12月 25, 2021 22:49 Asia/Tokyo
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コーラン第11章フード章についてお話しします。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

コーラン解釈者によれば、フード章は全ての節がメッカで下されました。この章は、イスラムの預言者ムハンマドを常に支えてくれた、預言者のおじのアブーターリブと預言者の妻のハディージャが亡くなった後、預言者がメッカにいた末期に下されました。当時、イスラム教徒に対する敵の圧力は頂点に達していました。この章の大部分では、以前の預言者たち、特に、頑なな敵たちに勝利した預言者ヌーフの物語が述べられています。神の預言者たちは、常に、多神教徒の強情な態度や反発に直面していましたが、いかなるときも、自らの道を続けることを断念せず、その運動をやめることはありませんでした。

 

フード章も、メッカで下された他の章と同じように、イスラムの教え、特に多神教信仰や偶像崇拝との闘いと、死後の世界への注目について述べられています。この章の随所では、敬虔な人間の抵抗に必要な、数々の明白な指示が見られ、イスラム教徒は、敵の数の多さや攻撃の激しさに、決してひるんではならないと強調されています。この章がフードと名づけられているのは、第50節から60節の間で、フードの人生の物語が、美しく詳細に描かれているためです。

 

フード章の第6節では、神が日々の糧を与えてくださること、神の知識は全てに及ぶことが指摘されています。

「地上に生きる全ての生き物は、神から日々の糧を受け取る。神は、生き物の居場所も、移動先も知っておられる。これらは皆、明らかな書物の中に記録されている」

 

 

神は、世界のどの場所にいようとも、全ての生き物に日々の糧を与えてくださいます。神は、存在物を創造する方であると同時に、それらに日々の糧を与える存在でもあり、それらが存続する手段を用意しています。大きさに拘わらず、全ての生き物は、この神の掟に含まれています。神は、水や食糧、酸素や光、熱など、生き物が必要とするものを、地球上に整えています。また、生き物が、それらの恩恵を容易に利用できるようにしています。母親の暗い胎内にいる胎児、大地の奥深くや山の上、谷底にいる様々な昆虫、神の知識は、これら全てに及んでおり、これら全てに、神から日々の糧が授けられています。神が日々の糧を与えてくださることは、人間の行動や努力に矛盾するものではありません。努力なくして、清らかで合法的な日々の糧を手に入れることはできないのです。

ヌーフの

 

フード章では、神の預言者たちの歴史について、興味深い点が述べられています。まず、ヌーフの物語から始まり、26の節の中で、彼の生涯で起きた重要な出来事が述べられています。ヌーフの物語と、圧制者に対する彼の闘争、そしてヌーフの民の恐ろしい結末は、最も教訓に満ちた人類史の出来事であり、それぞれの中に教えが隠されています。

 

フード章の第25節と26節には次のようにあります。

「我々はヌーフをその民のもとへと遣わした。[彼は彼らに言った。]『私はあなた方のための明らかな警告者である。神以外を崇拝してはならない。私はあなた方のために、痛ましい日の責め苦を恐れる』」

 

ヌーフの時代、あらゆる場所に堕落や腐敗が広まっていました。人々は、社会の公正や唯一神の信仰に背を向け、偶像崇拝に走っていました。階級格差は日増しに広がり、強い立場にいる者が、弱者の権利を踏みにじっていました。当時、至高なる神はヌーフを預言者として遣わし、聖典と聖なる法と共に、人々のもとに送りました。

 

しかし、ヌーフの民は、彼の導きに抗い、言いました。「あなたは私たちと同じ人間に過ぎません。あなたに従う人々は、だまされやすく道に迷った人々です。私たちには、あなたの方が優れている点が見当たりません。そしてあなたを嘘つきだと考えます」 ヌーフは彼らに警告し、彼らを導こうとしました。この2つの節で、恐れと警告が強調されているのは、人間は危険を感じない限り、立ち上がることがないためです。このことから、預言者たちの危険を知らせる警告は、警鐘のように、迷った人々の魂に響き、導きを受け入れた人々を動かしていたのです。しかし、すべてのものを物質的にとらえる富や権力の持ち主は、ヌーフの導きを受け入れようとはしませんでした。そこでヌーフは、第28節で次のように語っています。

 

「もし私が主からの明らかな根拠を持ち、神から私に慈悲が与えられ、それがあなたたちには見えないのであれば、[それでも私の使命を否定するのか?]」

 

ヌーフは、朝から晩まで人々を導くために努力し、そのためにあらゆる機会を利用して、人々を怠惰の眠りから目覚めさせようとしました。しかし、彼らは頑なに反対を続け、高慢な態度を示しました。ヌーフも彼らの導きをやめず、人々も、ヌーフの言葉に耳を傾けようとはしませんでした。人々は言いました。「ヌーフよ、あなたは私たちに多くのことを語った。これ以上、議論の余地は残っていない。もしあなたが本当のことを言っているのなら、神の責め苦に関する約束を実現してみるがいい」 愛情に溢れた導きにより、人々を目覚めさせ、救おうとしていたヌーフに対し、不信心者が取っていたこのような態度は、彼らの偏った考え方と愚かさを物語っています。いずれにせよ、ヌーフに信仰を寄せたのは、わずかな数の人々でした。このとき、自分の民の中であなたに信仰を寄せた人を除いて、信仰を寄せる人はいないだろうという啓示がヌーフに下されました。この神のメッセージは、それ以上、信仰と改革のための導きを行っても無駄であり、最終的な革命に備えるべきだということを指摘しています。

 

至高なる神は、第37節で、預言者ヌーフにこのように語っています。

「[今、我々の前で、我々の啓示に沿って船を作りなさい]」

ヌーフは船を作り始めます。しかし、人々は、ヌーフのそばを通り過ぎるたびに、作業に没頭しているヌーフと教友たちをあざ笑っていました。ヌーフは彼らの言葉を気に留めずに作業を続け、だんだん船ができあがっていきました。こうしてとうとう、ヌーフの船が完成しました。

 

第40節には次のようにあります。

「[そのような状態が続き、]我々の命が下り、大量の水がほとばしった。我々は言った。『全ての動物から一つがいをその中に乗せなさい。また、以前に消滅が約束された人々を除き、あなたの一族と、敬虔な人間も』 だが、彼に信仰を寄せた人は少なかった」

ヌーフは急いで、信仰のある親類と教友たちを集めました。そして、神の恐ろしい責め苦と洪水が近づいていたため、神の名のもとに船に乗るよう、彼らに指示しました。また、船が動き出すときも停止するときも、神の名を口にし、神のことを思い起こすようにとしたのです。

 

とうとう、最後の瞬間が訪れ、反対する民への責め苦が命じられました。黒い雲が空を覆い、雷鳴がとどろき、稲妻が次々に光り、恐ろしい大事件の到来を知らせていました。激しい雨が降り始めました。まるで天の扉が開かれたかのようです。その一方で、地下水も地上に溢れ出ていました。少しずつ、地上に水が溢れ、大地が大きな海のようになりました。水かさが増し、船が浮き上がりました。強い風が吹き、大きな波のうねりが現れました。ヌーフの船は人々を乗せて大波の中を突進していきました。

 

ヌーフは、船に乗ってこなかった息子に向かって叫びました。「息子よ、私と一緒に乗りなさい。不信心者の仲間になってはならない。そうなれば滅亡するだろう」 偉大な預言者であったヌーフは、父親としてだけでなく、優しい保護者として、息子が罪を悔い改めてくれるのを望んでいました。しかし残念ながら、息子は悪い者たちの仲間になった結果、道に迷ってしまっていました。そのため、船に乗ろうとせず、父親に向かって、私のことは心配しなくてもよい、洪水など届かないような場所に避難すると言いました。ちょうどそのとき、大きな波が立ち、父と息子の間を引き裂き、息子は溺れる者たちの一人となりました。その大きな洪水は、ヌーフの息子だけでなく、全ての圧制者を滅亡させたのです。

 

この物語では最後に、大地に水を飲み込むことが、そして天には、雨を止めることが命じられました。 こうして水は止まり、船も山すそに止まりました。嵐が静まりました。しかし、嵐はあらゆる生のしるしを消し去り、緑豊かな庭園や牧草地は跡形もなく破壊されていました。そのため、ヌーフとその教友たちは、生活や食糧の点で苦しい状況に置かれることを恐れていましたが、神は、その救われた人々に対し、神の恩恵の扉が開かれること、祝福に満ちた健全な環境が整うことを約束しました。

 

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