アメリカ大統領選に関する疑問
アメリカの人々は、11月8日、大統領選挙でトランプ氏を大統領に選びました。今回のアメリカ大統領選は、選挙費用、激しさの点で、前代未聞の大統領選挙となりました。
今回のアメリカ大統領選挙では、どのような人物が大統領を選ぶのか、なぜ共和党と民主党の候補だけが当選できるのか、どの州が運命を握る州なのか、選挙費用はどれくらいか、不正はどれほど発生したのかなどといった疑問が浮かんできます。今回はこれらの疑問について答えていくことにしましょう。
アメリカの大統領選ではどのような人物が大統領を選出するのでしょうか。世界の多くの国とは異なり、アメリカの大統領は人々が直接的に決定するものではありません。アメリカの人々は先日の選挙で、538人を選挙人として選びます。彼らは投票日の後、アメリカの首都に集まり、その州で票数を得た人物を指名します。この538人の過半数を超える数、つまり270票を得た人物が、アメリカ大統領に選出されます。
伝統的には、各州の選挙人は、選挙人集会が開かれた際、その州の人々に選ばれた人物に投票します。一方で、これらの選挙人が州の人々の見解に反する投票を行ったとき、彼らは裏切り者と呼ばれます。
いずれにせよ、明らかなのは、アメリカ大統領選挙において人々の役割は瑣末なものであり、大統領の当選に際しては、選挙人の票が人々の票より重要な役割を持っています。2000年にも、全体の得票数よりも選挙人の票が重要だった出来事が起きました。
なぜ共和党と民主党の候補者だけが大統領選に勝利するのでしょうか。アメリカ大統領選挙では、数十の政党や候補者が参加します。一方で、これまでのおよそ160年間、大統領に就任するのは共和党か民主党の候補のみです。
この独占的な政権が交代するシステムについては、さまざまな理由が提示されています。アメリカの共和党と民主党は、ヨーロッパ諸国の主要政党とは異なり、たいていの場合、政治的な流れの中で同盟関係にあり、市民の幅広い階層から支持を得ることが出来ます。エリート的な文化と複雑な問題を単純化する中で、アメリカの市民は多くの政党ではなく、ただ2つの政党に協力する方向に導かれています。
こうした中で、選挙制度はこれまで同様、2つの党による独占を促進しています。たとえば、第3党や無所属の候補が立候補するために、数万の市民の署名を集めることを責務とする法律があります。あるいは、大統領選に参加した政党には支援金が提供されることになっていますが、小規模政党は、選挙の開催前にこの支援金を受け取ることはできない、といったことも指摘できます。
一方、大統領選への立候補はアメリカの第3政党にとって、とても難しいことです。確かに、共和党と民主党の候補者の数億ドルの選挙費用は、第3政党の数百万ドルの選挙費用と比べて、選挙において大幅に不公平な構造となっています。
それでは、どのような人物がアメリカ大統領選で選ばれるのでしょうか。今回の選挙は、大統領と副大統領を選ぶだけの選挙ではなく、この日、アメリカ下院の435議席と、上院の3分の1の議席、およそ3分の1の州知事、多くの州議会や市議会の議員を決める選挙などが行われました。
確かに、アメリカの政治構造における大統領の重要性から、大統領選挙がこの日のほかの選挙に影響を与えました。この中で、一部の団体の議員構成は、アメリカの人々にとっても、政府の政策にとっても重要です。たとえば、上院と下院の選挙をあげることができます。
上下両院、あるいはどちらかの議会でアメリカ大統領の所属政党が過半数を占めれば、法の可決と施行における党派的な障害を克服することができます。このため、大統領選挙における党派的な選挙戦と同時に、各政党は535の下院の議席をめぐり、熾烈な努力を行いました。アメリカ大統領選挙で、決定的となる州はどの州なのでしょうか。アメリカ大統領選挙は50の州とワシントンDCで実施されます。東海岸や西海岸など、一部の州は、伝統的に民主党に票が集まります。また、南部や中西部の州の一部では、共和党を支持しています。
選挙本部は数カ月前から自らを支持する各州の選挙人獲得数に確信を持つことが出来ます。このため、共和党支持の赤い州、民主党支持の青い州と呼ばれるこれらの州において、興奮を呼ぶようなことはありません。一方で、共和党にも民主党にも所属しない州もあれば、世論調査で両党の候補者が拮抗していると伝えられる州もあります。
今回の選挙では、14から16の州が、大統領選の鍵を握る州となりました。この中で、フロリダ州はほかのこういった州よりも多くの選挙人を抱えています。フロリダ州についで、オハイオ州とノースカロライナ州がこういった州に当たりました。このような州での票の獲得をめぐり、共和党と民主党は激戦を繰り広げました。一般的には、共和党候補は、オハイオ州で勝利できなければ大統領に当選することはできません。また、民主党候補はフロリダ州で優勢となることで、大統領当選の道を得ることになります。
大統領選挙の選挙費用はどのくらいになるのでしょうか。アメリカ大統領選挙は、世界でもっとも高額な選挙とされています。2016年の大統領選挙の選挙費用は、60億ドルを超えました。また、2016年、共和党と民主党は、選挙の勝利のために、10億ドルを拠出しました。この選挙費用の大部分はメディアでの大規模な宣伝や、アメリカ各地における選挙集会の開催に割り当てられています。
候補者や政党が、この莫大な費用を確保できないことから、富裕層や大企業が、その宣伝費用の大部分を提供しています。2011年まで、アメリカにおける選挙戦での献金は、法人や特定の人物に対して一部制限がありました。しかし2011年、アメリカの最高裁は、政党や候補者に対する献金を好きなだけすることができるとしました。この法的な決定により、選挙本部には豊富な資金が流れ込むようになりました。
民主党候補のクリントン氏は、大統領選のために5億ドルの資金を投じています。この選挙費用のほとんどは、ロビー団体、あるいは大企業が提供しています。思惑の大統領候補が当選した後、これらの資金援助者は、自身の利益のために新たな法案が可決されたり、現行の法律が施行される期待をあらわにします。
一方で、他国やアメリカ人以外の人々が、大統領選の候補者に献金することも慣例となっています。このような状況により、当選者は国内だけでなく、外国の政府や人々にも借りがあるとされています。
アメリカ大統領選挙で不正が発生する可能性はどれほどなのでしょうか。世界各国で行われる選挙では、不正や票の操作が行われる可能性があります。アメリカでも、選挙での多くの混乱や不正が報告されています。たとえば、多くのアメリカ人は、自分のなくなった家族の身分証明書を使って、投票することができます。ある人物が、1回の選挙で数回にわたり投票している事実は、これまでに何度も見られています。
一方で、票の集計における、さまざまな分散型のシステムにより、アメリカのさまざまな選挙における不正の下地が整っています。確かに現在、公式統計によれば、アメリカ大統領選挙の結果は、違反行為の影響で変えられてはいません。一方で、大統領選挙、あるいはそのほかの選挙では不正に対する懸念が高まっています。たとえば、2000年の大統領選挙では、システム上の不正がアメリカ各地で見られました。こうした中で、票の集計における混乱は、最終的に、今後のアメリカ大統領選挙の運命を変える要因となっているのです。