コーラン第94章アッ・シャルフ章胸を広げる
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コーラン第94章アッ・シャルフ章胸を広げる
今回は、コーラン第94章アッ・シャルフ章胸を広げるについてお話します。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
アッ・シャルフ章は、メッカで下された章です。アッ・シャルフとは、広げるという意味です。この章は全部で8節あります。
アッ・シャルフ章は、神がイスラムの預言者ムハンマドに与えた精神的な恩恵の一部を挙げています。この章は主に、3つの問題を軸にしています。その3つとは、預言者に対する神の恩恵、今後の預言者の導きに横たわる問題が解消されるという吉報、そして、唯一の神への注目と礼拝や崇拝への呼びかけです。
アッ・シャルフ章の第1節と2節を見てみましょう。
「我々は汝の胸を広げなかったか。汝の重荷を取り除かなかったか」
伝承では、預言者は次のように語ったとされています。
エ「私は神に願い事をしたが、そのような願い事をしなければよかった。“神よ、風の流れを私以前の一部の預言者たちの手に委ね、別の預言者たちは死人をよみがえらせた”と神に言ったとき、神は仰った。『汝が孤児だったとき、汝に保護を与えなかったか』と。私はその通りですと言った。すると神は仰った。『汝が迷っていたときに私が汝を導かなかったか』と。私はその通りですと言った。また神は仰った。『汝の胸を広げ、汝の背中を軽くしなかったか』と。私はその通りですと言った」
アッ・シャルフ章は、ムハンマドが預言者に任命された最初の年に下されました。預言者は、唯一神信仰の導きを明らかにしたことにより、メッカの多神教徒による多くの反対や妨害に晒されました。こうした反対のあまりの多さに、預言者は、このような重大な責任を背負い、最後までやりぬくことはできないと考えました。とはいえ、神の全ての預言者たちは、導きを始めた頃、同じような大きな問題に直面していました。しかし、神の助けにより、こうした苦難にうち勝つことができたのです。もっとも、イスラムの預言者ムハンマドの時代や周囲の環境は、いろいろな点で、彼らの時代よりも困難なものでした。
神はアッ・シャルフ章の中で、このような預言者の不安に対し、次のように語っています。「神の宗教の伝道など、大きな目的を達成するためにさまざまな困難に耐えることは、決して無駄にはならない。なぜなら、神の掟は、どのような困難や問題の中にも、何らかの道を開いているからだ。つまり、人間が神聖な目的のために苦労や努力を強いられるとき、そうした苦労が、人間の進歩や成長のための、それまでにはなかった新しい土台や可能性をもたらしてくれる。そのため、さまざまな苦難や問題を恐れてはならず、それどころかそれらを歓迎すべきである」
預言者が使命を授かった後に神から特別な支援や恩恵を受けていたことは、多くの苦難や困難を、一部の制限や悪影響、被害といったマイナスの面からだけで評価してはならないこと、あらゆる困難は、生活に新しい地平線を開き、成功をもたらす要素になるという事実に注目すべきであることを示しています。このことは、アッ・シャルフ章の次の節で強調されています。
「明らかに、あらゆる苦難と共に、安楽がある」
アッ・シャルフ章の第4節は、預言者への神の恩恵のひとつとして、預言者の名声を高めたことが挙げられています。あらゆる陰謀や悪意にもかかわらず、現在、ムハンマドの名は、イスラムやコーランと共に、世界中に広まっています。そして毎日、朝と晩に、礼拝の時刻が告げられる際、アッラーという神の名と共に、預言者ムハンマドの名が呼ばれています。神の唯一性の証言と共に、ムハンマドが預言者であることが証言されることは、イスラムのしるしであり、この清らかな宗教を受け入れたことの根拠となるものです。
ある伝承の中で、預言者ムハンマドはこの節について次のような解釈を述べています。「大天使ジブライールが私に言った。『至高なる神は、汝の地位の偉大さは、私の名が呼ばれる際、汝の名も私と共に呼ばれることだけで十分であると言っている』」
アッ・シャルフ章の終盤の節は、あらゆる重要な使命を果たした後には、別の重要な問題に取り組む必要があることを示しています。そのため、あらゆる努力を神のために行うことが勧められており、預言者に対しても、次のように述べられています。「決して努力をやめてはならず、常に、神の道において努力しなさい。またどのような状態にあっても、神に注目しなさい。神の満足を追い求めなさい。神に近づけるよう急ぎなさい」
