3月 12, 2018 21:18 Asia/Tokyo
  • 移民女性
    移民女性

今夜は、西側諸国における移民の女性の位置づけについて考えていくことにいたしましょう。

女性も、男性と同様に政治的な問題のほか、戦争や貧困、飢餓の回避を理由とし、そして時には西側の世界が描く自由の獲得という希望を抱いて他国に移住しています。しかし、目的地に到着すると、多くの問題に直面することになります。

その例として、正式な統計によれば、EU諸国で不法就労している移民の女性の割合は、これらの国に在住する移民の女性全体の44%、就労していない女性は19%とされています。しかも、これらの女性の多くは、職場において低い賃金や厳しい条件に苦しんでおり、人種差別的な暴力や各種の政策により脅かされています。

移民することとは、就労や生活を目的に人々がある場所から別の場所へと移ることを意味します。一部の人々はたいてい、貧困や病気の蔓延、政治的な問題、食糧不足、自然災害、戦争、失業、身の安全の不足といった状況を回避するために、ほかの土地に移って行きます。また、ほかにも移民先の国が、衛生や教育の面でより好ましい状態にある場合、さらにはよりよい収入や住居、政治的な自由を求めて移民する人もいます。

国連は、全世界において最近、移民の数が過去最高に達したことを明らかにしています。最新の調査によれば、世界の総人口のおよそ3%に当たる3億3200万人が、出身国に住んでおらず、とりわけこれらの移民の多くを女性が占めています。

 

移民女性

 

移民する人々の夢とは、平穏と安全の保障された普通の生活です。人権に関する国際的な条約によれば、各国の政府は自国民のために福祉を提供する義務がありますが、多くの場合においてその夢は実現されていません。特に、女性は性の対象として見られる事から、男性よりも被害を受けやすいのが現実です。

これらの女性たちの一部は、配偶者がおらず、さらには小さな子供を抱えて、夢を求めて西側諸国へ渡航していますが、彼女たちはそこで、暗い不透明な未来に直面します。女性は、新しい社会において困難な生活と戦わなければならないほか、子供に対する責務も負っています。こうした女性たちの多くは、西洋社会において十分な安全や支援を得られていないのです。

見知らぬ国での移民女性たちの境遇は、実に痛ましいものです。母国以外の国において、移民の女性たちは肌の色や宗教、言語の違い、警察への恐れ、移民先の国での女性の権利を守る法律をよく知らないことから、特に性的な暴行や人種的な侮辱行為を受けることが多くなっています。それではここで、イランの女性問題の専門家であるアーホンダーン博士の話をお聞きください。

イランの女性問題の専門家、アーホンダーン博士の見解:

「特にヨーロッパ諸国をはじめとした外国に移住する女性たちは、移住先の国が重要だとしている。だが、家庭の重要な基盤である女性の移住は、現代における重要な問題のひとつだ。まず、指摘すべきことは、ヨーロッパ諸国が経済不況に巻き込まれていることだが、それより重要な点は、これらの国で出生率が伸び悩んでいることである。このため、移民の女性がこれらの国に入ってくることは、極めて大きな重要性を持っている」

「西側諸国における性的暴力関連のニュースを見てみると、何よりもまずその被害者の多くが移民たちであることがわかる。特に、これらの移民たちがイスラム教徒であればなおさらのことである。ノルウェー人の考え方によれば、移民たちは男性優位社会の国からやってくるため、女性が楽な服装を身につけられ、アルコールも摂取できるヨーロッパの自由に触れるべきだとされている。このため、ノルウェー人は女性に抑制のない西洋の文化を押し付けようとしている」

多くの場合において、合法的に移民するには複雑なプロセスを経なければならないことから、中には不法移民を試みる人がいます。しかし、こうした行動は大抵、特に女性をはじめとする移民が人身売買などの罠に陥ることにもなります。

ILO・世界労働機関の報告によれば、移民先での女性の人身売買などにより、毎年320億ドルもの巨額の利益が生み出されており、そのうちの半分が西側諸国でのものだということです。

 

西側の移民女性に対する性的暴行

 

西側諸国では、毎年50万人もの女性が性的な存在として秘密裏に売買されており、そのうちの60%は南アジアや東ヨーロッパの出身者です。さらに、アメリカに密売された女性も悲惨な状態に置かれており、彼女たちは性的なビジネスの犠牲者として、その多くが男性による暴力を受けています。

アメリカ政府は、人権擁護を協調しながら毎年、旧ソ連圏から10万人、東ヨーロッパから7万5000人、アフリカから5万人もの女性がアメリカに人身売買されている事実を認めています。また、中南米諸国からアメリカに人身売買される人々の数も、年間10万人に達します。アメリカに人身売買される女性の多くは、最終的にはエイズなどの感染症や麻薬中毒により死亡しています。

ドイツ連邦移民難民局の統計によれば、ドイツでは難民の女性の数が増加している一方で、これらの人々にとって、安全な居住場所や就学の機会、そして社会活動への参加の機会を得ることは極めて困難なものとなっています。

戦時下の女性に対する暴力に関する活動に取り組むNGOメディカ・モンディアルの人権政策顧問は、ドイチェ・ヴェレのインタビューで、次のように述べています。

「これらの女性の多くは、常に滞在先のキャンプ内のスタッフやその他の難民による性的な暴力にさらされている。さらに、このようなキャンプなどの滞在場所は、警察の目の届かない無法地帯に等しい」

このような状況では、女性たちは性的暴行の被害届を出せない状態にあります。それは、被害届を出す事で、難民認定の申請手続きに悪影響が及ぶ事を恐れているからです。女性の人権擁護に関するある団体によれば、ドイツ国内のあるキャンプでは、難民の女性の一部が、10ユーロで買われていると言われています。

 

難民キャンプにおける女性の人身売買

 

最近、西側諸国において人種差別主義者は、移民たちに対し暴力を行使したり、侮辱行為を行っています。この問題は、特にイスラム教徒の移民の場合において、さらに深刻なものとなっています。

一般的に、イスラム教徒の移民の中でも、宗教的な信条面での違いにより、特に女性は、常に周囲からの圧力を受けています。特に、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以来、イスラム教徒に対する西側のメディアの攻撃は、それ以前よりもさらに複雑化しています。

 

2009年には、ドイツ・ドレスデン裁判所で、エジプト人のイスラム教徒の女性であるマルワ・シェルビニさんが、ドイツ人の人種差別主義者により刃物で殺害されるという、痛ましい事件が発生しました。この事件も、イスラム教徒に対する人種差別的な捉え方が招いた結果だといえます。シェルビニさんは、2009年に、ドイツ人男性アレックス・ビーンズ被告により侮辱され、イスラム教徒の女性の被り物であるヘジャーブを理由にテロリスト扱いされたことから、訴訟を起こしました。この裁判の控訴審で、ビーンズ被告は、当時妊娠3ヶ月だったシェルビニさんに刃物で襲い掛かり殺害し、彼女の夫やその他の男性にも怪我を負わせています。この事件の後、ドイツの週刊誌フォークスは、ビーンズ被告が裁判所に出廷する前に、シェルビニさんの殺害を決意していたことを明らかにしています。

 

マルワ・シェルビニさんと彼女の主人と息子

 

専門家の見解では、西側諸国でこのような問題が発生する最も重要な原因の1つは、西側のメディアがイスラムに関してマイナスのイメージを発信していることにあり、その影響が過激派がイスラム教徒、特にイスラム的な装いであるヘジャーブをかぶった女性に対し、暴力的な行動を招いているのが現状です。このため、イスラム教徒の信仰心の基本的な柱であり、またイスラムの最も重要なシンボルであるヘジャーブにより、一部の西側諸国では、イスラム教徒の女性たちが数多くの問題や脅迫に直面しています。また、多くの西側諸国では、ヘジャーブの着用というイスラム教徒の女性にとっての当然の権利が、イスラム排斥や人種差別に基づく政策により、無視されているのが現状なのです。

次回もどうぞ、お楽しみに。