ナツメヤシ
今回は、ナツメヤシについてお話します。
ナツメヤシは、イランの非石油製品の輸出品目のひとつで、栄養価の高い食品です。イランには400種類のナツメヤシがあると言われ、イランの各地、特に南部で生産されています。
ナツメヤシは天国の果物として知られ、聖典の中にもその名前が繰り返されています。それは、この果物の多くの効能にあります。ナツメヤシの木が地上に誕生したのは中生代のことだとされていますが、一部の考古学者は、およそ5000年前に、人間はナツメヤシの食べ物としての価値を突き止めていたと考えています。アッシリア帝国やバビロニア帝国の時代から残る古代の碑文、エジプト、シリア、リビア、パレスチナの人々の古い記述は、この時代に、特定のやり方にしたがってナツメヤシの栽培や売買が行われていたことを示しています。
ナツメヤシはヤシ科の植物です。その原産地は明らかになっていません。一部の人の間では、南西アジアやチグリス・ユーフラテス川の一帯だとされていますが、北アフリカを原産地と考える人々もいます。
ナツメヤシの木は、乾燥や暑さ、塩分に強いことから、熱帯地域や乾燥地帯などでも育ちます。このような地域にヤシ園があり、10メートルから20メートルの木が並んでいるため、その周辺に人々が居を定めて暮らしています。
ナツメヤシは一般に、栄養不良の問題を抱える地域の人々にとって、欠かせない食品となっています。また、この果物は、洪水や自身、干ばつなどの自然災害や戦争などの危機の際の非常食にもなります。ナツメヤシには数多くの効能があるため、戦略的な農産物と見なされています。一部の栄養学の専門家は、「一日にナツメヤシの実を一粒とラクダのミルクをコップ1杯飲めば、一日に必要な栄養が確保される」としています。
ナツメヤシは糖質が7割を占めています。450グラムのナツメヤシのカロリーは、1000キロを超えます。ナツメヤシには糖質の他、ビタミンA、B、C、E、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどが豊富に含まれています。ナツメヤシの種にも、脂質やカルシウム、繊維が含まれています。砂漠や草原の人々は、ナツメヤシの種でパンを作っています。また一部では、この種から非常に甘い飲み物も作られています。
ナツメヤシに含まれる栄養分は、それぞれが人間の健康に大きな役割を果たしています。ナツメヤシは、その栄養価の高さから、ベジタリアンに支持されています。ナツメヤシは、老化を防止し、皮膚のみずみずしさ、肉体や精神の健康を保つ効果があるとされています。この果物は、マグネシウムや抗酸化成分が含まれているため、ガンの予防になり、筋肉を強化します。
ナツメヤシは、心臓の問題を緩和し、血液を作る上で重要な役割を果たし、記憶力を強化します。ナツメヤシにはビタミンB群が含まれているため、心を穏やかにし、神経を和らげ、気分が沈むのを妨げます。さらに、聴覚、視覚、腰痛などにも効果があります。とはいえ、食べすぎには注意する必要があります。
ナツメヤシは産業にも利用されています。例えば、造船業ではナツメヤシの種からとれる油が非常に役立てられており、ナツメヤシからバイオ燃料のエタノールが生産されています。
また、ナツメヤシの枝や葉は、美しくて頑丈なかごや敷物に利用されています。そのため、ナツメヤシは、木の幹から葉や実、種を含む全ての部分を活用することのできる植物となっています。
イランは、世界におけるナツメヤシの主な生産地です。この果実は、イランの重要な農産品のひとつで、イランにおけるナツメヤシの栽培面積は20万ヘクタールを超えています。FAO国連食料農業機関の2013年の統計によれば、イランは世界第4位のナツメヤシの生産地とされています。
世界には3000種類を超えるナツメヤシが存在するといわれています。イランではそのうちの400種類が生産されており、それぞれに色や大きさ、味が異なり、柔らかいもの、比較的乾燥しているもの、そして完全に乾燥しているものの3種類に分けることができます。
ナツメヤシの収穫期となる暑い季節に、フーゼスターン、ホルモズガーン、ファールス、ブーシェフル、ケルマーン、スィースターンバルーチェスターンといったイラン南部の地域を訪れると、腰に強固なベルトを縛りつけて背の高いナツメヤシの木に登り、ナツメヤシの実が房状にぶら下がっている大きな塊をもぎとっている人々の姿を目にすることがあるでしょう。このひと房の重さは、6キロから12キロにもなります。
イランは、世界におけるナツメヤシの主な輸出国で、世界のナツメヤシの輸出額のおよそ4分の1を締めています。イラン産のナツメヤシは、世界5大陸に輸出され、アフガニスタン、パキスタン、トルコなどの近隣諸国から、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどにも及んでいます。
原料の売却を防止し、付加価値をつけるため、近年、イランの農業関係者は、包装産業や加工産業に投資を行ってきました。現在、ナツメヤシの濃縮液などの加工品が手に入るようになっています。
最近、イランの研究者らが、保存料を使用しないナツメヤシの缶詰の生産に成功しました。この方法の長所は、ナツメヤシに含まれるポリフェノールを吸収できる点にあります。ポリフェノールは抗酸化作用があり、がんの予防になります。また、缶詰の場合には生産品を輸出するのに時間がかかったとしても問題がありません。