約を再び結びなおすための貴重な機会と見なします。これにより、彼らの存在の中では、神の慈悲と赦しへの希望が倍増します。このように、高齢者や精神的なダメージに苦しむ人々にとって、崇拝は心に希望と平穏を与えてくれるものです。祈祷や崇拝は、大切な人の死に直面したり、経済的な問題を抱えたりなど、精神的な危機に陥った際に、自殺などの衝動的な行動を防ぎます。そのため神は、コーラン第2章アルバガラ章雌牛、第45節で次のように語っています。

 

「忍耐と礼拝に助けを求めなさい。それは謙虚な人間以外にとって、非常に重く難しいことである」

 

そう、様々な問題を克服するためには、2つの根本的な柱が必要です。その2つの柱とは、忍耐と礼拝です。礼拝は、人間を神の無限の力に結びつけ、新たなエネルギーを与えます。言い換えれば、礼拝によって、人間は様々な苦難や問題に対処する力を得るのです。

 

 

現在、イスラム教徒はラマザーン月を迎えています。今夜は最後に、ラマザーン月に関するイスラムの預言者ムハンマドの言葉をご紹介して、番組を終えることにいたしましょう。

 

この月には、貧しい人や恵まれない人を助けなさい。年長者に敬意を払い、子供たちに愛情を注ぎ、親類との付き合いを大切にしなさい。ふさわしくない言葉を口にしてはならない。禁じられたふさわしくないものから視線を遠ざけ、誤った事柄を聞こうとしてはならない。この月には美徳を身につけなさい。最後の審判で、天国への道につながる橋を簡単に渡ることができるように。この月に親類との付き合いを大切にする者は、最後の審判で神の慈悲にさずかる。この月には天国の扉が開かれる。それが閉じられないよう、神に祈りなさい。この月、地獄の扉は閉ざされる。それらが開かれることのないよう、神に求めなさい。

 

 

 

 


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