西側諸国の女性の政治への参加
今回は、西側諸国における女性の政治への参加についてお話することにいたしましょう。
1995年、中国・北京において開催された第4回世界女性会議では、「平等、開発、平和のための行動」をスローガンとし、「北京宣言」及び「行動綱領」が採択されました。これに伴い、西暦2000年には、各国の首脳が国連ミレニアム開発計画に調印し、政治・経済的な問題を克服し、変革を起こすための前提条件として、ジェンダーの面での平等と女性の能力開発が提起されています。この開発計画に基づき、国会の全議席の30%を女性に割り当てる事が決められました。
しかし、複数の統計が示しているように、世界の多くの国の政治的に重要な役職に就いている女性の数は、驚くほど低く、政治的に高いポスト全体の5%にも満たないのが現状です。この統計は、常に男女平等を主張する西側諸国に関しても当てはまります。
統計によれば、西側諸国の政治・社会構造における真の男女平等の実現には、まだ長い道のりがあるとされています。それではここで、イランの女性問題の専門家であるアーホンダーン博士のお話をお聞きください。
「世界の99%の女性は、法律上政治に参加できる権利を有しているが、大多数の国においては女性は一般的なポストに就いており、政治的に重要な役職にある女性は驚くほど少ない。西側諸国ですら女性の政治への参加が少ない事には、数多くの理由が存在する。政治構造において男性優位の文化が浸透していたために、政治団体や政党は伝統的に女性の政治参加を好まず、女性議員の数の制限に努めてきたのである」
「一方で、女性は母親としての役割も担っていることから、一連の制限という圧力にさらされており、この事から彼女たちはフルタイムでは政治関係の任務を遂行できなくなっている。プロの政治家としての職務に従事できる女性の割合は、非常に少ない」
西側諸国において、女性が政治に参加したり、社会活動を開始したのは18世紀のことでした。しかし、20世紀末からは特にフェミニズムや国際化の流れの拡大とともに、西側諸国の女性は政治的な決断の場に参加すべく、さらなる努力を重ねました。
1945年以降は、多くの西ヨーロッパ諸国において、女性が男性と同等の参政権を獲得しました。女性は長い戦いの末、遂に政治的な自由を勝ち取りましたが、女性が本当の意味で政権を掌握するための努力はまだ始まったばかりでした。
1970年代以降も、フェミニストが政治の構造の本質や定義により注目を注ぎました。そうした人々の見解では、法律の制定だけでは男性による支配をよしとする考え方や通念を覆すことはできない、とされていたのです。例えば、1970年までのフランス議会では、女性議員の数が減少していましたが、それは当時のフランスで極右政党が政権を掌握していたことによるものです。
1980年代の終わりからは、政治的な決断の場への女性の参加のプロセスに根本的な変化が生じました。しかし、現実はそれでも定められた目標には程遠いものでした。その例として、イギリスでは現在、首相を初め、重要な政党の指導者の多くを女性が務めているものの、行政職での男性の割合に対する女性の割合は依然として低いままにとどまっていることが挙げられます。実際に、イギリスの内閣における女性の閣僚は男性より少なく、議会における男性議員と女性議員の比率は2対1となっています。すなわち、イギリス議会では全議席のうち女性議員はわずか3分の1に過ぎません。
また、アメリカでは全50州のうち、女性の下院議員が選出されているのはわずか6つの州に過ぎず、22の州では女性の上院議員が選出されたことがありません。さらに、ミシシッピ州はアメリカで唯一、女性の議員を輩出しておらず、州知事に女性が就任したことのない州となっています。一方、コロラド州は州議会における女性の割合が42%を占め、州レベルの女性代表者の数が最も多いものの、この州でも女性の知事や上院議員はまだ誕生していません。
ドイツの連邦議会や州議会でも、女性議員の占める割合は11%から36%にとどまっています。統計によれば、ヨーロッパ諸国のうちで議会における女性議員の数の多い上位10カ国にランクインしているのは、アイスランド、スウェーデン、そしてフィンランドの3カ国のみとなっています。
IPU・列国議会同盟の最近の統計によれば、各国議会における女性議員の数の点で、ルワンダを初めとするアフリカの貧困国の一部は、欧米諸国に比べて比較的高く位置づけられています。この統計では、ルワンダ議会における女性議員の割合は63%以上にのぼり、長年にわたりこのランキングで上位に位置していたスウェーデンなどのスカンジナビア諸国よりも高くなっています。
ルワンダに次いで、女性議員の割合の高さではボリビアが53%以上で2位につけています。3位はキューバでおよそ50%、4位はアイスランドでおよそ47%、5位はニカラグアでおよそ46%、そしてスウェーデンはおよそ43%で6位となっています。
もっとも、列国議会同盟のマーティン・チュンゴング事務総長の見解では、議会における女性議員の割合でルワンダが首位となっている理由は、1994年の同国での紛争による虐殺の後に実現した憲法改正と政治構造の改革とされています。この改革では、女性の政治への参加の重要性が大きくクローズアップされ、議会における女性議員の割合を30%にすることが考案されました。現在、この割合は60%を越えていますが、その理由はチュンゴング事務総長によれば、ルワンダ国民の意識に変化が生じたためだとされています。チュンゴング事務総長は、「今やルワンダで、女性が政治的に重要なポストにつく事は決して驚くに値しない」と語っています。
専門家の見解では、西側諸国では政治的に重要なポストに適した男性がいない場合にも、そうしたポストに任命される女性の数はごくわずかでした。その例として、イギリスのキャメロン首相が辞任しなかったり、あるいは元ロンドン市長でイギリスのEU離脱の音頭をとっているジョンソン氏が首相の座を狙ったなら、現在のテレサ・メイ首相が誕生する事はなかったと思われます。
こうした事実に注目した場合、西側諸国における女性の政治参加が、果たして第4回世界女性会議での国連が目指していた「世界の半分、権力の半分」という理念に合致しているのか、という疑問が出てくるのではないでしょうか。