ペルシャ語ことわざ散歩 (157) 「値段が高いことは背景となる理由なしではなく、値段が安いことも原因や理由なしではない」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介することわざは、「値段が高いことは背景となる理由なしではなく、値段が安いことも原因や理由なしではない」です。
ペルシャ語での読み方は、Hiich geraanii bi-hekmat niist, hiich arzaanii bi-ellatとなります。このことわざは、おそらく皆様にも本来の意味をご想像いただけたかと思います。
すなわち、物の値段はそのものが持つ価値によって決まるということであり、ある物がそれなりの高い値段や安い値段がついているのには、必ずしかるべき理由がある、ということです。
なお、このことわざはある物語に由来しています。ある偉い役人が2人の召使を雇っていました。が、2人の仕事内容は全く同じなのにその給料には大きな違いがあり、1人はもう1人の2倍の給料を払っていました。
ある日のこと、給料の少ないほうの召使がこの役人のところにやってきて、なぜ自分はもう1人の半分しか給料がもらえないのか、と尋ねます。
これに対し役人は、「今外で何か物音がするが、何の音なのか見てきて、私に報告してほしい。
それから、お前の質問に答えよう」と告げます。安月給の召使が外に出て確かめてみると、ラクダとラバに沢山の布地を乗せた隊商の一段でした。そ
こで、この召使は役人のところに戻って、ラクダで布地を運ぶ隊商たちだったと報告します。
この報告を聞いた役人はさらに、ではもう1人の召使を行かせるから、よく見ていなさい、と告げます。
高い給料をもらっている召使は、同じラクダの隊商を見て、その積荷の内容や、実はラクダのほかにラバもいること、どの町から出発して目的地はどこだっかまで詳細に役人に報告します。
そこで役人は安月給の召使に対し、彼よりも高給取りの召使がより正確な報告をしているから、給料が高い野田と説明したということです。
ペルシャ語ではさらに、「全ての物には値段がある」という言い方もなされます。
もちろん、これは単に物品だけではなく、ある人のために提供するサービスや環境・条件、便宜などに対しても使われています。
もっとも、ここで注意したいことは、値段が高くとも安くとも、なぜそのような値段がついているのかを慎重に吟味すべきだということです。
金額上の値段は高くとも、実際にはそれほどの価値のない場合もあれば、日本語で言う「安物買いの銭失い」、「ただより高いものはない」という場合もあります。
一番大切なことは、ご自分にとってその値段を払ってでもその品物やサービスを手に入れる価値が本当にあるかどうかを見極めることではないでしょうか。それではまた。