4月 22, 2018 20:32 Asia/Tokyo
  • 持続可能な開発と環境の保護
    持続可能な開発と環境の保護

これまでの番組の中で、自然環境を破壊する最も重要な原因の一部についてお話しました。今日、自然環境を脅かしている危険な現状から、多くの政治家が環境保護のアプローチの1つである持続可能な開発に傾倒するようになっています。

持続可能な開発という表現は、1970年代の初めに使用されました。この言葉が意味するのは、将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発とされています。

 

この定義では、前の世代に委ねられていた天然の資源を、次の世代の人々がそのまま引き継ぐ、という権利が認められるとともに、その適度の利用が許されています。このため、持続可能な開発は、次の世代が生きていく上で必要な、再生不可能の限られた資源を長持ちさせる要素といえます。また、持続可能な開発は、人類社会にとって好ましい未来を打ち立てることのできるものです。

 

このため、持続可能な開発は、人間と自然、そして人間同士の関係を理解する上で重要な変化だといえます。それは、環境、社会、経済といった問題を切り離していた、過去200年の考え方とは異なっています。この200年、環境は主に外的な要因として、人間が利用・搾取するためだけのものと考えられてきました。資本主義の発展や産業革命と関係のあるこうした見方においては、人間はあらゆる形で自然を支配することができるとされていたのです。近代科学の基礎を打ち立てたフランシス・ベーコンも、世界が人類のために造られているのであって、人類が世界のために作られたのではない、と考えていました。

 

産業や科学の発展が、人類の知識のレベルや生活水準の向上に決定的な役割を果たしたことは、紛れもない事実です。住宅や食料、交通手段、教育、医療といったニーズの確保は全て、学問や産業の発展に依拠しています。しかし現在、自然環境が考慮されていない産業発展のモデルは、長続きしないモデルであることが証明されています。このため、現代の世界では、発展に関する計画を立てる中で、産業の発展と自然環境の保護が、2つの基本的な要素とされています。

 

持続可能な開発は、存続しない経済、社会、構造上の発展モデルに対する解決策を提示し、天然資源の枯渇や生態系の破壊、公害や気候の変動、人口爆発、不公正、そして現在と未来における人々の生活水準の質の低下、といった問題の発生を防ぐためのものです。このことから、持続とは長期間に渡って現在の可能性や好ましい状態が減少しない状態を指すともに、半永久的にその機能が継続するためのエコシステムの可能性に関連しています。しかもそれは、天然資源の枯渇や資源の過剰な利用につながってはなりません。

 

この問題の重要性から、国連は1972年に自然環境に関する世界規模での懸念に回答するため、初めて、スウェーデンのストックホルムで自然環境の脅威について討論するための会議を開催しました。この会議では、地球環境の保護に向けた様々な団体の活動などの問題を解決するため、世界規模での公害に関する各国の責務や、開発におけるそれらの国の権利と国益、独立といった原則が提起されました。

自然環境について考える

 

1992年にはブラジル・リオデジャネイロで、環境と開発に関する国連会議、いわゆる地球サミットが開催され、さらには2000年の国連総会において、国連ミレニアム宣言が採択されました。

 

1992年の地球サミットで、189カ国の首脳により批准された理念の1つが、自然環境の保護を保障することでした。この理念は、ミレニアム開発目標の全てを達成するために欠かせないものです。このため、各国の首脳は自然環境を保護するために全力を尽くすこと、そして自国の政策に持続可能な開発の原則を盛り込み、天然資源の枯渇を阻止することを取り決めました。この中では、天然資源の浪費の禁止、世界における漁獲量の削減、さらには各国の発展に影響する最も重要な要因である温室効果ガス、気候の変動、土壌の侵食への注目といった目標をめぐり、合意が成立しています。また、清潔な飲料水を得られない人々の割合を減らすことも取り決められました。他にも、何億という貧困者の数を半分に減らし、彼らの生活水準の改善をはかることが目標とされています。

自然環境について考える

 

2000年に多くの国が持続可能な開発の原則を取り決めたにもかかわらず、それ以来17年が経過した現在もなお、この目標、即ち天然資源の枯渇や自然環境の破壊という流れをせき止めることはできていません。

 

その例として、清潔な飲料水を手に入れられる人々の数そのものは増加したものの、依然として発展途上国の半分は、最低限の保健衛生設備が不足しています。多くの人が都市部に移住したことにより、郡部における土壌への負担は減ったものの、人口が密集し治安のよくない大都市の周辺地域に暮らす人々の数は増加しています。

 

現在、世界全体でおよそ10億人が大都市の周辺地域に暮らしています。それは、住宅問題の改善や健全な雇用機会の創出が、大都市の人口増加のスピードに追いつかないからです。これまでに発表されたいくつかの報告によれば、動植物の絶滅も異例の速さで進んでいます。気候は世界規模で変動しており、海水面の上昇や干ばつ、洪水などの危険が、常に人々の生活を脅かしています。また、海産物も過剰に利用されています。

 

さらにここ数年、環境の最大の問題である気候の変動が、破壊的な影響を及ぼしています。降雨量の減少により各地で干ばつが起こり、水不足を引き起こしています。水不足が深刻化していることから、関係機関は水不足による脅威を世界で3番目に大きいリスクであるとしています。

 

専門家の間では、今後4年のうちに、水不足をはじめ、食料やエネルギー確保に向けた競争により、各国の首脳が深刻な問題に直面し、多くの国の政府が気候の変動や食料源が限られることによる感染症などの問題を抱えることになるだろうと見られています。環境問題の専門家も、世界の降雨量の多い地域の半分以上が消滅し、世界規模での気候変動により、気候のモデルが変化し、その結果、深刻な水不足と危機を引き起こしてきたと発表しています。

 

自然環境の憂うべき惨状は、多くが貧困国に関するものです。貧困国では、人々の日常生活が彼らの身の周りにある天然資源に直接、或いは間接的に、しかもこれまでにない規模で国際協力に関係しています。例えば、特に発展途上国における自然環境問題や環境破壊の原因の多くは、貧困からきています。この悪循環は結果的に経済、社会的な崩壊、ひいては自然環境の破壊につながりかねません。

 

環境保護に取り組む上で必要な資金の不足、技術的な知識レベルや産業水準の低さ、適切な情報システムの不足、不十分な環境規定、そして一般市民の間で環境問題の重要性が認識されていないことなどから、多くの場合、不適切な生産プロセスが拡大しています。こうしたプロセスは、機能性の低いエネルギーや原材料の消費、さらに多くの場合に公害を引き起こす原因と見なされています。

 

発展途上国の前に立ちはだかるもう1つの問題は、先進国への依存です。先進国が消費する原料やエネルギーの多くは、発展途上国の資源や備蓄からまかなわれています。しかし、その一方で発展途上国における環境保護のプロセスには、支援がなされないケースが殆どです。

 

第3世界の専門家の見解では、世界的な環境問題や公害の主な原因は、豊かな国々の一方的な経済発展だと考えられています。このため、これらの国は、環境のクリーン化の費用をまかなうべきです。1972年にストックホルムで開催された国連人間環境会議のモーリス・ストロング事務局長も、そのことを認めており、次のように述べています。「南の国、特に発展を遂げていない国々は、全く利益を得ずに経済のグローバル化の犠牲になっている」

 

こうした中、健全な自然環境と発展を同時に享受する権利は、人間の尊厳のひとつと見なされています。それを同時に実現するには、持続可能な開発が不可欠です。そしてその権利の実現には、特に先進国が第3世界の国々にこれまで以上に注目する必要があるのです。

 

 

 

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