ウミガメの一種・タイマイ
今回は、ペルシャ湾とオマーン海に生息するウミガメの一種、タイマイについてご紹介することにいたしましょう。
イラン南部に横たわるペルシャ湾とオマーン海には、ウミガメがえさを食べ、交尾し産卵する主要な生息地が50箇所以上存在します。これまでの調査の結果から、これらの海域には4種類のウミガメが生息していることが分かっていますが、その中でもイランの海域に最も多く生息し、産卵するのはタイマイとされています。
残念ながら今日、ウミガメそのものや卵の乱獲、海洋汚染、そしてそれに伴う海域や沿岸の生息場所の破壊などにより、タイマイを初めとするこの海域のウミガメに大きな被害が及んでいます。このため、特にタイマイは絶滅が危惧される生物に指定されています。
タイマイが、さんご礁を初めとする海洋の健全なエコシステムの維持に大きな役割を果たしていることから、この種のウミガメの絶滅の危険は、IUCN世界自然保護連合を含めた、絶滅の恐れのある動植物の保護に関する国際機関に注目されています。
タイマイは、甲羅の長さが1メートル、平均体重はおよそ80キロにも及びます。また、さんご礁にあるカイメンを主なえさとすることから、口の先は短いながらも尖っており、タイマイのトレードマークにもなっています。
タイマイの生息地は、主に水深の浅い沿岸海域、特にえさの豊富なさんご礁の発達した海域に生息しています。タイマイは爬虫類の一種であり、海中での生活に慣れてはいますが、陸上にも上がってきます。特に、呼吸をする際には必ず陸に上がる必要があります。
タイマイには、ボートのオールのような前足と後ろ足が2本すつあり、広い海洋をすばやく泳ぎ回るのに都合よくできています。また、前足は手の役割も果たしています。
タイマイは、海中のサンゴに擬態できるよう、その琥珀色の体には白や黒、茶色の斑紋があり、その他の色の筋が何本も見られます。このように、外見が非常に魅力的でもあ(り、しかも美しい甲羅がべっ甲の材料にな)ることから、世界におけるタイマイの乱獲が問題になっています。
タイマイのオスとメスを見分ける最も重要なポイントは、その体の色です。成熟したオスは、メスよりも色が濃く、より獰猛な顔つきをしています。海がめの多くは、甲羅は脊椎や肋骨と一体の骨甲板、そして鱗からなる角質甲板の2つの甲板で構成されています。(ウィキペディアより)
タイマイは、30歳ほどで成熟し、メスは産卵のため、常に自分の生まれた生息地に戻る可能性が非常に高いとされています。メスは、冬の終わりから夏の半ばにかけて産卵のために砂浜に戻ってきます。
ペルシャ湾とオマーン海の沿岸地域では、カメの産卵の時期の夜間の気温が25度から28度にも及び、産卵は夜を徹して行われます。砂浜は、ウミガメの産卵にとって好都合な条件を有していますが、特に最近ではべっ甲などの獲得を目的とする密猟者の存在や、海岸における開発工事の実施などから、ウミガメの産卵の多くは無人島で行われています。
タイマイは、2,3年に一度の割合で海岸の浅瀬にて交尾し、上陸して産卵します。(ナショナル・ジオグラフィックより)タイマイの卵の重さは26グラムから31グラムで、直径がおよそ4センチ半、体積は25立方センチメートルから30立方センチメートルです。ウミガメの卵は、産卵後60日から70日ほどで孵化します。
イランでは、ウミガメの肉を食用としたり、その商取引は決して習慣化されていませんが、ウミガメの卵は食用や医薬品として価値があると考えられているため、多くの人々の間で食用にされ、また販売されています。場合によっては、産卵中のウミガメの巣穴の周辺で、海がめの卵の採取を目的に、人々が集団で産卵が終わるところを狙って待ち伏せしている光景も見られます。
さらに、環境汚染や様々な病気、沿岸地域での開発工事の増加、乱獲、漁獲用の網に罹ってしまうことも、ウミガメの存続を脅かしています。このため、イラン環境保護庁は近年、この稀少動物を保護するための大規模な措置を開始しました。これに関しては、新しい学問の活用、地域社会の可能性の活用という2つの方策が注目されています。