養蜂産業
この時間は、イランの養蜂産業についてお話ししましょう。
ミツバチは、神の創造物の中でも最も驚くべき存在です。一部の人々は、ミツバチが存在していなかったら、創造世界の生命は危険に陥り、地球上の生活は、非常に困難になっていたと考えています。ミツバチは、植物の受粉において非常に重要な役割を担っています。
植物の受粉は、さまざまな方法によって行われます。昆虫、特にミツバチによる受粉は、植物の繁殖において最も重要な方法です。例えば、リンゴなどの被子植物の受粉の90%が、ミツバチによって行われており、アーモンドに関しては、ミツバチにのみによって、受粉が行われています。
ミツバチの受粉の経済的な価値は、はちみつやハチの巣から取れる蠟をはるかに超えています。そのため、一部の国では、養蜂場の経営者に対し、それらを庭や畑で維持するために多くの資金を提供しています。国際養蜂協会連合アピモンディアのマッケイブ会長は、次のように語っています。
「ミツバチを生産サイクルから排除することは、環境への警告を意味する。生物の多様性や人類の存続のために、ミツバチは欠かせない存在である」
世界には、2万種類を超えるハチが存在します。ミツバチはその中の一種で、集団で生活します。ミツバチは、植物や花の蜜や花粉を集め、それを巣に持ち帰り、はちみつを作ります。はちみつは、病気の治療に適しており、栄養価の高い食品です。
はちみつの色は、そのハチがどの花に止まり、どの花の蜜を吸ったかによって異なります。はちみつは、鮮やかな色のものもあれば、暗い色をしたものもあります。はちみつの色は、白に近いものから、黒に近いものまでさまざまです。暗い色のはちみつは、明るい色のそれよりも、ミネラルが豊富に含まれると言われています。
はちみつは栄養価が非常に高い食品です。それが、ミツバチによって花が選ばれている理由だと言えます。ミツバチは、本能的に、価値のある花とそうでない花を見分けることができます。ミツバチは、すべての花に止まるわけではありません。そのような見分ける能力や香りをかぐ能力により、最も質のよい花を選びます。
はちみつは、栄養価の高い食品であるだけでなく、栄養の不足を補う働きも持っており、病気の治療にも利用することができます。はちみつには、カルシウムや鉄分、リン、カリウム、ヨウ素、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケルなどのミネラルが含まれており、その量は、さまざまな種類のはちみつによって異なります。
はちみつ1キロ当たりには3000キロ以上のカロリーが含まれています。また、はちみつは、タンパク質やアミノ酸、ギ酸などを含んでいます。ギ酸は殺菌力があり、はちみつの腐敗を防ぎ、リュウマチの予防になります。はちみつは、傷の消毒剤、特に口内炎やのどの炎症を緩和する物質として利用することができます。
世界では、およそ8100万個のハチの巣から、150万トン以上のはちみつが作られています。イランは、ミツバチの巣や良質なはちみつの生産に関して、世界で積極的な活動を行っている10か国のうちのひとつです。2013年の統計によれば、イランの養蜂産業は、ハチの巣の数の点で世界4位、はちみつの生産量の点では世界8位となっています。
イランでは、多様な気候、およそ1億3000万ヘクタールの森林や牧草地の存在により、養蜂活動の成長に適した条件が整っています。イランの養蜂活動は、四季が存在することから、一年を通して行うことが可能です。
イランの養蜂産業の歴史は、紀元前にさかのぼります。かつて、養蜂は、娯楽や副次的な職業とされていました。しかし、20世紀に入り、イランの養蜂産業は大きく変化しました。この頃、新しい形のハチの巣が生まれ、古い方法から新しい方法に移行しました。
およそ40年前から、品種改良群の女王蜂がイランに入り、女王蜂の飼育に関する教育が行われるようになったため、政府系部門や民間部門で女王蜂の生産が開始されました。現在、年間10万匹を超える女王蜂がイランで生産され、養蜂場に分配されています。
養蜂産業は、東・西アーザルバイジャーン、アルデビール、コルデスターン、ロレスターン、ゴレスターン、マーザンダラーン、イスファハーンなどのイラン各地で行われています。東・西アーザルバイジャーン州、アルデビール州など、イラン北西部のはちみつは、非常に高い品質を誇っています。
世界で最も有名なはちみつのブランドのひとつが、アルデビールのサバラーンのはちみつです。アルデビール州は、イランのはちみつの主要な生産地です。この州では、温暖な気候や植物の多様性により、一つのハチの巣から、平均して40キロ以上のはちみつを生産することが可能になっています。
アルデビール州の養蜂家は、害虫を駆除するために天然の物質を利用しており、生産されたはちみつは、有機採蜜のオーガニック製品です。
この他、イランのはちみつの主な生産地は、西アーザルバイジャーン州で、年間2万トン以上のはちみつが生産されています。西アーザルバイジャーン州は、100万個を超えるハチの巣と6000人の労働力、緑豊かな草原、現代的な包装工場の存在により、はちみつやその加工品の生産において高い可能性を有しています。
ハチの巣からは、はちみつだけでなく、ビーベノム・ハチ毒、ビーズワックス・蜜蝋、プロポリス、ローヤルゼリー、ビーポーレン・ハチ花粉などが作られており、経済的にも、病気の治療の点でも、はちみつよりも高い価値を有しています。ビーベノムは、健康、美容効果が非常に高くなっています。
プロポリスは、抗炎症効果や抗菌作用があると言われています。ローヤルゼリーは、ミツバチの若い働き蜂が、花粉やはちみつを食べ、体内で分解、合成し、分泌する乳白色のクリーム状の物質です。ローヤルゼリーは非常に価値が高く、アルツハイマー、血圧の上昇、がんの予防に効果があります。
イランのはちみつの消費量は、世界の他の国に比べて高くなっています。世界のはちみつの消費量は、平均して年間250グラムから300グラムですが、イランの年間消費量は、およそ1キロ、つまり世界の平均消費量のおよそ3倍以上となっています。
イランは、はちみつの輸出に関して地域に好ましい市場を有していますが、国内の消費量の高さと値段の安さにより、輸出量はそれほど多くありません。そのため、イランで生産されたはちみつのほんの一部が、東アジアやヨーロッパ、近隣諸国に輸出されているのみです。
トルコは、イランのはちみつの主な輸入国のひとつです。トルコはイランから輸入したはちみつを、トルコのブランドとして、ペルシャ湾岸、コーカサス、ヨーロッパ諸国に輸出しています。