2月 27, 2018 21:56 Asia/Tokyo
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今回は、映画における男女差別についてお話することにいたしましょう。

国連ミレニアム開発目標の1つに、全ての職種や決定の場面への女性の参加を増やすための下地作りが挙げられています。多くの専門家も認めているように、こうした目標が達成されていない現実は、発展途上国のみならず、男女平等を主張する一部の西側諸国でも明らかであり、その問題の現場の1つが映画界です。

西側諸国の専門家の多くがこれほど事実を認め、主張しているにもかかわらず、映画界では今なお男女差別が横行しています。そこで、今回はまず、女性の権利の分野に関するイラン人の専門家、アーホンダーン博士の話をお届けいたしましょう。

「西側諸国では、フェミニスト運動が行われ、男女平等というスローガンが叫ばれているにもかかわらず、数多くの統計や報告は、映画という国際的な産業において、女性が差別的な既成概念に基づいて起用されていることを物語っている。アメリカの南カリフォルニア大学の情報・ジャーナリズム学部が、国連の後援により行った調査では、映画の中のせりふ全体のうち、女優に割り当てられるのはわずか3分の1にも満たない。また、映画関連の職についている女性の割合は、22.5%のみである。さらに、政治や経済面での運営、学問や科学技術、工学などに関する職種の女性の割合は、15%を切っている」

 

「オーストリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、ロシア、韓国、アメリカ、イギリスの映画を分析調査した結果、映画の中でも性の魅力をアピールする場面においては、女優が男優の2倍も多く起用されている。このため、映画への女優の出演は、どちらかというと女性を性的に利用することが目的であり、女性として、また人間としての彼女たちの尊厳や本当の意味での性的な平等は遵守されていないのが現実である」

 

フローレンス・ローレンス

 

アメリカ映画における初の女性のスターは、フローレンス・ローレンスでした。それ以降に、4年連続で最も人気を集め、最大の利益を獲得できたのは、カリフォルニア州に生まれたわずか6歳の少女シャーリー・テンプルでした。

当時、女優として活動していたヘッダ・ホッパーやルエラ・パーソンズといった女性たちは、当時の著名なジャーナリストで、映画評論家でした。彼女たちの著作は、数百万人もの人々に読まれ、1本の映画の成否を決定付けるほどの影響力を持っていました。しかし、ハリウッド映画という世界で最も強い力を持つ映画産業の誕生から100年以上が経過した現在、ハリウッド映画の発展に大きく貢献した女性の存在は、取るに足らないものになりました

 

映画製作における性的な不平等と戦うイギリスの女優ヘレン・ミレンは、次のように述べています。

「現代の映画をご覧いただければ、主役を演じている女優の数が男優よりはるかに少ない事がお分かりいただけるはずである」

これまでに、ゴールデングローブ賞を3度も受賞しているヘレン・ミレンはまた、洋画における配役の方法は論外であるとし、このような配役方法においては、若い女優に対して年配の男優が起用されるとしています。

ヘレン・ミレンは、2006年に映画『エリザベス1世、愛と陰謀の王宮』で、エリザベス女王の役を演じたことにより、アカデミー賞の最優秀女優賞を受賞しています。彼女は、女性に対する映画産業の捉え方を強く批判するとともに、年齢を理由に女優を出さないことは不公平な行動だとし、次のように述べています。

「この現状は、決して変わることはない。映画「007」のジェームズ・ボンドは日に日に年老いていく。だが、どの映画においても彼の相手役を演じる女優は益々若返っていく。」

 

ヘレン・ミレン

 

ハリウッドは、女性を二等市民として扱ってきました。報酬格差や受賞回数、女性の映画監督の数からは、ハリウッドが世界で最も性にこだわる映画産業であることが見て取れます。たとえば、これまで90回近く開催されたアカデミー賞では、女性の映画監督で最優秀監督賞を受賞したのは、2008年に『ハート・ロッカー』を制作したキャスリン・ビグローのみとなっています。

報酬の具体的な金額は、これまでは映画スタジオの秘密とされていましたが、最近では女優自らがこれを暴露し、大きなスキャンダルを引き起こしています。アカデミー賞を2回受賞したヒラリー・スワンクは、相手役の男優が自分よりも10倍もの報酬を受け取っており、ハリウッドは21世紀よりも中世のようだ、と語っています。

一連の数字が発表されたことで、ハリウッド映画における女性差別の実態が明らかになりました。これらの統計によれば、2002年から2014年までの間に制作された、1300本のアメリカの人気映画のうち、女性の映画監督が演出した作品はおよそ4%のみに留まっています。この数字は、ハリウッドの映画製作の現場担当者や投資家が、女性の監督を信用していないことを示すものです。

もっとも、ハリウッドや長編映画から離れれば離れるほど、映画に関するデータは公平で納得のいくものになります。例えば、資本の単独での支配がある程度抑制されている独立映画においては、女性がより強い力を発揮し、精力的に活動しています。2002年から2012年前の期間において。独立映画フェスティバルに参加した映画監督のおよそ24%は、女性が占めています。

 この期間中に、映画製作を試みながらもこれを達成できなかった女性のうち、58%はその主な理由として経済面での問題を挙げています。このことから、その大半が男性である編集者が高額な費用のかかるプロジェクトに女性を起用したがらないことが分かります。このような捉え方により、1998年の時点では、ハリウッド映画全体のうち女性が制作した作品は9%あったのが、2011年には5%に減少しています。また、この期間中に男性の映画監督が制作したわずか4本の映画により、5億ドルの損害が生じています。

 

ハリウッド

 

この数年に発表されたデータに注目すると、ハリウッド映画が女性にとって適切な場所ではない事が分かります。複数のデータからは、2013年から14年にかけて、女性の映画監督が演出したハリウッドの映画作品は、全体のわずか6%しかないことが判明しています。さらに興味深いことに、女性の監督が非常に少ないハリウッド映画では、女性の観客の数が男性の観客をはるかに上回っているという事実があります。言い換えれば、女性のために映画を制作するのは男性が普通であるということです。性的差別とは別に、こうしたバランスの欠如は、文化面での数多くの影響を及ぼします。

映画評論家のクレア・ジョンストンは、アメリカ映画の中心では、女性は脇役でしかなく、女優は男性の主役を補佐する役に過ぎないとの見方を示しています。また、「ハリウッドでは、男性が能動的な役割を演じ、女性は受動的な役割に甘んじている」としています。

明らかに男性のためだけに制作された映画、特に女性の権利が守られていない映画の醍醐味は、女性を性的な対象として扱っています。西側諸国で制作される映画の大部分は、女性を性的な存在としてはいなくとも、視聴者の期待に反するものです。こうした捉え方が定着したことから、女性の性的なシーンが出てきても、もはや誰も不快感を感じなくなってしまったのです。

最近、100本のハリウッド映画に関して行われた調査の結果、南カリフォルニア大学のメディア情報学科の研究者は、これらの映画における女性の性的な魅力をクローズアップする傾向が、過去の数倍にも強まっているという結論に至りました。

 

これまでにお話したことから、特にハリウッドをはじめとする洋画は、男女平等について考慮していないのみならず、女性の地位の点で、世界の後進地域とそれほど変わらないと言えるでしょう。