労働環境における女性への暴力
前回は、西側諸国の家庭や社会環境で、女性に対して行われる暴力についてお話しました。今回は、西側諸国の職場環境での女性に対する暴力についてお話することにいたしましょう。
西側の産業社会は揃って、男女の違いを無視し、表面的には建設作業や鉱山労働、軍隊といった職業における女性の雇用機会を均等にしています。しかしながら、これらは非常に過酷で厳しい職務であり、従来までは主に男性がこれらの職務に従事していました。
しかし、男女の本質的な違いを無視することは、逆に男性にとっては有利に、女性にとっては不利となりました。男性が本来、身体的により優れ、激しい気性を有する一方で、女性が身体面で弱く、また美しさを有することから、女性は労働環境において暴行や嫌がらせを受けることになりました。
アメリカの作家マリリン・フレンチは、『職場における女性との戦争』という著作において、アメリカの女性を取り巻く厳しい現実について、次のように述べています。
「男性は、どのような労働階級であれ、たとえ企業に勤めてはおらず、傍観者であったとしても、同僚の女性に対する性的暴行に加担している。アメリカの消防署に勤務する女性の証言によれば、彼女たちは生命に危険が及ぶほどの性的な暴行や嫌がらせを受けている」
マリリン・フレンチによれば、アメリカ・カリフォルニア州のある委員会は最近、建設現場で働く女性が非常に少ない理由を解明しようとしています。建設現場で働く女性とのインタビューからは、彼女たちの労働環境は常に戦争のようなものだということが判明しました。男性は女性へのわいせつ行為に手を出しているとされています。
世論調査からも、職場での男性による嫌がらせの実態が明らかになっています。1989年に、アメリカの新聞ニューヨーク・タイムズは、アメリカにおける「現代女性が直面する最重要課題」というテーマを世論調査にかけました。その結果、働く女性の80%から95%が、賃金を初めとする職業上の差別に不満を訴えていた事が判明しています。また、最新の世論調査では,70%が男性によるセクハラや暴行を訴えています。
ヨーロッパ諸国でも女性の多くが嫌がらせを受けています。ある調査によれば、スウェーデンは世界で最も男女平等が進んだ国とされ、議会の349の議席のうち、41%に当たる142議席を女性が占めているとされています。しかし、その一方でこの国でも女性に対する相当の性的暴行や嫌がらせが存在しています。
それ以前にも、フランスの作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールも、『第2の性』という著作において、フランスにおける女性への性的暴行について検討し、次のように述べています。「女性は、紡績工場や織物工場においてひどい扱いを受けている。雇用者は大抵の場合、男性よりも女性を雇いたがる。それは、彼女たちが男性よりも安い賃金でよりよく働くからである。」
こうした状況は、西側諸国における女性の労働の憂うべき現実を物語っています。最近発表されたある世論調査の結果によれば、働くフランス女性の5人に1人が、職場でセクハラを受けているとされています。
全世界において、女性に対する暴力は身体的、精神的、社会的にといった様々な形で、しかも家庭内においても彼女たちの安全を脅かしています。しかし、中でも西側諸国は、様々な分野で進歩発展を遂げたと主張しながら、女性の平穏を脅かし、彼女たちの権利を蹂躙し、また、合法的な女性の自由を侵害している最悪の国なのです。それではここで、職場における西側諸国の女性の問題ある実態について、イラン人の専門家であるアーホンダーン博士の話をお届けしましょう。
「職場における女性への暴力は、実にひどい状況にあり、女性の就労の増加に伴って増加している。こうした傾向は、被害者に身体的、身体的な悪影響を及ぼしている、職業を持つ女性に対する暴力はさらに、職場における労働の能率をも下げてしまうことになる。職場における性的暴行やセクハラは、西側諸国の女性の安全を脅かす深刻な要因である。ILO・国際労働機関の報告よれば、EU諸国の女性の40%から50%が、職場でセクハラや性的関係の強要、その他の形での性的暴力などの好ましくない経験を持っている。西側諸国の女性に対する暴力や嫌がらせは、これらの国で暴力が多発し、治安が悪化していることを示している。欧米諸国では、特に移民を初めとする女性労働者の多くが、性的暴行を初めとする様々な暴力を受けるケースが増加している。これらの女性の多くは、職や滞在ビザを失うなどの恐れから、加害者に対して訴訟したり、警察に通報したりできない」
西側諸国は今なお、女性を社会的な問題から完全に守りきれていません。公共の場所や私的な空間のいずれにおいても、女性に対する身体的、精神的、性的な嫌がらせが深刻化していることから、国連などの国際機関や人権擁護機関は、女性に対する暴力の側面や、それが女性の個人的、社会的な生活、健康に及ぼす悪影響に関する調査に乗り出しました。これについて、アーホンダーン博士は次のように述べています。
「西側の先進国の労働環境の中に、女性に対する暴力の問題が存在することについて、重要な点の1つは、就労の権利を初めとするあらゆる分野において、男女平等を提起し、それを定着させようとしても、実際には女性の人権を回復させることができなかったという点である。言うまでもなく、今日において、リベラルな世俗主義社会が抱える深刻な空白の1つは、倫理的な原則からかけ離れたことにある。国際社会が独自の方法で、倫理的な規範や原則から離れた男女平等に力を入れた場合、それがうまくいかなかったことによる結果の1つは、女性に対する各種の暴力や性的な嫌がらせ、ハラスメントの問題が表れたことだ」
イギリスの社会学者アンソニー・ギデンズの見解では、西側諸国の労働環境における、女性に対するセクハラは、ごく普通の事と見なされています。ギデンズによれば、性的な嫌がらせは、職を持つ女性の多くに直接影響を及ぼしているということです。彼は、労働環境における女性への各種のセクハラについて、次のように述べています。
「労働環境におけるセクハラは、性的な欲求を相手に押し付けるために、権限を利用することと定義される。このことは、非常に乱暴な形で行われる可能性がある。例えば、女性の職員に対し、自分の性的な要求に応じるか、それとも解雇されるのがよいかと迫るような言動である。各種のセクハラの多くは、より狡猾な形で行われている。例えば、自分の性的な要求を受け入れれば、給与が増えるが、それを受け入れなければ、昇進が出来なくなるなどのペナルティを科すといったものである」
こうした事態は、西側諸国の軍隊においても明白な形で存在しています。その例として、アメリカ軍では女性隊員の少なくとも3人に1人が性的暴行を受けているのが現実です。複数の統計からは、アメリカ軍に勤務する女性の90%が、湾岸戦争の期間中に性的暴行を受けていた事が判明しています。
イギリス軍でも、過去5年間で女性兵士に対するこういった問題が240件以上報告されています。もっとも、一部の人々の間では、こうした性的暴行の犠牲者はこの数字よりもはるかに多いものの、彼女たちはこの件に関してあえて口をつぐんでいる、と考えられています。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの広報担当は、あるインタビューでこの点について指摘し、次のように述べています。
「女性に対する暴力は大抵、人目に触れない形で行われ、現代社会に生きる女性の多くは、自分の身に起こっている出来事を恥じ、あえて口に出さずにいる。自分が受けた暴力について語ろうとする人々は非常に少ないのが現実である」
労働環境におけるセクハラは、ちょっとした嫌がらせに限られず、場合によっては殴打などの暴行や、最悪の場合は殺害にまで至ることもあります。例えば、アメリカの労働環境の事態は非常に深刻であり、女性職員の主な死亡原因は同僚による殺害とされています。
アメリカの労働安全衛生総合研究所の伝染病の専門家は、次のように述べています。「女性が職場で負傷が原因で死亡した場合、それは間違いなく殺害されたと考えるべきだ。職場で殺害される黒人女性の多くは、白人女性の2倍に上る。また、毎年殺害される黒人女性の数は、白人女性の4倍だが、一方で、軍隊内で白人女性が殺害される可能性はさらに高くなる」
このように、女性が外部の労働環境に進出し、男性とともに就労することが、フェミニストの見解によって、社会に広がりました。しかしそれは、女性を貶め侮辱し、男性からセクハラや性的な暴行を受けたり、殺害されるという結果をもたらしただけだったのです。