4月 24, 2018 19:41 Asia/Tokyo
  • 自然環境について考える
    自然環境について考える

これまで何回かにわたり、環境保護の助けとなりうる幾つかの要素についてお話しました。しかし、専門家の見解では、環境破壊の要因の1つは、人間社会における消費志向の拡大と見なされており、当然のことながらこうした消費モデルの修正こそが、自然環境を救う方法の1つにほかなりません。そこで、今回は環境保護につながる道の1つとされる、消費モデルの修正についてお話することにいたしましょう。

これまでの研究の結果からは、産業革命以前の多くの社会では、特に贅沢品の利用を初めとする不要不急の消費が非難されていました。しかし20世紀初頭からは、生産力の増大、市場開発や宣伝広告、分割払いや流行などに伴い、特に先進国をはじめとする全ての社会において、消費志向が強まっています。

こうして、20世紀以降はこれらの国においてはニーズを生み出すことが中心的な戦略となり、自らが大量に生産した商品を販売することが求められるようになりました。しかし、カナダの経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスの考えでは、消費が支配する時代は終わったと考えられています。それは、これ以前には経済学に照らして、自らの収入やニーズによりどのような製品をどれほど生産瀬うべきかを決定していたのは、生産者だったからです。しかし、大量生産の時代には、消費者のためにニーズを生み出したのは他の要素であり、消費者は宣伝の対象となる製品を無意識のうちに消費していたのです。

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こうしたプロセスが続く中、20世紀の終わりになると、世界は環境破壊や天然資源の枯渇、地球の温暖化や温室効果ガスの排出、オゾン層の破壊といった問題に直面しました。大都市のみならず、小規模な都市、さらには森林や海洋までもが攻撃の対象となり、そこにある自然環境は破壊の危機にさらされたのです。産業の発展は確かに、人類に大きく貢献しましたが、天然資源に甚大な被害を与え、その被害は人間のみならず動植物にまで及びました。

残念ながら、現代における消費志向は依然として続いており、その醜悪なイメージはなくなり、今や聞こえの良い言葉と化しています。現在、消費とはある人が消費する習癖や製品を指し、それはまたその人の人格や性質、さらには包括的なアイデンティティを示すものとなっています。

現代の生活様式を見てみると、人々を特徴づける要素は、その人の服装や趣味、所持している携帯電話やノートパソコンの機種、使っている化粧品など、一般的にはその人の使っている消費財だといえます。しかし、過去においては人間としての価値をはかる基準は、その人の言動や性癖、仕事振りや家族形態、信条などでした。アメリカの著名なアナリスト、ビクトル・レボーはこれについて次のように述べています。

「私たちの経済は、私たちが自分たちの生活様式に合わせて消費のスタイルを変化させ、商品の売買を習慣とし、消費に満足を求めさせようとする。私たちは、モノが消費され、消耗され、新しいものに取り替えられて、急速にがらくたが増加することを必要としている」

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現在入手できる資料からも、人類が現在、自然界の生産能力以上に天然資源などを採取しており、これにより自然界のバランスが崩れていることが分かっています。

これまでの報告によれば、地球上で採取される資源の量は、現在既に地球が持つ資源の再生産能力を30%上回っており、この状態が続けば、2030年にはこの数字が100%に上昇すると見られています。このことは、2030年には地球上に住む人々の消費をカバーするために、現存する地球と全く同じもう1つの地球が必要になることを意味します。

過去45年間で、地球上の資源の消費量は2倍に増えました。資源全体の消費に関する一連の制限が設けられてはいるものの、清潔な水などの資源の消費は、今や危機的な事態に至っています。

現在、世界の総人口の4分の3以上は、住民の消費量がエコシステムの可能性を上回り、その結果、エコシステムに自然界の生産能力をはるかに超えた圧力がかかっている国に生活しています。地球の資源の消費量を計測する最も重要な指標の1つに、エコロジカル・フットプリントがあります。この指標は、人間のニーズの確保や消費による廃棄物の浄化に必要な土地面積を表します。

これについて発表されているある報告によると、現在の消費の状況では世界で人間のニーズを満たすのに必要な土地面積は、1人あたり平均7.2ヘクタールとされています。こうした中、世界の現在の総人口に着目すると、1人当たりのニーズの確保に使える実際の土地面積は1、2ヘクタールしかありません。このように、現在、地球はこの点で30%の不足を抱えており、この不足分は地球の総人口1人当たりにつき6ヘクタールと見られています。もっとも、今後さらに人口が増えれば、この不足分がさらに増大することは言うまでもなく、世界に現存する天然資源や地球が持つ可能性と、人間のニーズの間の格差が広がることになります。

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これまでにお話したことから、世界の総人口が日々増加していることに注目すると、現在の危機を打開する唯一の方法は、消費モデルの修正とその合理化と思われます。このため、今日では消費モデルの修正と、それに対する注目が世界的な関心事となってきています。

これについて、適切な生産と消費のモデルの形成を目的とした、複数の国際的な合意書が締結されています。これらの合意書においては、生産と消費のモデルを常に変えていくこと、そして地球上の限られた資源の節度を越えた利用を防ぐことの必要性が強調されています。さらに、天然資源を消費する工場生産のプロセスをより合理化するための環境技術の開発が、自然環境に対する人為的な圧力の緩和に向けた最も適切な方法として強調されています。

さらに、これらの国際的な合意書においては、持続可能な天然資源の消費の問題も注目されています。持続可能な消費とは、人間の基本的なニーズを満たす上での製品やサービスの利用、そして、人間の生活の質の向上を意味します。この種の消費パターンにおいては、生活や製品・サービスの生産の過程における天然資源の利用や、余剰物質及び汚染物質の生産が最小限に抑えられ、同時に未来の世代のニーズが考慮されます。持続可能な消費は、ニーズの確保や生活の質の向上、資源の利用の合理化、再生可能なエネルギーの利用の増加、廃棄物の削減、世代間の社会的な平等といった事柄を含む、重層的で包括的なテーマとなっています。

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もっとも、消費モデルの修正は決して各国政府のみの責任ではなく、私たち1人1人がこの問題の解決に向けて一歩を踏み出す責務があります。専門家は、消費モデルの修正に向けたいくつかの事柄を提案しています。彼らはまた、樹木の伐採の自粛、酸素の増産や大気汚染の抑制に向けた支援のため、紙の使用を節約するよう勧告しています。

さらに、余計な電源を切ったり、自家用車の利用を控えるといったことがらも、化石燃料の消費を抑え、結果的に大気汚染の緩和につながります。また肉食中心から菜食中心の食生活に切り替えることも、環境汚染の緩和を促すと思われます、さらに、プラスチック製の袋や使い捨ての紙皿などを利用しないことも、動植物の存続の助けとなります。さらに、水力や風力、そして太陽エネルギーの利用も、大気汚染につながると見られています。節水に努め、水という神の恩恵の浪費を防ぐことも、消費のモデルを修正するうえで考慮されるべき事柄の1つです。

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このことについて考慮すべきもう1つの事柄として、生産と消費のプロセスにおいては自然界では再利用しきれない余剰な産物や廃棄物が生じることが挙げられます。このため、今日では環境保護計画において再利用のプロセスにも特別な注目が寄せられています。

再利用の必要性をもう少しはっきりさせるため、次にある実例をあげることにしましょう。1トンの紙を生産するためには、15本の良質な樹木を伐採する必要があります。ですが、使用済みの紙から再生紙を製造すれば、水の消費が90%節約され、エネルギー面では50%得をしたことになり、大気汚染の抑制に75%の効果があったことになります。このため、リサイクルのプロセスは、神の恩恵としての天然の資本が戻ってきたことになるのです。資源ごみを分別してそれらを自然のサイクルに戻すことは、環境保護に効果的な役割を果たしており、さらには各国の経済プロセスにもプラスの効果をもたらすことができるのです。