コーラン第112章アル・イフラース章純正(2)
今回も、前回に引き続き、第112章アル・イフラース章純正についてお話ししましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
アル・イフラース章は全部で4節あります。この章は、唯一神の信仰と神を知ることについて述べられ、4つの短い節の中で、神の唯一性が完全に説明されています。そのため、この章は他に唯一神信仰を意味する「トウヒード」とも呼ばれています。
それではまず、アル・イフラース章の4つの節をお聞きください。
「慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において。言え、『彼は唯一の神であり、神は他の存在を必要としない。また[誰かを]産むこともなければ、産み出されたこともない。神には比べるものがない』」
創造世界の秩序には全く矛盾や欠点が存在しないこと、その細部のすべてに調和が取れていることは、神が唯一であることを証明する根拠です。コーランは、第21章アル・アンビヤー章預言者、第22節で次のように語っています。
「天と地に、唯一の神以外にも複数の神が存在していたら、天も大地も腐敗し[、世界の秩序は崩れ]ていただろう。そこで、天の主である神は、表現される事柄から清くある」
明らかに、創造世界の管理者が複数になれば、腐敗や混乱を招きます。作者が数人いる本を注意深く見れば、それぞれの部分の文体や内容が異なったものになっているのが分かるでしょう。創造世界という大きな書物を見れば、その中に、非常にすばらしい調和と秩序を目にすることができます。これは、この大きな書物が、世界を創造した唯一の神によって作られたものであることを示しているのです。
神の預言者たちの教えを注意深く見てみると、すべての預言者たちが、例外なく、世界の創造主である唯一の神を信仰するよう呼びかけていることが分かります。このこと自体、神が唯一であることを証明する別の根拠です。もし世界に複数の神が存在していたら、それぞれのもとから預言者が送られ、人類に紹介されて、人々がそれぞれいくつもの道に導かれていたでしょう。
アル・イフラース章の第2節は、神の聖なる本質について説明しています。
「神は他の存在を必要としない」
神は何ものをも必要とせず、一方ですべての存在物は、神へと向かいます。神はすべてのものの目的地です。神は豊かであり、あらゆる点から完全な存在です。この至高なる存在は、最も偉大です。神はすべての人にとって必要とされる存在であり、人々は皆、願いの実現を神に求めています。
アル・イフラース章の第3節と4節は、神に父や子があるとするキリスト教徒、ユダヤ教徒、多神教徒の信条を否定し、次のように語っています。
「[誰かを]産むこともなければ、産み出されたこともない」
ユダヤ教徒は、預言者オザイルを神の子と見なし、キリスト教徒は預言者イーサーを神の息子と考えていました。キリスト教徒は、三位一体説、つまり、父と子と精霊が一体の神であるとする考え方を持っています。またアラブの多神教徒も、天使たちは神の娘であると考えていました。しかし、コーランのこの節は次のように語っています。「神が子を産んだことはなく、また誰かの子でもない」
神と存在物の関係は、創造の関係であり、産んだり産まれたり、という関係ではありません。神はさまざまな存在物を創造します。つまり、ないものに存在を与えますが、それらを産み出すわけではありません。子供の存在は良心の本質と同じものです。しかし、どんな存在物も、神の本質、あるいはその一部ではありません。
一部の言い伝えによれば、神が子供を産んだことはなく、また誰かの子供でもない、という文は、より広い意味を持つものだとされています。神が子供を産んだことがない、というのは、神から何かが発せられたことはなく、子供などの物質的な存在や、息、眠り、空想、悲しみ、喜び、恐怖といった物理的、精神的な状態も生み出されたことはありません。神に子供はなく、誰かの子供でもありません。そして、物質的な世界のあらゆる特徴からは離れています。
アル・イフラース章の最後の節には次のようにあります。「誰も神と同等のものはおらず、神には比べるものがない」
この節は、神の性質に関する内容を完成し、次のように語っています。「神には同等のものがいない」 これによれば、神の本質は、物質世界に関するあらゆる要素、あらゆる欠点を免れています。これこそ、神の本質的な唯一性です
これにより、神は本質的に同等のものを持たず、性質的にも比べるものはありません。あらゆる点で類を持たない存在です。シーア派初代イマーム、アリーは次のように語っています。
「神は同等のものを持たない。また神と比べることのできる存在はいない」
このように、アル・イフラース章は、自然の要素やそれ以外の要素など、神以外のものを崇拝したり、多数の神を信仰したりすることを否定しています。コーランの節によれば、人々の心や魂は、世界の唯一の神の名を唱えることで安らぎを得ます。神のみが、人間を暗闇から光の中へと救い出し、神のみが、賞賛に値します。神に心を委ね、神に助けを求める必要があるのです。