ペルシャ語ことわざ散歩(123)「物事はしっかりやることで悪くはならない」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、面白い言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「物事はしっかりやることで悪くはならない」です。
ペルシャ語での読み方は、Kaar az mohkam-kaari 'eib nemi-konadとなります。
このことわざは、13世紀に生きていたとされる、いわば「イスラム版の一休さん」ともいえる様な、とんち話で知られる人物・モッラーナスロッディーンという人物の話に由来します。
ちなみに、モッラーといえば、イランでは神学校に学んでイスラムの僧侶になった人を指し、さしずめ「ナスロッディーンお坊さん」といった具合になります。
ある時、モッラーナスロッディーンは、ブドウの苗木を育てており、大きくなって実をつけるまで大事に育てようと、日々丹精こめて手入れをしていました。しかもその手入れ振りは半端ではなく、この苗木を大事にするあまり、それまでは花壇に植えていたものを、夕方になると花壇から根こそぎ掘り起こして倉庫に運び込み、また次の日の朝になると、もう一度それを花壇に植えなおす、ということを繰り返していました。
そこで、この様子を目にしたモッラーナスロッディーンの友人の一人が、「そのようなことをしていては、葡萄の苗木が駄目になってしまいますよ」と告げます。これに対し、モッラーナスロッディーンは「物事をしっかりやることで悪くはならない」と答えたということです。
このことから、この表現は「やりすぎと思われる位、念には念を入れる」というような意味で使われるようになりました。
ちなみに、モッラーナスロッディーンはイランのほかにもオスマントルコの支配地域やトルコ系民族の住んでいる地域、さらにはコーカサス地域、バルカン半島、中央アジア、アフガニスタンなどにも伝わっています。この人物に由来するとんち話は数多く残されており、これからも折に触れてこの人物に由来する慣用表現などをご紹介してまいります。どうぞ、お楽しみに。