ラマザーンへのいざない(20) 恩恵に溢れた財産
恩恵に溢れた財産
一人の男が、イスラムの預言者ムハンマドのもとにやって来ました。この男は、預言者ムハンマドが擦り切れた古いシャツを着ているのを目にして、こうつぶやきました。「私の金でシャツを買い、預言者に着てもらえたらよかったのに」 男は12デルハムを持ってきて、こう言いました。「預言者よ、この12デルハムを私からの贈り物として受け取ってください。そしてこの金でシャツを買ってください」 預言者ムハンマドは、その贈り物を受け取り、その金を、娘婿で、後にシーア派初代イマームとなったアリーに渡し、市場で預言者のためにシャツを買ってくるように言いました。
イマームアリーはシャツを買い、預言者ムハンマドのもとに持ってきました。預言者ムハンマドは、そのシャツを見て言いました。「この服はずいぶんと質がいいようだ。私にふさわしいものではない。もし商店の主人が納得してくれたら、この服を彼に返し、代わりに金を受け取ってきてくれないか」 イマームアリーは、この預言者の指示に従い、服を店の主人に返して、その金を預言者ムハンマドのもとに持ってきました。
預言者ムハンマドは言いました。「一緒に服を買いに市場に行こう」
2人は道の途中で、道端に座って泣いている召使いに出会いました。召使いにどうしたのかと尋ねると、召使いは言いました。「家の主人から、4デルハムを受け取って買い物を頼まれていました。でもその金をなくしてしまったのです」 すると預言者は、12デルハムの中から4デルハムを召使いに渡し、その場を離れました。
預言者ムハンマドは、シャツを売る店の主人から、4デルハムのシャツを買いました。すぐにその場で身につけ、神に感謝しました。市場から帰る途中で、預言者とイマームアリーは、貧しい男に出会いました。この男はシャツを着ていませんでした。神の預言者は、買ったばかりのシャツを脱ぎ、男にやりました。預言者は再び市場に戻り、残った4デルハムで新しい別のシャツを買い、それを身につけました。神の預言者は、家に帰る途中で、再び、さきほどの召使いに会いました。召使いは再び、そこに座って泣いています。預言者が召使いに、なぜ家に戻らなかったのかと尋ねると、召使いは言いました。「家に帰る時間が遅くなってしまったので、家の主人にしかられるのが怖いのです」 預言者は言いました。「それなら一緒に行きましょう。家の主人と話をしてあげます」
預言者ムハンマドは、召使いの家の前にやって来ました。扉が開き、家の主人は、預言者を見て謙虚な態度になりました。家の主人は言いました。「一体、どんな御用でしょう?」 預言者は言いました。「このあなたの家の召使いは、家に戻るのが遅くなってしまいました。そしてしかられるのを恐れていたのです。そのため、仲裁しにやって来ました」 家の主人は言いました。「預言者よ、あなたに敬意を表し、この召使いを解放します」
預言者ムハンマドは言いました。「この12デルハムは何と恩恵の多い金だったことか。2枚のシャツを買い、1人の召使いを解放した」
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