イマーム・マハディー
今週も、再来を約束された救世主として知られる、イスラム教シーア派のお隠れ第12代イマーム・マハディーにスポットを当ててみたいと思います。
前回は、このイマームが現在もお隠れの状態にあること、そして彼が姿を現す兆候の一部についてお話しました。今夜は、イマーム・マハディーの統治時代の特徴についてお話することにいたしましょう。
イマーム・マハディーは、現在のお隠れ状態から姿を現す事によって、圧制や多神教信仰、不正や偽善を根こそぎにし、世界の人々を一神教信仰への導きます。言うまでもなく、不変の真理の最終的な勝利、うわべだけの華やかさの破壊、そして世界に抜本的な変革を起こすには、しかるべき相応しい力が必要になります。
すでにお話しましたように、イマーム・マハディーの特別な教友は313人存在します。これらの人々は、この救世主が率いる軍勢の主要な司令官の集団を形成しています。彼らは、聖地メッカにおいてイマーム・マハディーの声を聞くとすぐに、この救世主のもとに駆けつけます。もっとも、これらの主要な司令官らの支援に駆けつける教友らはほかにも存在し、伝承によればその数は1万人、あるいは1万2000人とも言われています。
イマーム・マハディーの特別な教友たちは、精神性の点で当時最も完成度が高く優れた人々とされています。彼らは、物事を成し遂げる高い実行力や管理能力を持っている事に加えて、イスラムの教えに精通している宗教家でもあります。
宗教の偉人たちは、イマーム・マハディーの教友たちの人格や精神性の面での特徴について明言しています。そうした特長には、学識や人としてあるべき常識、信仰心、敬虔さ、貞節で禁欲的であること、優れた洞察力や神への服従、祈祷や神の賞賛を欠かさないこと、忍耐強さなどが挙げられます。
イマーム・マハディーの教友の中には高齢者もいますが、大多数は若者たちです。実際に、若者はこの世への執着がなく、穢れがないことにより、不変の真理を容易に受容できる事になります。イマーム・マハディーの教友たちの特徴の1つは勇敢さであり、彼らは数々の伝承において、決して戦いの場から逃げる事のないライオンに例えられています。
イラクの偉大なイスラム学者セイエド・イブン・ターヴースは、シーア派初代イマーム・アリーが残した言葉として、次のように述べています。
「イマーム・マハディーの教友たちは、強い信仰心を持った人々であり、その全存在をかけて、神を信じている。鋭いかぎづめを持つワシやライオンのように強靭なこれらの男たちは、自らが慕うイマームを取り巻き、戦争では盾となって彼を守り、あらゆる指示を全身全霊をかけて遂行する。彼らは、光り輝く存在であり、その心はさながら明かりのようである。そして、神に畏敬の念を抱き、神の道において命をなげうつ事を願望している」
神は、イマーム・マハディーの支柱であり、わが身を捧げたこれらの勇敢な人物らを通じて、利己的な統治政権を粉砕し、それらの人物に世界各地を統治させることになります。
イマーム・マハディーの統治体制が成立した後には、この偉人に近しい教友たちが世界各地に派遣され、イマーム・マハディーの側からによる地域の行政管理の責務を請け負うことになります。そして、この偉人が打ち立てた世界的な統治体制の基盤を強化し、各国の繁栄と発展に尽くすのです。
それでは、ここからはイマーム・マハディーによる国際的な統治体制がどのような特徴を持ち、どのような規範に基づいているかについてみていくことにしましょう。
イマーム・マハディーによる世界的な統治体制が地球上に成立するのは、いわゆる物理的な勢力や学派、そして政治的、社会的な思想哲学が人類の幸福や救いに関する数々のスローガンを掲げながらも敗北し、頓挫したときです。こうした状況において、人類は善後策を捜し求め、その結果として精神的に公正で世界的な政権を受け入れるための下地が整います。
イマーム・マハディーによる統治体制は、これまでに人類が実現できなかった理想的な社会や、公明正大さという概念を新たに定義づけるものです。イマーム・マハディーが打ち立てる理想的な社会では、その基本的な目的は人間を高みに至らせ、幸福の王道へと導くことにあります。このような社会を導く手綱は、神の啓示や教えに基づく新しい統治体制に握られています。
このような体制の出現により、圧政的で腐敗した政権は歴史の舞台から消え去ります。これについて、シーア派5代目イマーム・ムハンマドバーゲルは次のように述べています。“お隠れイマームが立ち上がると、偽りの政権のすべてが崩壊する。この偉人による統治は世界の東西に浸透し、ここに全世界を統一する1つの統治体制が成立する”
この政権においては、人間としての尊厳や正義、安全、福祉と経済発展の全ては一神教を基軸として定義されます。この統治体制における明白な原則の1つは、法治主義です。実際に、人間社会の根本的な問題の1つは、人間が考案した不当で不完全、時には矛盾をはらんだ法律に端を発しています。また、法律そのものは正当であっても、これを実施する然るべき行政管理者が存在しない場合もあります。
イマーム・マハディーは、預言者ムハンマドの提唱する慣習や宗教法を完全に理解しており、イスラム法を物質的、精神的な側面の全てにおいて復活させ、実施します。原則的に、この救世主の方針は預言者ムハンマドのとった方式を踏襲しており、彼は誤った慣習やしきたりを廃止するとともに、それまで停止されていたイスラム法を蘇らせるのです。
イマーム・マハディーが実現させる社会の、最も重要な理念の1つは全世界に正義を普及させること、そして暴虐や圧制の根絶です。太古の昔から人類が格闘し、彼らの生活に影響を及ぼしてきた問題は、圧制や不平等であることを忘れてはなりません。
人類は、1人1人違った価値観を持っているものの、誰もが正義を強く渇望し、戦争や騒乱を収束させ平和と正義を実現させる人物を求めています。イスラムでは、人間は本質的に正義を求める存在であると考えられており、圧制や暴虐、対立の時代は恒久的なものではなく、最終的に人類社会は正義と平等、友愛の実現した、秩序のあるものになるとみなされています。
人類は、平等に創造されており、彼らの自然的な欲求はほぼ似通っています。何びとも、人権の面で他人にはない特権を持っている人はおらず、全ての人間は法の前に平等なのです。白色人種であれ、黒色人種であれ、また雇用者と労働者、大富豪と貧困者、学識者と非識字者といった違いによらず、人間は誰もが法律のもとでの平等を保障されています。イマーム・マハディーの統治政権の方向路線においては、全ての人々が自然の恩恵を一様に活用できる権利を持っています。
国家主権に関連する諸法律により、公共の財産にまで手を伸ばす多くの政権とは異なり、イマーム・マハディーによる統治政権では、イマーム自身がこれらの財産を公共のニーズを満たすために活用し、公共の財産や天然資源を人々の間に平等に分配します。すなわち、全ての人々がこうした恩恵を平等に利用できるようになるのです。自然の恩恵を活用する上で、いわゆる人脈やコネによって人々の間に優劣が生じることはなく、誰かがほかの人よりも多くの恩恵にあずかるということはありません。これについて、イマーム・バーゲルは次のように述べています。
“イマーム・マハディーが立ち上がったならば富を人々の間に公正に分配し、善人であれ放蕩者であれ、神の全ての存在物に対し公正かつ友愛的に接する”
イスラムの預言者ムハンマドの言葉通り、人類はイマーム・マハディーの時代においてそれまでにはなかった恩恵にあずかることになります。この偉人が実現させる正義は、全ての人々が渇望し、その醍醐味を味わえる、非常に見事なものであり、そのときに人類はほかに類のない幻想的な時代を堪能する事になるのです。