4月 23, 2018 19:10 Asia/Tokyo
  • 非嫡出子の問題
    非嫡出子の問題

今回は、西洋諸国のフェミニズムによる女性の解放の結果としての、非嫡出子の問題について考えることにいたしましょう。

女性の解放や独立といった枠組みで提唱される、フェミニズムの重要な原則の1つは、家族という制約や夫婦間の責務から逃れることです。このような考え方は、西側諸国の女性たちにとって好ましくない結果をもたらしました。その1つは、西洋社会における性的な革命と、正式な結婚を経ていない夫婦の間に生まれる非嫡出子の増加です。

 

あるアメリカ人の作家は、過去のアメリカ社会について次のように述べています。

「1957年には、アメリカ人の90%は結婚しようとしない人々は病気、或いは精神病であるか、だらしのない人であると考えられていた。20代半ばの女性の半分以上が結婚しており、人々は25歳までに結婚しなかった女性の状況を憂うべきものだと見なしていた。1962年、アメリカではケネディ大統領が、人類を月に送り出すと宣言していたころ、アメリカ人の若い女性の多くは、21歳で結婚し、仕事を辞めて子どもを4人持ちたいと望んでいた。だが、それからまもなく起こった傾向は、アメリカ人女性の考え方や生活の方向性を変えた」

 

現代の西側の社会学者の解釈によれば、フェミニズム運動が進む一方で、ピルなどの避妊薬が大量に生産されるようになったことから、アメリカ人女性は結婚しないまま妊娠することなどの、性行為の結果を考えなくなり、倫理に反する性行為をするようになります。現代の研究者は、このような動向を性の革命と呼んでいますが、この革命は女性たちに、性感染症の蔓延といった恐るべき結果をもたらしたのです。

これまでに開示されている情報によれば、性の解放が広まる前の時代に当たる1950年代には、アメリカでは2種類の性感染症のみが報告されていました。しかし、現在のアメリカでは24種類以上の性感染症が存在します。この統計によれば、アメリカでは毎年1900万件もの性感染症への感染例が報告されており、アメリカの衛生システムは、その治療のためにおよそ170億ドルもの予算の負担を強いられているとされています。

 

性の革命によるもう1つの悪い結果は、非嫡出子の出生と中絶の増加です。アメリカで中絶される胎児の数は、年間100万人にも上り、これは実に240年間のアメリカの歴史に発生した全ての戦争による犠牲者の数に相当します。興味深いことに、アメリカにおける中絶の86%は、特にこれといった理由もなく、楽をしたいという理由で行われていることです。

 このような状況は、他の西側諸国にも見られ、ワールドファミリーマップ2014という報告書においても証明されています。この報告書は、非嫡出子がこれまでにないほど増加している理由として、結婚率の低下を挙げており、非嫡出子が最も多く生まれている地域は、中南米と西ヨーロッパだとしています。この報告によりますと、ヨーロッパで非嫡出子の出生率が最も高い国は、フランスが56%、スウェーデンが55%となっており、3番目はイギリスとされています。また、中南米ではメキシコが55%、そして世界でこの割合が最も高いのは、コロンビアで、84%となっています。しかし、中東諸国は今なお家族の基盤が維持されており、非嫡出子の出生率はきわめて低く、5%以下とされています。

西側諸国における性の革命は、残念ながら低年齢の少女たちにも弊害をもたらしています。例えば、アメリカの雑誌リーダーズ・ダイジェストのある報告によれば、アメリカでは15歳から19歳の少女たち35万人が、結婚しないままの性的関係を持ったことで妊娠し、非嫡出子を出産しているということです。この数字は、過去数十年間で増加の一途をたどっています。こうした少女たちは、ボーイフレンドとの結婚、学業を修めること、理想的な生活の開始、適切な就職といった夢を見ながら、結婚しないまま性行為に走ります。しかし、生活の現実はすぐさま現れ、彼女たちと、その子どもたちはその後もずっと、健康的な普通の生活を奪われることになります。

 

家族計画の専門家であるアーホンダーン博士は、次のように述べています。

「西洋の社会学者や心理学者の見解では、西側諸国における同棲生活や結婚しないままの性的関係は、特に男女関係の解放を初めとするフェミニストの見解と直接的に結びついている。西側諸国では、非嫡出子として生まれた子どもにはつらい運命が待ち受けている。彼らは死ぬまで、中途半端な状態の子どもとしての屈辱がついてまわる」

「法的な婚姻によらない男女の子どもは、西洋の社会における数多くの危機や情勢不安、逸脱や退廃の原因となってきた。また、非嫡出子の出生の増加に加えて、性の解放がもたらしたもう1つの結果に、女性の命を脅かすことにもなる中絶が挙げられる。さらに、性感染症やその他の衛生面での脅威も、西洋社会の人々の健康に忍び寄っている。このことは事実上、西洋におけるフェミニズム思想の結果であり、それがもたらしたのは、西洋社会における、締りのない男女関係であった」

 

イギリスのBBCラジオ4に所属する専門家ローラ・リップマンは、次のように述べています。「法的な結婚外の男女関係の結果生まれた子どもは、人生において極めて深刻なストレスを抱えている」

西洋諸国では、非嫡出子として生まれた子供は、母親だけという片親のみの家庭で、或いは母親の親戚や孤児院に引き取られ、惨めな生活を強いられることになります。現在、アメリカを初めとする西側諸国の一部で見られる犯罪や悲劇の多くは、こうした問題による結果なのです。

今日、西洋諸国におけるフェミニズムの思想の多くにおいては、このような子供たちの母親は経験豊かで自立した女性と見なされ、そうした子供たちはより配慮を必要とする子供とされています。しかし、西側諸国の思想家は、懸念しながらこの問題を追っています。その1人にアメリカのカーター政権時代に大統領補佐官を務めたブレジンスキー氏が挙げられます。ブレジンスキー氏は、次のように述べています。

「西側諸国の世俗主義は、本来1つの文化的な思想であり、快楽主義や消費志向、つまり豊かで楽しく暮らしたいという考え方が根本的な概念を形成している。一方で、西側諸国の大部分に浸透しているこうした思想は、その内部において文化的な自滅の原因を育てている」

このような懸念から今日、政治家や社会学者の多くは、西洋諸国が性の革命の後に発生した一連の危機を克服するには、従来の家庭中心の生活様式に立ち返るしか方法はない、という結論に至っています。家庭は、常に社会の基盤であり、また、文化と文明、そして人類の歴史の発生源であり続けてきました。この組織が本来あるべき場所にあれば、家庭に関する大きな改革につながり、逆にこれを怠れば、人類は本来あるべき生活から遠のき、衰退することになるのです。