ムナグロシャコ
今回は、キジ科の野鳥の1つであるムナグロシャコをご紹介することにいたしましょう。
ムナグロシャコは、キジ科に属する鳥類で、黒地に白い斑点のある翼と短い尻尾があります。体の大きさはシャコに近く、行動形態もシャコに類似しています。
ムナグロシャコのオスは、頭と胸、腹部や体の脇が黒地に白い斑点があり、頭部と胸部の間に茶色の首輪のような部分があります。背中と翼の部分は、黒地に白や茶色のラインが沢山入ったものとなっています。尻尾は、黒地を基調とし、白く細いラインが沢山見られ、尻尾の下の羽毛は茶色です。ムナグロシャコの体の長さは平均して31センチほどあり、平均的な体重は450グラムとなっています。
ムグロシャコは、イラン自然環境保護機構により保護され、捕獲や密猟が禁じられているにもかかわらず、残念ながら現在は絶滅の危機に瀕しており、IUCN国際自然保護連合が定めるレッドリストにも掲載されています。
ムナグロシャコは大抵、表目に出てくることなく隠れて生活します。彼らは、近くで水が得られ、樹木が少ない草むら、或いは適度に植物に覆われている場所を、生活場所に選び、穀物やブドウなどの果物、昆虫、イモムシなどをエサとしています。
ムナグロシャコは、地上に住む鳥類の1つとされています。それは、彼らは危険に襲われるまでは空中に飛び立つことがないからです。また、つがいで行動することが多く、また体の色やさえずることなどから、メスよりはオスのほうが目立っています。オスのさえずりは普通、早朝や日没時に良く聞かれます。オスはまた、丘や岩石に止まり、美しく高らかにさえずります。
ムナグロシャコは大抵、潅木の間や小麦畑で産卵します。初めての産卵では、2個から5個の卵を産み、その後は産卵シーズンがめぐってくるたびに、産卵する卵の数が増え、およそ20個にも達します。興味深いことに、ムナグロシャコは何物かに盗まれるなどして卵の数が減ると、残りの卵を温めることはなく、そこを離れて別の場所に巣を作り、産卵するという習性があります。
イランにおけるムナグロシャコの生息地は、南西部フーゼスターン州といった熱帯や乾燥地帯となっています。ですが、様々な植物や樹木、潅木が茂り、草原が広がっていることから、イラン北東部にあるミヤーンカーレ野生動物保護区もムナグロシャコにとって適した生息場所とされています。このため、ムナグロシャコはこの野生動物保護区でも生殖します。
ムナグロシャコは昔は、特にイラン南部に数多く生息し、その生息場所も広範囲に広がっていました。しかし、現在は残念ながら食用目的で乱獲され、多くの地域のその個体数が激減し、絶滅が危惧されています。この野鳥は、通常人間の目の届かない場所で生活していますが、食物の消化を促進するために砂粒を必要とするため、農業用地の間の道路に出てきた際などに、ハンターに容易に捕獲されてしまうケースが多くなっています。
ムナグロシャコが絶滅の危険にさられているもう1つの理由として、農作業者によりこの野鳥の親鳥が殺されたり、それによりひな鳥が育たなくなること、巣や産卵場所の破壊などが指摘されています。また、ムナグロシャコの生息に都合の良い潅木の生えている場所や荒地が、農業用地に転換されたことで、この野鳥が産卵のために小麦畑や大麦畑に逃げざるを得なくなり、生殖時期を迎えた同時に麦の収穫により、住処の多くがコンバインの車輪により壊され、卵も潰され、ひな鳥が親鳥を失うというケースもあります。ムナグロシャコは、住処が脅かされると、仮に巣が壊されなくとも、2度とそこに戻ることはありません。
ムナグロシャコは、重要な稀少動物であることから、イランでは野鳥保護区に放鳥され、捕獲が禁止されているとともに、違反者には厳罰が科されます。環境保護高等評議会の取り決めにより、ムナグロシャコを捕獲、密猟したハンターに対しては、罰金が科されると共に、一定期間ハンターとしての免許を剥奪されることになっています。しかし、残念ながら今なお、危険を冒しながらこの美しい野鳥を密猟するハンターは後を絶ちません。