他人との関係改善における共感の効果
今回の番組では、他人との関係改善における共感の効果についてお話しすることにしましょう。
人間は社会的な存在として、自身の感情に適切かつ正しく応えてくれる他者を必要としたり、必要性を満たすことができるよう、自分の仕事のために他者を活用します。この関係はしばしば権力や富の上に成り立っていたり、仕事により行われるものだったり、愛情やそのほかの要素によるものだったりします。
明らかに、心からの愛情によって行われるものは、深く、残るものです。イスラムの聖典コーランは共感を、関係や連帯における最も重要な下地だとしており、WHO・世界保健機関も共感を生きるための技術だとしています。共感とは、自分がその状況におかれなくても、他者の生活を理解することです。
共感とは人間のもっとも美しい特性です。人間は共感することで、他者に対する尊敬を表明することできます。この感情は人々の関係を活性化し、穏やかなものにします。共感により、私たちは危機的な状況にある時に、精神的圧迫から解放されます。
ほかの人と関係を築きたいとき、彼らとの共感は、速やかに、しかも大きな効果をもたらします。実際、共感は、他人との関係を築く近道であり、また、彼らとの関係の質を高めます。他人の感情を理解できないとき、彼らとの関係が築かれることはありません。
心理学者の見解では、共感とはほかの人の世界に入っていける能力とされています。まさに、明確な形で、その人の感情を理解し、関係を築くことができ、その人も自分が理解されていると感じます。私たちが他者を深いところで理解した場合、その人も私たちの話に耳を傾けるようになり、理解し、私たちをよりスムーズに受け入れます。
「感情の反射」という技術は、1950年代に、医療関係者が共感を示すために使った技術です。共感や感情の反射は、信頼を築き、人々を孤独感や自己中心性から解き放ち、また、治療効果があります。
他者との関係で自己中心性を示し、彼らの個人的特徴を無視する人は、たいてい了見の狭い人々であり、通常、広い世界にいるほかの人間に無関心です。実際、このような人物は、広い世界の中で数多く存在し、生活しており、ほかの人と親しくなれず、友人関係も築けません。
ほかの宗教と比べて、イスラムが優れているのは、昔から人間同士の愛情や連帯、関心を大変に重視しており、強い愛情関係を築き、常に互いに対して、親切心や愛情を持って接するよう努力している点にあります。
おそらく、全ての人間が1人の父親と母親のもとに生まれてきているという重要な哲学のひとつとは、それぞれと親しい関係を築き、団結し、同胞精神を持つことでしょう。イスラムの戒律や法に注意すれば、イスラムは親孝行や子どもへの献身、人々に尽くすといった、様々な集団の愛情や関心を増すようなものを義務、あるいは望ましい行為として勧め、この技術を身につけることを強調していることがわかるでしょう。
親しさや共感などは、イスラムの重要な教えのひとつであり、イスラム初期の時代における、この教えの最も価値ある成果です。コーラン第3章アール・イムラーン章イムラーン家、第103節では、神は友情をあなた方の心の中に作り出したとして、次のように述べています。
“あなた方は神の絆にしっかりと掴まるべきであり、分散してはならない。あなた方に対する神の偉大な恩恵を心に刻むがよい。当初、あなた方が互いに敵対していた時、神はあなた方の心に友情を呼び起こし、そのお恵みによりあなた方は同胞となったのである”
この節によれば、コーランが下され、信仰の中で人々が共感した後、分裂がなくなり、社会にはびこっていた腐敗行為が不和分裂は団結や統一に変わり、人々の間に友情が生まれ、彼らが共感した、つまり、心からの信仰や思想の中で、団結するにいたったということです。
ペルシャ語の神秘主義詩人モウラヴィーは、同じ言葉を使っていても、他者を苦しめ、世界を黒く、不安定にする人々は、非常に多いとしています。しかし、様々な集団に属するこのような人物は、愛ある共感により、それぞれ似るようになり、団結にいたるということです。モウラヴィーはまた、インド人とトルコ人が共感により、互いの言葉を理解できることもある、たとえトルコ人同士であっても理解できないこともある、心の言葉は別のもので、共感は言葉が同じということよりも尊い、と吟じています。
共感が意識の段階から、意欲や決意、そして行動となって現れるためには、善意が現実のものとなる必要があります。これは、行動の段階においても善意を持ち、行動に関して信じているものに基づいて行動すべきだということを意味します。
一方、共感するためには、他者への関心を持つ必要があります。好ましい関心とは自然な形で共感の感情を生み出します。これは、コーラン第28章アルゲサス章、「物語」第10節にも見られます。
“ムーサーの母の心は、息子を思う以外、空虚になった。彼女が信者でいられるよう、もし我らが彼女の心を信仰や希望で強くしなかったならば、彼女は危うくそのことを打ち明けてしまうところであった”
相手に対して注意深く、耳を傾けるくことは、共感を高めるのを大変促進します。相手が話すのをさえぎったりすることは、決して相手の感情の理解を進めません。
つまり、一部の技術を教わることで、同僚や上司、友人としての共感を高めることができます。相手の抱える問題を理解した場合、決してその時に対処法を示す必要はありません。その人の問題は理解したが、その人を助けることはできない、ということを示せばよいのです。コーランや言行録には、イスラムの預言者ムハンマドが、他人の話をよく聞いていたことが伺えます。彼はこの方法を、他人に関心や愛情を向け、敵の扇動を防ぐために使っていたのです。
共感するため、よい聞き手となり、相手の話を聞いて、その人が受けれいられていると感じられるようつとめましょう。これに関して、誠実さは共感するのに必要です。ありのままの自分を示し、現実的に行動し、欺瞞的な行動をとらないことです。全体として、共感とは練習することによって磨ける技術の一つなのです。