4月 30, 2019 04:30 Asia/Tokyo
  • ペルシャ湾に生息するサメ
    ペルシャ湾に生息するサメ

今回はまず、ペルシャ湾に生息するサメをご紹介してまいりましょう。

今回からは、視点をイラン南部に移し、ペルシャ湾とオマーン海にスポットを当てていきたいと思います。

イラン南部には、ペルシャ湾が横たわっており、この海域は食用魚やそれ以外の魚を初め、サンゴや貝類、カメ、イルカ、サメといった海生生物の最大の生息場所の1つとなっています。過去数十年間において、生息環境の汚染や乱獲を初めとする色々な原因により、ペルシャ湾に生息する様々な生物が絶滅の危険にさらされていますが、この海域に生息するサメもそうした生物の1つです。

ペルシャ湾

 

サメは、軟骨魚類の1種で、体の形は水の抵抗を受けにくい流線型となっています。研究者によれば、サメは世界で最も古い水生生物の1つであり、’その起源はおよそ4億年前にさかのぼるとされ、過去1億年間でそれほど進化していないとされています。サメの大きさは、種類によって大きく異なり、一番小さいもので体長が20センチ、最も大きいもので14メートルほどとされています。

 

サメは口の先が尖っており、中にはホオジロザメやイタチザメなどのように鋭く尖った歯を持つものもいます。また、大多数のサメには背びれが2つあり、尾びれに近い背びれよりも、頭に近い背びれの方が大きくなっています。また、目は小さく、また目を保護するためのまぶたに相当する瞬幕(しゅんまく)というものがあります。さらに、サメの生殖形態は主に卵生と胎生、卵胎生に分かれ、卵胎生や胎生の場合には、卵が母親の子宮内で孵化し、仔魚として母体内で半年から2年ほど育てられてから生まれてきます。

ペルシャ湾に生息するサメ

 

サメは多くの場合、水深が800メートルほどの海域に見られ、各種の魚や軟体動物、イカ、エビなどを捕食します。イランや世界の研究者が、2011年から2015年にかけてイラン南部の魚の生息域について調査した結果、ペルシャ湾の水生生物全体のおよそ10%が軟骨魚であることが判明しています。また、ペルシャ湾には59種類のサメが生息することが分かっており、そのうちメジロザメやジンベエザメ、シュモクザメ、トラフザメをはじめとそする特に7種類が良く知られています。

獰猛なメジロザメ

 

それではまず、鋭い歯を持ち、獰猛なメジロザメからご紹介することにいたしましょう。メジロザメは体長がおよそ1メートルあり、ペルシャ湾に生息するサメの中で最も危険な部類とされています。また、このサメはペルシャ湾のほか、同国南部のカールーン川にも生息し、イラン国内の水域に生息する唯一のサメとなっています。

ジンベエザメ

 

続いてご紹介するのは、サメを初めとする魚の中で最も大きいとされるジンベエザメです。このサメは、大きいものでは体長が14メートル近くに達するものがありますが、性質はおとなしく、水中プランクトンをエサとしています。さらに、周囲を航行する船舶のエンジンの騒音などにも全く無関心であることから、耳の聞こえないサメとも言われています。

シュモクザメ

 

ペルシャ湾に生息するサメの中でも、獰猛で非常に危険なサメにシュモクザメがいます。この種のサメは群れを成して行動することが多くなっています。このサメの特徴は、頭部の左右がT字型に突き出た先端に目と鼻孔があることです。その形状が、鐘や鉦(しょう)を打ち鳴らす丁字形の撞木(しゅもく)のような頭の形をしていることから「撞木鮫」の名がつけられました。このサメは、目が両側に突き出ていることから、周りの様子を察知する能力に優れていると考えられています。

 

サメは、価値ある水産物の1つとされ、豊富なビタミンが含まれるその肉や油、ヒレ、そしてサメ皮や鋭い歯を利用するために乱獲されました。一方で、サメは獰猛で海のギャングとも言われ、また人間を襲うといった偏ったイメージにより、常に人間による攻撃の的とされてきました。

サメの乱獲

 

この数十年間、ペルシャ湾のサメの存続を脅かしてきた主な原因には、乱獲に加えてペルシャ湾の汚染が指摘できます。世界の原油の埋蔵源の60%がペルシャ湾に集中し、石油採掘プラットフォームや製油所などの施設が存在していることから、この海域には原油や化学物質、産業廃棄物が流出しています。さらに、石油を運搬するタンカーなどが多数を占める、年間1万隻以上の船舶がペルシャ湾とオマーン海を航行していることも、海洋汚染に追い討ちをかけています。これらの船舶が廃棄物や毒物を排出することから、ペルシャ湾には常に各種の汚染物質が流入し、その結果この海域の汚染の度合いは国際平均を上回り、ひいてはサメをはじめとするこの海域の水生生物の存続が危険に陥っているのです。

 

 

IUCN国際自然保護連合の報告からも、ペルシャ湾のサメが絶滅の危険にさらされていることが明らかになっています。サメは、海域の食物連鎖を形成する最も重要な生物であり、高次捕食者であるサメの存在により、食物連鎖のピラミッドの中間や下部を形成し、サメのえさとなる生物の個体数が調節されているのです。

 

サメの個体数が減少し、小動物の個体数が増加することで、ペルシャ湾の生態系のバランスが崩れることは言うまでもありません。このため、全ての地域諸国がサメを保護する計画を実行し、海洋環境の保護と汚染の緩和に向けて協力することにより、この稀少動物の存続を助ける必要があるのです。

 

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