3月 05, 2018 18:00 Asia/Tokyo

ミャンマーの過激派仏教徒によるロヒンギャ族のイスラム教徒の苦しみは、終わることがありません。

世界の人権を主張するものたちの沈黙による、ロヒンギャ族のイスラム教徒数十万人の悲惨な状況に関する、懸念すべきニュースが伝えられています。

国際人権団体ヒューマンライツウォッチは、衛星写真と映像を公開し、ミャンマー政府は今年1月からこれまで、55のロヒンギャ族の村をブルドーザーで破壊し、更地に変えたとしました。この画像は、昨年12月2日、ロヒンギャ族の村が燃やされている様子を示しています。その後、今年2月1日に撮影されたこの地域の衛星写真では、この地域で家や住宅、畑が跡形もなくなっていることが示されています。

ミャンマー政府によって計画された査察で、ミャンマー西部ラカイン州に入った外交官は次のように語りました。

「住人が追い立てられ、破壊された地区を視察した。焼けた村と一部の地区は、ブルドーザーで更地にされ、農地も収穫物も消え去ってしまった。まだ人が住んでいるいくつかの村では、人々は非常に強い恐れを抱いており、いたるところに警察や兵士、検問所が見られた」

ヒューマンライツウォッチは、最新の報告で、ミャンマーのイスラム教徒の居住地の状況について、次のような報告を出しています。

「2017年末から、ミャンマー政府は55の村を破壊している。すべての建物や植物は、重機により破壊された。その前と後の状況が写真で明らかになっている。これらの村は、主に2017年8月25日以後に燃やされた、362の村の一部だった。衛星写真は、少なくとも2つの破壊された村は、以前はそのままに放置され居住可能な場所であったことを示している。そのほかの10の村でも、一部のみが焼かれていた数百件の建物も現在、完全に破壊されている」

 

衛星写真によれば、ミャンマー政府は今年1月からこれまで、55のロヒンギャ族の村を破壊

 

ロヒンギャ族のイスラム教徒の畑や住居の破壊は、政府側の2つの理由で行われました。そのひとつは民族浄化における、ミャンマー政府と過激派仏教徒の残虐行為の証拠をすべて消し去ることです。2つ目の理由は、ロヒンギャ族難民のミャンマーに帰還する希望を奪うことにあります。

民族浄化の開始から、およそ70万人のロヒンギャ族がバングラデシュに避難しました。

侵害行為や大量虐殺、村への放火に関して、数多くの報告が発表されています。

抑圧されたロヒンギャ族の懸念すべき情報は、ヒューマンライツウォッチの報告の中にとどまりません。ユニセフもロヒンギャ族難民の子供の状況に関する、衝撃的な報告を発表しています。

ユニセフは最新の報告で、バングラデシュ南部の難民の状況を、衛生や健康、教育、そのほか子供が必要とする設備の点から伝えています。この報告では、バングラデシュでモンスーンの季節が近づくにつれ、汚染された水の利用による感染症の拡大の危険性が高まり、このような状況の中で、子供は誰よりもこの感染症にかかりやすいとされています。

バングラデシュのモンスーンは通常、3月から6月、そして9月から10月に発生します。昨年、この地域のモンスーンにより、一時的な避難所の4分の1が破壊されました。ユニセフの報告は、ロヒンギャ族の難民は、最低限の基本的な人権も奪われており、命の危険にさらされ、またその健康も脅かされているとしています。

 

 

ミャンマーの少数派であるイスラム教徒はロヒンギャ族といわれており、数十年間にわたり、人種差別に苦しんできました。ミャンマーの体制や過激派仏教徒は、ロヒンギャ族を正式なミャンマー人とは認めず、最悪の形での人種差別的な対応を行っています。ミャンマーのイスラム教徒は、市民としての権利をまったく持っていません。

ミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問兼外相は、この国の代表的な政治家であり、長年にわたりミャンマーの軍政に抵抗してきたことから、西側諸国によりノーベル平和賞を受賞しました。残念ながら、この人物も、ロヒンギャ族のイスラム教徒に対する民族浄化政策を隠蔽しています。

ミャンマーの過激派仏教徒がイスラム教徒に対して行ってきた犯罪は、軍政への抵抗の中で、スーチー外相が受けてきた苦しみとは比較ができません。スーチー氏は、その苦しみのために、ノーベル平和賞を受賞しました。

現在も、多くのミャンマーのイスラム教徒が、自由と栄誉ある生活のために、スーチー氏の100倍の苦しみに耐えていますが、西側では、そして情報世界では誰も、たとえ苦しみを受けたロヒンギャ族の画像を見ていても、この悲劇に抗議する人はいません。あたかもミャンマーのイスラム教徒は人間ではなく、注目する価値がないように見受けられます。

イギリスのジョンソン外相は、最近、ミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問兼外相と会談した西側の政府要人の一人です。

ジョンソン外相はロヒンギャ族の悲惨な状況を目の当たりにし、スーチー氏と会談した後、「ラカイン州のイスラム教徒居住区の視察で、この地域が完全に消滅しているのを見たが、スーチー氏がロヒンギャ族の危機を理解しているかについては、疑わしい」と語りました。

ジョンソン外相は、「これまで同じ人間にこのようなことが行われたことがあっただろうか、私は自分の生涯で、決してこのようなものを見たことはなかった」と語りました。

 

ロヒンギャ族の状況がジョンソン外相を悲しませる

 

西側の政府関係者のミャンマー訪問と、ロヒンギャ族のイスラム教徒の状況に関する遺憾表明は、政治的、プロパガンダ的な観点から盛んに行われてきました。つまり、この訪問の後、ミャンマー政府に圧力を行使し、民族浄化政策を止めさせ、ロヒンギャ族の近隣諸国への避難を防ぐための努力は行われていないのです。

イギリスのジョンソン外相は、ロヒンギャ族のイスラム教徒の状況を無視していると、イギリス庶民院の国際開発委員会を批判した後、ミャンマーを訪問しました。ジョンソン外相がミャンマーのイスラム教徒の大変悲惨な状況について語っているのをよそに、イギリスはミャンマー政府に対して、民族浄化を終わらせるための批判や圧力行使をまったく行っていません。一方で、イギリス政府は、ヨーロッパレベル、国連レベルでミャンマー政府に圧力を行使するための、さまざまな手段を有しています。

実際、ミャンマーはイギリスやそのほかの西側政府の防衛政策や利益の優先事項にはなっていないことから、これらの政府は、抑圧されたロヒンギャ族のイスラム教徒の苦しみを緩和する行動を取っていないのです。