イラン経済通信
イスラム革命最高指導者のハーメネイー師が、先週水曜、体制責任者との会合で、アメリカの核合意離脱は安保理決議2231への違反だとして、次のように語りました。
「ヨーロッパは、アメリカを非難する決議を国連安保理に提出し、このようなアメリカの行動に抗議すべきだ」
また、ヨーロッパと核合意を続ける上での必要な条件について語る中で、次のように強調しました。
「ヨーロッパは、アメリカの対イラン制裁に対抗し、イランが要求する量の石油をイランから購入することを保障すべきだ。また、ヨーロッパの銀行も、イランと取引をする政府や民間部門の出入金に関して、必要な保証を行うべきだ」
明らかに、ヨーロッパが、イランとの対話をアメリカの要求に回答する場に変え、アメリカのトランプ大統領や一部のペルシャ湾岸諸国のイランに対する吹込みの影響を受けて行動するのであれば、核合意の継続は無意味なものになるでしょう。イラン外務省のアラーグチー政治担当次官も、27日日曜、イラン国会の国家安全保障外交政策委員会の後、記者団に対して、核合意のほかの参加国との話し合いについて、次のように語りました。
「イランはヨーロッパ諸国に対して、アメリカ抜きでイランの核合意における要求を保障し、イランが決定を行うことができるよう、実質的な解決法や提案を出すことを求めている」
アラーグチー次官はまた、「イランは、話し合いが適切な軌道に沿って進展し、イランが設定したタイムリミットが守られていると感じられる間は、協議を継続するだろう」と述べました。
一方的な制裁や、世界経済に対する影響力の行使といったアメリカの国際的な行動は、ヨーロッパの経済を数多くの問題に直面させています。これに関して提起されている問題のひとつは、アメリカが国際機関を尊重しているか、という問題で、この問題はヨーロッパにとって、大変重要です。
今世紀はじめのブッシュ政権時代、このような行動は、特にアメリカのイラク攻撃や、一方的な制裁という形で見られました。この流れはオバマ政権時代、大いに改善されましたが、トランプ政権時代になって、再び国際機関や国際条約を尊重しない状況になっています。
トランプ大統領は、TPP環太平洋パートナーシップ協定を取り消し、気候変動に関するパリ協定からも離脱しました。この中で重要な問題は、アメリカのWTO世界貿易機関からの脱退です。アメリカのヨーロッパに対する圧力と、イランとヨーロッパの経済協力に対する破壊的行動は、自由貿易関係における対立と、アメリカが貿易協定や国際規約を無視していることを意味しています。
オーストリアのイラン問題の専門家は、スイス公共放送SRFのインタビューで、次のように強調しました。
「アメリカの一方的な核合意の離脱は、大西洋間の関係における深い溝を生み出すことになり、イギリス離脱で弱体化しているEUを、さらに弱めることになる」
アメリカの核合意離脱は、イランとヨーロッパに新たな経験をもたらしています。ヨーロッパが独自の行動を取る場合、イランとの協力における新たな機会が生じることになります。イランとヨーロッパは、相互に経済と投資の可能性を活用しています。その可能性は、この10年間、反イラン的な制裁と国連安保理決議により、忘れ去られていました。
現在、この新たな経験の中で、ヨーロッパがどれほどアメリカから離れた独自路線を進むのかを見ていく必要があるでしょう。
先週、イランの専門家や技術者の努力により、南パールスガス田のフェーズ22かフェーズ24の開発計画における最初のプラットフォームが、このガス田に設置されました。これにより、日量1420万立方メートルの天然ガスが生産されることになります。
また、イラン海洋産業企業におけるこの開発計画に関する、他の3つのプラットフォームも、建設中で、その進捗は84%となっています。
南パールスガス田は、ペルシャ湾のイランとカタールの領海内にある世界最大のガス田です。このガス田の埋蔵量は14兆立方メートルで、また180億バレルのLPGも埋蔵しており、世界の天然ガス埋蔵量の8%、イランの天然ガス埋蔵量のおよそ半分を占めています。
イランの経済は、制裁にもかかわらず、さまざまな分野の市場に進出しています。これは、イランにおける中長期的な投資が、安定しているということを意味しています。この中で、イランと世界各国の2カ国間、あるいは数カ国間の協定が成立し、これにより、イランの経済市場の規模はより大きなものとなっています。
イランのアプローチのひとつは、貿易・経済市場の多様化です。この中で、イラン商工鉱業会議所のサフルアーバーディー会頭は、先週、イランと日本の経済協力の拡大を目的として、日本を訪問しました。この訪問の中で、日本のJICA・国際協力機構の中東欧州部の部長と会談を行いました。
現在、イランと日本の協力拡大に向けて、適切な機会が整っています。サフルアーバーディー会頭は観光産業の開発と、産業に関する技術訓練・教育コースの開設を両国の協力の下地として、「イランは地域、近隣諸国、治安、運輸上のルートに関して多くの機会を有しており、この機会はすべての人が活用できる」と語りました。
イランは石油採掘に関して、非常に高い能力を有しています。また、石油化学産業においても、イランと日本は共同投資により、この産業における技術や調査に関する訓練での協力を促進することができます。
地域協力の枠内では、今週、イランのザリーフ外務大臣が、インドに訪問しました。ザリーフ外相は、イランの政治的、経済的なパートナーとの話し合いを続ける中で、インドのスワラージ外相とニューデリーで会談し、両国の間での政治・貿易協力の拡大の下地を整えるため、核合意とアメリカによるその離脱、現状における両国の利益の確保について意見交換を行いました。
イランとインドの経済協力の拡大は、近年、大変急速に進んでいます。この協力のひとつは、インド洋に面するイラン南東部のチャーバハール港の開発計画における、インドの投資です。
3カ国によるチャーバハールのトランジット協定は、2016年5月、イランのローハーニー大統領、インドのモディ首相、アフガニスタンのガニ大統領の立会いの元、3カ国の道路交通大臣により、テヘランで締結されました。この協定により、インドは10年間にわたり、8500万ドルの投資を行うことで、チャーバハールの港の運営を担当することになります。
チャーバハールの開発は、イラン、インド、アフガニスタンだけでなく、ロシア、グルジアやその他の地域諸国にとっても、大きな経済的な利益を有しています。インドのガドカリ道路交通・高速道路大臣は、チャーバハールの重要性について、次のように語りました。
「インドはイランとの貿易協力の拡大を強く望んでおり、チャーバハールは、イランとインドの通商関係の拡大において、戦略的な地域として重要な役割を持つことになるだろう」
チャーバハールの開発により、インドなどの国は、ロシアやヨーロッパ諸国により簡単にアクセスできるようになるのです。