8月 30, 2016 14:57 Asia/Tokyo
  • 象嵌細工
    象嵌細工

今回は木材とそれに関連する産業についてお話しすることにいたしましょう。

伝統工芸は、イランの芸術家の創造・革新と自然の結びつきが具現したものです。この伝統産業の共通点は、原料に木材を使っていることです。

 

木材は、木の幹や枝、根から得られた有機細胞組織です。自然の中で、最良の利用価値のある生の物質であり、発展した文明を築くために、また生活、芸術、伝統工芸において多く使用されてきました。木材は最初、基本的な道具、住む場所、船を作るための重要な資材でした。その後、人間の生活に必要な多くの道具などを作るために使用され、最終的に、自然の中に存在する最も古い、最も基本的な建築資材の一つとして知られるようになりました。

楽器バルバト

 

有史前の人間は初め洞窟を自分たちの生活する場所にしましたが、木は他の物質以上に使用されていました。スイスの湖のそばなど各地で行われた考古学的発掘で、旧石器、新石器、青銅器時代に属する船の家の木材の土台が見つかり、それらは建物や道具、住宅における木材の使用の歴史を物語っています。これが示しているのは、古代の人々が木を自分たちの避難所の基盤と覆いのために、非常に初歩的な形で使用していた、ということです。興味深いのは今も、太平洋地域やマラッカなど世界の一部の地点で、船の家が原住民によって作られていることです。

 

木は長い間、人間社会において大きな変化を遂げることなく、多様な方法で使用されていました。人間の文明を完成させる上での木材の役割は、特別な重要性を有しています。それはとくに、かつて単に水上運搬の手段、ボートや船であったものがどれほど文明を広め、それを発展させ、地球上で知られていない土地や資源の発見に影響を及ぼし、人間の遺産を維持する道具となってきたかを知るときに、特別な重要性を持つでしょう。

木材

 

紀元前およそ11世紀の中国の皇帝時代には、木が重要性を有しており、木を伐採する違反者を罰する法令が制定されていました。インドや東南アジアの仏教寺院では、様々な形の木製の彫像が置かれ、木工芸術の可能性やこの物質の有益性に関する知識が広まっていました。ギリシャでも、木の産業が繁栄し、ローマ帝国でも、木材から美しい装飾品や道具が作られていました。興味深いのは古代ローマ人は樹木の幹や根の模様の重要性を見出し、木目を生かした板を使用していました。

 

発掘調査によれば、イランに住んでいた人々は、紀元前およそ4200年のアーリア人の移住前に、木を家作りに使用していました。一方で、農作業のための道具にも木が使用されていました。有史のアケメネス朝時代から、木の使用方法が明らかになり、ペルセポリスから見つかった石碑には、宮殿の装飾にヒマラヤ杉が使用されていったことが記されています。

ペルセポリス

 

ペルセポリスの石の作品や古い詩に書かれているように、糸杉、ギョリュウ、トゲハマナツメの木は神聖なものでした。アケメネス朝時代、戦争の道具や荷馬車は木で作られており、ギリシャの歴史家は、キュロス王による古代リュディア王国の首都サルディスの征服は、敵の陣地を攻撃するための木製の戦車や塔のお陰だとしています。アケメネス朝の黒海と地中海の周辺地域の占領もまた、木材を運ぶ大きな船や十分な装備があったためであるのは明らかです。

 

パルティア帝国時代における木材使用に関する資料は存在しませんが、サーサーン朝では、建築、狩猟、戦争の道具、楽器に木材が使用されていました。例えば、バルバトという楽器はサーサーン朝時代の最も優れた楽器で、タールやセタール、キャマーンチェなどの楽器の母と呼ばれています。人々がイスラム教徒になると、木工芸術はこの宗教の影響を受け、その最高傑作は、モスクや墓などの扉や窓、説教壇に見られます。

 

木材を使用するメリットには、柔軟性、温度や音を吸収すること、様々な天然色や木目、修復しやすい、といったことが挙げられます。一方で、昔から木材の基本的な問題の一つは害虫の被害がありました。今日、木工製品の害虫を防ぐための様々な方法が存在します。木材のもう一つの問題は、燃えやすいということがあります。

 

今日、木材の特徴と効用はそれを多くの活動に適した資材に変えています。現在木材は工業、建築、装飾芸術、家具などに多く利用されており、木材をデザインしたプラスチックなどの模造品も市場に出回っています。しかしながら木材の使用は、環境を美しくする効用に加えて、自然の一要素と見なされることから、肉体や精神の健康にプラスの影響を及ぼします。

木材

 

木材は様々な色がありますが、茶色のものが多く見られます。茶色は他の色との組み合わせにより、様々な状況を生じさせます。例えば、暗い色の木材は、エビ茶などの男色と共に用いられることで、事務所や自宅の書斎などに多く使用されています。

 

研究者の多くは、「木で覆われた環境は、発された音をゆっくりと吸収し、その後反響させる」としています。松のような乾いた軽い木は、その上を靴で歩くと音を生じさせ、クルミやカシのような重厚な木は軽やかな音を発します。

 

今日木材は、私たちの生活において様々な形で使用されています。木材からは家具、装飾品、キッチンキャビネット、彫刻品、花瓶、さらにはスプーンや皿なども作られます。そしてより柔軟性のある木材から様々な形が作り出され、所々に使用されています。木工産業は昔から世界の多くの国で繁栄を遂げてきました。イランでも豊かな森林の存在により、木工産業は大きく広まり、多くの地域で職人たちが木工製品を作っています。

 

木工産業のジャンルは数が非常に多いですが、大きく幾つかの分野に分かれます。彫刻や寄木細工、その他多くの装飾品、さらに、イランの伝統楽器にも使用されています。次回の番組から、これらの木工産業についてお話しすることにいたしましょう。