4月 24, 2018 20:16 Asia/Tokyo
  • 廃棄物からのエネルギーの生産
    廃棄物からのエネルギーの生産

前回は、自然環境を保護する手段の1つとしての廃棄物の再利用(リサイクル)についてお話しました。また、リサイクルの実施により、天然資源の多くが節約できるとともに、水や空気、土壌の汚染が大幅に緩和されることにも触れました。しかし、今日では環境保護計画におけるもう1つのテーマとして、世界各国では廃棄物からのエネルギーの生産が注目されています。今回は、この問題について考えることにいたしましょう。

前回お話したように、地球は今や廃棄物の集積場所となっています。廃棄物がリサイクルされれば、再利用できるようになりますが、そのまま埋められてしまうと、自然環境の汚染源となります。WHO・世界保健機関の調査によれば、余剰物質の収集や廃棄が注目されないことから、自然環境面での32の問題が発生しうるとされています。このため今日、世界の多くの国ではリサイクルが本格的に注目されています。

廃棄物の量を減らし、それらを再利用する最新の方法は、廃棄物のエネルギー化です。これは、熱処理や廃棄物発電といった形により、無価値な廃棄物をエネルギーに転換するプロセスを指します。

もっとも、このようなことは多くの社会の文化において、かなり前から習慣として存在していました。例えば、400年ほど前のイランでは、同国の偉大な学者シェイフ・バハーイーが、下水から生じるガスを燃料とする浴場を造っています。また、インドでも一部の人々が蓋のある入れ物に動物のし尿を貯め、9ヶ月間にわたってそこに集められたガスを燃やしていました。このプロセスは、世界の各都市の現代的な技術においても活用されています。特に、世界の一部の都市では、廃棄物の埋め立て場所から生じるガスの利用が注目を集めています。

廃棄物からのエネルギーの生産

 

メタンガスは、廃棄物の埋立地からの発生物のおよそ55%を占めており、温室効果ガスの排出という点では、二酸化炭素とほぼ同程度か、それ以上の能力を有しています。例えば、大気中のメタンガスの濃度が年間0.6%増加したとしても、二酸化炭素を初めとするそのほかの温室効果ガスの濃度は0.4%しか増加しません。メタンガスが正しく制御されない場合、地下水の汚染原因にもつながる可能性があります。このため、メタンガスの正しい使用と再利用は、環境保護に大きな影響を及ぼす可能性があります。

実際、大都市圏で発生する生ごみ1トンにつき、年間5立方メートルから20立方メートルのガスをリサイクルできます。この量を増やすには、廃棄物の埋め立て場所を正しく設定、管理することが必要です。一般の人々の中には、このガスが廃棄物から生じたものであるために汚染されていて危険であり、安心してこれを燃焼させることはできない、と考える人がいます。しかし、科学者の見解では、これは全く逆であり、廃棄物の埋立地から発生したガスの方が汚染がより少ないとされています。その理由は、その燃焼の温度が低く、また汚染度も天然ガスの燃焼時よりおよそ60%低いとされているからです。このため、環境問題の専門家の見解では、廃棄物から発生するガスの制御は1つの義務とされています。

近年、エネルギーの輸送費が値上がりした際、この種のエネルギーがにわかに脚光を浴びました。最新の統計によれば、現在世界では数百箇所に上る廃棄物の埋立地が存在しており、そこで生産されたガスは電力などのエネルギーの生産、さらには顧客への売買に使用されているということです。

廃棄物の埋立地におけるこの種のガスの収集は、比較的簡単です。この作業のためには、埋立地全域に複数の深い井戸を掘削する必要があります。これらの井戸は、1つの配管網により互いに接続されており、これらの配管によりガスが収集されます。もっとも、このシステムの能率を上げるには、砕石やセメント、砂利なども収集経路に投入することができます。これらの全ての井戸は、収集されたガスが集積される中枢部とつながっており、このガスの備蓄部門を、コンプレッサーやブロワーに接続させることが出来ます。

おおよその目安として、廃棄物の埋立地0.4ヘクタールごとにガスを収集する井戸が必要とされています。その結果、ガスをそのほかの目的に使用したり、さらにはそれを精製して質を高めることもできます。このように、電力や熱の同時生産により、二酸化炭素の排出量を大きく減らすとともに、燃料の効率を上げることができるのです。

廃棄物からのエネルギーの生産

 

廃棄物からエネルギーとしてのガスを発生させる技術は、全体的に現在の一般的な方法による発電や発熱の方法よりも効率が高くなっています。このため、この種の技術は最近、ヨーロッパで非常に注目されています。こうしたバイオガスを生産する、ヨーロッパ最大の拠点は、オーストリア・ウィーンにあり、ここでは廃棄物の埋め立て処理から生じたガスを利用して、8メガワットの発電が行われています。

電力と熱を同時に生産する施設の設置は、ヨーロッパ諸国の間で急速に広まっています。政府系部門や民間部門の間では、この技術は多様な可能性を有する、しかも経済的なエネルギー源の1つと考えられています。

この分野で最も成功したプロジェクトの1つは、カナダ・アルバータ州エドモントンにおいてこの数年間、成功裏に進められてきました。エドモントンの電力会社は、廃棄物処理センターから生じたメタンガスを利用し、大規模な発電所の操業にこぎつけています。このプロジェクトは、1992年から開始されており、二酸化炭素の排出量をおよそ66万2000トンも削減することに成功したといわれています。また、このプロジェクトにより1996年だけで、温室効果ガスの排出量を18万2000トン削減した上、1992年から1996年の間には、およそ毎時208ギガワットの電力が生産されました。さらには、この方法により、天然ガスよりも安価なコストで生産されたガスが売却され、その結果経済面での節約にもつながっています。

 

アジアで、暖房用のエネルギーの一部を廃棄物の燃焼により確保している都市の1つに、韓国の首都ソウルが挙げられます。ソウルでは、大量の廃棄物が生じており、最近の報告によれば、この数年ソウルでは家庭用の可燃ごみ110万トンのうち、73万トンがエネルギー生産用の燃料に使用されたということです。この量は、ソウル市内の19万世帯が1年間に必要とする暖房のエネルギー量に等しいと言われています。韓国は、自国に必要なエネルギー全体の10%以上を、再生可能な資源により確保することで、2030年までに環境にやさしい経済の世界の上位5カ国へのランクインを目指しています。

廃棄物を堆肥にするコンポスト

 

廃棄物からエネルギーの生産に加えて、廃棄物のリサイクルのもう1つの方法とされているのは、廃棄物を堆肥にするコンポストです。これは、動物の死骸や枯れた植物、また大都市圏で発生する廃棄物や下水のヘドロといった有機物を、微生物により腐敗させ分解することです。この方法は、特別な条件のもと、様々な方法で実施され、最も古い形でのリサイクルと言えるかもしれません。

コンポストの実施プロセスは、いたって単純です。これは、各家庭や農業用地において産業的な方法で行われます。これらの堆肥は、農業で使用される肥料の中で最高級の肥料の1つとされ、園芸業者もこうした肥料を利用できます。こうした肥料は、マグネシウムやリンを含むことから、農業用地に馴染み、土壌の栄養分に吸収されます。

コンポストは、土壌にとって有害な要素を排除する天然の殺虫剤ともいえます。コンポストによる堆肥を利用することで、化学肥料の消費を70%まで節約できます。大都市圏に住む人1人当たりから、1日に0.5キロ以上の廃棄物が発生していますが、その3分の1以上は再利用やコンポストが可能です。ある都市の人口を3000万人と仮定する場合、その都市では1日当たり1500万キロの廃棄物が発生していることになります。そのうち、500万キロ分はコンポストによる再利用が可能です。

 

これまでお話してきたことから、現代人は過去の苦い経験から、神の恩恵の価値を知り、環境保護に努めなければならないという教訓を得ています。未来の世代のための世界の存続は、こうした努力にかかっているのです。

 

 

 

 

 

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