11月 28, 2016 16:29 Asia/Tokyo
  • スィースターンバルーチェスターン州の民族の文化

今回は北部から南東部に移動し、スィースターンバルーチェスターン州の民族の文化的、社会的特徴についてお話しすることにいたしましょう。

スィースターンバルーチェスターン州は、イラン南東部に位置しており、南はオマーン海、東はパキスタンとアフガニスタンに接しています。地理学者のアーデル・マザーリーはこのように述べています。

「スィースターンバルーチェスターン州は、スィースターンとバルーチェスターンの二つの地域で構成されており、自然の面で完全に異なっている。スィースターンは州の北部に位置し、バルーチェスターンは広大な山岳地帯で、北はルート砂漠、南にはオマーン海がある」

スィースターンは一部の歴史的都市と同じように、イラン文明の初期の中心地であり、伝説においても歴史があります。現在のバルーチェスターンもまた、最古の歴史的文献の中に「マカー」という名前で出てきます。スィースターン、とくにシャハレ・スーフテは、気候、政治、文化の点で、トランスオキシアナ、メソポタミア、インド、中国の大文明と関係のあった中心地と見なされています。

「焼失した町」を意味するシャハレ・スーフテは、ザーボルとザーヘダーンの間にあった古代の都市で、そこからおよそ700から800種類の布が見つかっています。これは布を良好な状態で保存しておくことができたシャハレ・スーフテの気候条件によるものです。

考古学者によるシャハレ・スーフテでの最新の発見は、この町の女性たちが、インドの女性の民族衣装サリーに似た服を着ており、高価な装飾品に重要性を見出していたことを示しています。この町の女性達の墓の多くから眉墨や眉墨入れ、櫛が見つかっています。

スィースターン・バルーチェスターン州の伝統芸術は特別な重要性を有しており、雇用を創出し、住民の収入を確保する上で重要な役割を果たしています。この芸術は、道徳的、社会的な特徴から発生しています。伝統工芸は多くが村の女性たちによって作られており、特に冬の季節に盛んに行われています。

スィースターン・バルーチェスターン州の重要な伝統工芸には、バルーチ縫い、絨毯、コイン縫い、ござ、陶器、木ずりなどがあります。

イラン南東部のスィースターン・バルーチェスターン州に住む民族は、伝統や独自の生活様式により、この州の文化的、社会的な魅力の一つになっています。一部の祝祭や儀式は注目に値するものとなっています。中でも犠牲祭や断食明けの祝祭は盛大に行われますが、イラン人の新年の祝祭ノウルーズはそれほど重視されていません。

祝祭では、楽器の演奏や棒遊びがよく行われ、収穫祭も一部の地域では行われています。宗教的な傾向により、追悼儀式に多くの人が参加し、強い結びつきを示しています。

人々の衣装について、男性はたいてい、長いシャツにしわの入ったゆったりとしたズボン、ターバンを頭に巻いており、女性は刺繍など飾りのついた長いシャツにチャードル、様々な装飾品を身につけています。村に住む人々はたいてい、畜産業や農業に従事しています。

スィースターンバルーチェスターンの音楽は、州の特別な状況のために他の州よりも顕著な芸術の一つとして、人々の喜びや熱情の一部となってきました。弦楽器のロバーブやゲイチャク、また各種の打楽器の存在は、この地域の音楽への幅広い注目につながっており、特にスィースターン地方で広まっている打楽器ドホルや吹奏楽器ソルナーとともに、祝祭を盛り上げるものとなっています。

この州の音楽のジャンルには、戦闘の音楽、集会の音楽、神秘主義の音楽、宴の音楽などがあり、人々の悲しみや喜び、英雄物語、献身の精神、敬虔さ、約束への忠実さ、愛国心などが歌われています。

スィースターンの方言は、インド・ペルシャ語系の言葉です。

この方言は現在、主にイランのスィースターンやサラフス、ゴルガーン、アフガニスタン、トルクメニスタンの一部で話されています。

スィースターンの方言は、ホラーサーンの過去と現在の方言、単語や文法の点で非常に近く、さらにトランスオキシアナや現在のタジク語のなまりもあり、その一方で、バルーチ語とも共通の単語を有しています。歴史的、地理的なつながり、民族の移住といったことに注目すると、これは自然なことでしょう。

バルーチ語は、パルティア・パフラヴィー語、サーサーン朝時代初期のパフラヴィー語に近い言葉です。この言葉は過去数百年の往来が困難だったこと、他の言語や方言と交わらなかったことにより、変化せずに残っています。

イスラム以前のスィースターンバルーチェスターンでは、マニ教、ゾロアスター教、ユダヤ教、キリスト教などの宗教が広まっていました。イスラムの到来と地域の住民へのその影響により、イスラム教はその時代のすべての宗教にとって代わりました。スィースターンの住民の多くがシーア派を信仰しており、バルーチェスターンはスンニー派のハナフィー派が主流です。