イランの芸術、 バイオリン
本日は、イランの伝統楽器と西洋の古典楽器の両方に通じた著名な演奏家であり、また同時に最も若いイラン人音楽家の一人でもある、バルディアー・キアーラス氏にお会いします。
キアーラス氏は、まずイランの伝統的な打弦楽器であるサントゥ―ルを学び、それからバイオリンを始めて、ドイツの音楽大学に留学しました。その後、国内外のオーケストラに演奏者として参加し、現在は、イラン国立管弦楽団の指揮者を務めています。
バイオリンは、イランで外国人の訪問が増え国外音楽家の演奏旅行が行われるようになったガージャール朝時代に持ち込まれました。そして、この楽器を気に入ったイラン伝統弦楽器・キャマーンチェの演奏家らによって、彼らの技法を活かした演奏が行われるようになりました。
その後、イラン国内でもバイオリンが製作されるようになり、現在、優秀なイラン人製作者によるバイオリンは、外国で製作されたものにも肩を並べるほどになっています。
バイオリンはイランで、いわゆる一般的な西洋クラシック音楽の奏法とは異なる独自のイラン式奏法が確立され、現在は国内の様々な式典で演奏されています。
― いつごろ、どんなきっかけで音楽の道に入られたのでしょうか?
キアーラス氏:私の父がサントゥ―ルの演奏家で、イランの伝統音楽に精通していため、私も4歳からサントゥ―ルを学びはじめました。
私は、父がサントウ―ルを演奏する時はいつでもそばで眺めていました。サントゥ―ルに強い愛着があったので、12歳までこの楽器を学び続けました。
― サントゥ―ルから初めて、その後バイオリンに転向されんですね?
そうです。まずサントゥ―ルから楽器の演奏を学んだのです。その後家族は、私の音楽への強い興味を知り、体系的かつ本格的にその技術を身に着けさせようと決め、父がバイオリンを選びました。
― 2つの違う楽器を演奏してみた感じは、比べるとどのようなものでしたか?
イランの音楽を聴くのに特別な専門知識は必要なく、それは人間の魂と精神に直接浸み入ります。
また、イラン音楽には豊かな歴史があるため、イラン人の音楽家はその感性や理解力を役立てて、西洋クラシック音楽を理解することができます。
― 30歳という若さでイラン国立管弦楽団の指揮者になったそうですね。オーケストラの指揮者といえば、普通の人は経験豊富な熟年の人がなると想像すると思います。どうして指揮を引き受けることになったのですか。また、楽団にはどのような変化を与えたと思われますか?
指揮者には、十分な技術・知識を持つことに加えて、多くの芸術家を統率するカリスマ性も求められます。そして、オーケストラのメンバーからも受け入れられなければなりません。
私が入団した当初の雰囲気は、8割がたが私を否定的に見るものでした。
しかし、偉大なイラン人の巨匠たちが私を信頼し、助け導いてくれたおかげで、この楽団での最初の演奏を成功させることができたのです。
― 外国でも演奏されていたんですね?
パレスチナ人作家のエドワード・サイード氏と世界有数のピアニストであるダニエル・バレンボイム氏によって設立された国際的オーケストラ、ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団のテストを受けて合格し、コンサートでヨーロッパの全ての国々を回りました。
ヨーロッパの人々の目には、イラン人が西洋のクラシック音楽を演奏する様子は非常に興味深く映ったようです。