イランの国際湿地の地理的な位置づけ
これまで、この番組では数多くのイランの国際湿地をご紹介してまいりました。最終回の今夜は、これまでにお話してまいりました内容を総括してみたいと思います。
この番組では、イランの国際湿地の地理的な位置づけや生物の多様性、地域的な重要性とともに、それらの湿地が地元の住民の暮らしに及ぼす影響についてお話いたしました。湿地は、まさに大自然の神秘の1つと言うべきものであり、人間の存続はある意味で湿地の存続と結びついています。生態系は、世界のほぼ全域にわたり様々な規模で存在しており、生物の多様性は動植物をはじめとする全ての存在物の多くを網羅しています。
湿地の重要性は、その広範囲にわたる役割や機能にあります。湿地というこの価値ある天然の資本は、気候の調整のほか、水の確保と水質の維持、洪水や干ばつの制御、砂嵐や砂塵の阻止、生物の多様性の維持、有毒ガスや汚染物質の浄化や制御などにおいて重要な役割を果たしています。
湿地はエコシステムの1つであり、地球の温暖化の防止に極めて重要な役割を果たしています。さらに、湿地は多くの写真家や画家、自然史の研究者、野鳥愛好家や生態学者の多くにとって、インスピレーションや動機付けを与える、適切な空間を有するとともに、人類の文化遺産ともみなされています。また、湿地を文化的な背景とした数多くの詩や信条、ことわざや物語も作られています。
湿地は地球上の生物の生活において重要な役割や位置づけを有しています。このことから、湿地の保護に向けて世界規模での努力を推進する目的で、1971年、イラン北部・カスピ海沿岸のラムサールという町で、水鳥と湿地に関する国際会議が開催され、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が採択されました。これは、採択された町にちなんでラムサール条約と呼ばれ、これまでに169カ国、総面積にしておよそ2億1000万ヘクタールに上る2000箇所以上の湿地が、国際的な価値のある湿地としてこの条約に登録されています。
イランの湿地は、面積の点では世界に存在する湿地全体の1%にも満たないものですが、イランは独特の気候風土や地理的条件を有することから、多種多様なタイプの湿地を有しています。ラムサール条約で定義付けられている42種類の湿地のうち、イランには41種類の湿地が存在します。これは、イランの国土に実に多種多様な地形が存在していることによるものです。
イランの北部と南部には、合計2700キロ以上に及ぶ海岸が存在しており、またイラン国内には延べ数千キロに及ぶ季節的、永久的河川が流れるほか、1800キロ以上の国境河川が存在しています。さらに、イランは渡り鳥が通過する2つの主要なルート上に位置しており、明確な四季の変化が見られます。これらの要素により、イランの湿地は極めて大きな多様性に恵まれているのです。
現在、イラン国内では数百に上る湿地の存在が確認されており、そのうちの35の湿地は面積がおよそ150万ヘクタールにのぼり、ラムサール条約に定められた24のタイプの湿地に相当するものとして、この条約に登録されています。これまで、この番組では、こうした湿地をご紹介し、イランの国際湿地に生息する動植物についてお話するとともに、それぞれの湿地の特徴についても触れてまいりました。
この番組では、イラン南部の沿岸地域全体で唯一、マングローブ樹林が存在するアーズィニー国際湿地とといった、イランの熱帯地域に存在する絶景としての湿地を数多くご紹介してまいりました。
イラン北西部には国内最大の湖かつ、世界で2番目に大きい塩水湖であるオルミーイェ湖が存在し、ここでは1億年前から変化していない生きた化石とされるアルテミアをはじめとした小型の甲殻類が生育しています。その一方で、イラン北部マーザンダラーン州にあるフェレイドゥンケナール国際湿地は、シベリアからやってくるツルの飛来地であり、そこではこの野鳥のフルートのような美しいさえずりが響き渡っています。
一方、イラン南部ペルシャ湾に浮かぶシードヴァル島はさんご礁に覆われ、アコヤガイの最適な生息地の1つであることから多くの潜水夫や漁師がやってきます。また、イラン北部・カスピ海につながるゴルガーン湾とミヤーンカーレ島は、バードウォッチングに適していることから、この分野に興味を持つ人々が集まります。
イランの湿地が多様性に富んでいる理由の1つに、淡水湿地と塩水湿地、そして汽水湿地の存在が挙げられます。特に、イラン南西部フーゼスターン州にあるシャーデガーン湿地などは、淡水と海水が同時に存在し、汽水湿地となっていることから、この上ない生物の多様性を生み出し、イランの自然界の摩訶不思議ともいえる存在とされています。
「イランの国際湿地」はまた、皆様にこの価値ある生態系について知っていただくとともに、自然界におけるこの美しい要素を脅かす危険因子についてもお話するチャンスとなりました。今日、世界の多くの国が湿地の復元にとってプラスとなる措置を講じているものの、そうした活動は湿地が破壊される速度には追いついていません。また、開発プロジェクトにおいて自然環境への配慮がなされていないことや、湿地に生物学的、物理的、化学的な各種の汚染要素が入り込んでくること、そして世界規模での気候の変動による干ばつなども、湿地の存続を危険に陥れる要因といえます。
締めくくりとして、この番組の目的に触れたいと思います。それはまさに、自然界の要素はその美しさに加えて、地球の存続のサイクルにおいて多かれ少なかれ重要な役割を果たしており、それらの機能が低下することは、事実上このサイクルのつつがない回転に支障をきたすという点を指摘することです。私たちは、創造主なる神が、天と地、そしてその間にある存在物を決して無目的に創造したのではなく、また創造世界はまさに神によって創造され、神はあらゆる存在物を目的あるものにしていることを認識しなければなりません。このため、私たちは自分の身の周りの自然環境に敬意を払う必要があるのです。
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