2月 22, 2017 19:02 Asia/Tokyo
  • 結婚式

今回の番組では、イラン各地で行われている結婚式についてお話しすることにいたしましょう。

イランの文化において、結婚、夫婦の結びつきは、家族の基盤であり、成功した道徳的な社会から生まれるものです。この地の先人たちは、社会の道徳性の揺らぎを防ぎ、退廃を抑制し、イラン人の男女関係を堅固なものにするために、結婚を社会の最も重要な柱と考えていました。

イラン社会における結婚の儀式には、多くの習慣、しきたりがあります。現在、時代の経過と共にこうしたしきたりは廃れてしまい、その一部だけが盛んに行われています。

現在、社会的な流れが、様々な面で家族の基盤を変化させています。結婚はかつて、部族内の結びつきを強めるためのものでした。この種の結婚は村社会の明らかな特徴と見なされ、社会的、経済的、文化的な取引の歯車を整えていました。

一方で、結婚の方法は、都市居住者の増加や社会内部の関係拡大、教育や生産方法の異なりと共に根本的な変化を生じさせています。求婚から結婚までの長い道のりは、数々の段階があり、その一部は時間の経過により色あせ、その一部はまた色濃いものになっています。

イランの文化において結婚は、心の安定につながるものであり、家庭の環境は、男女の精神を安定させるものとなっています。その一方で、世界的にも知られるイラン人の愛情は、正しく賢明な結びつきによって現れ、極地に達し、次世代の手本にもなっています。この聖なる絆はイランの各地で、特別な慣習や儀式によって結ばれています。

現在の結婚式の形成にもかかわらず、今もイラン北西部のアーザルバイジャーン地方では、結婚式が伝統的な形で行われています。

花嫁が花婿の家に移動するのはたいてい、日没後のことです。昔から一部の家族は花嫁を馬に乗せて花婿の家に運んでいました。その日の午後になると、婚約の日以降に彼女に与えられた衣装などと共に、嫁入り道具が花婿の家に運ばれます。

花嫁を花婿の家に連れて行く際には、花嫁を着飾り、頭にチャードルをかけて、年長の女性たちが同行します。また花嫁の父が家の前で祈祷を行い、彼女の幸せを祈ります。

花婿の家では通常、夕食が準備され、両家の男女を招待します。花婿は、三つのりんごを花嫁の背中にぶつけ、彼女の頭の上に砂糖菓子を振りまき、お金をばら撒きます。建物の通路には銅製の大きなお盆を置き、花嫁がその上を通り、銅のように家の中で力強く留まるようにと思いを込めます。

イラン南部のシーラーズの人々は、花嫁と花婿の家を結婚式用に飾り付け、通常、ゼラニウムの花が飾られた陶器の花瓶が池の周りに置かれます。庭には絨毯が敷き詰められ、招待客が集まった後、花嫁を迎えに行きます。

通常、女性たちは、花嫁が家に入る際に歓声を挙げ、花嫁に近い友人たちがそれに応えます。花婿に同行する年長者は、花嫁の両親に花嫁を連れて行く許可を得ます。花嫁は両親の手にキスをして、別れを告げます。そして花嫁はコーランの下をくぐって家を出ます。

花嫁が花婿の家に入る際に、一人が蜂蜜の入った皿を花嫁の前に持ってきます。花嫁はその中に少し指をつけて家の中に入ります。一冊のコーランと緑の葉あるいは花のついた枝、またダイダイが浮かべられた水のお椀や皿がのせられたお盆も運ばれてきます。

花嫁はコーランに口付けし、その下を潜り抜けます。他の人たちは砂糖菓子を彼女の頭上にばら撒きます。その後、ダイダイ、あるいは緑の葉、花の枝が入った水のお椀を足の前において、花嫁がその上を通過します。花嫁は足を皿に当ててそれをひっくり返して歩いていきます。

ロル族の間では通常、男性の親族の女性たちが彼のために相手を選び、何度か女性の家を行き来し、その対応を評価するという慣習になっています。その後順々に長老たちがやってきます。この段階を経て、花嫁の家族も結婚を受け入れる条件を提示し、男性側の家族は数日後に返事をします。

この地域の人々の結婚式で広まっているロル族の特別な儀式の一つに、地元の伝統的な遊びと共に、踊りと足踏み、そしてゲイガージュと呼ばれる儀式があります。ここで、ロレスターン州の結婚式で行われているゲイガージュの儀式について、民族文化の専門家のお話をお聞きください。

「ゲイガージュとは、祝祭や特別な行事の際に、地元の人々が集まって、喜びを分かち合う一種の伝統である。例えば、結婚式では、花嫁が花婿の家に向かう際、花嫁の前を馬がじぐざぐにゆっくりと進んでいく」

イラン北部のゴレスターン州でも、イランのほかの地域同様、結婚式の特別な慣習があります。結婚式を今も昔のままの形で行っているこの地域の民族の一つに、トルクメン人がいます。トルクメン人の社会では通常、父親が息子のために女性を選び、結婚の契約を進めます。

イラン西部のコルデスターン地方は、驚くような愛すべき慣習であふれています。楽器の演奏や歌、踊りなど、毎年多くの人をこの地域に呼ぶ行事が行われていますが、中でも最大の行事が結婚式です。

イランの多くの地域ではこのような慣習は昔ほど行われていませんが、現在もこうした儀式を行っているのがコルデスターンです。これらの慣習には、婚約式、結婚衣装の購入や結婚の日取りについて話し合う儀式、ヘンナ染めなどの儀式があり、どの段階においても歓声、歌、踊りがあります。

通常、コルデスターンの結婚式は、3日から7日間かけて、花婿の家で行われます。結婚式の夜、年長の女性が花嫁を連れて行きます。この儀式では民族独自の踊りが行われます。

バルーチ族の慣習では、現在、結婚式は8つの段階を経て行われます。

その中の一つ、ジョルバンディと呼ばれる儀式では、花嫁は結婚式に向かう前に、聖域に避難し、誰にも面会してはなりません。また本番のヘンナ染めの前夜に行われる非公式のヘンナ染めの儀式もあります。さらに、新郎新婦の準備に関わる儀式、そして最後に二人が一つの家に集まり、共同生活を始める儀式などがあります。