6月 28, 2018 20:39 Asia/Tokyo
  • コーラン第110章アン・ナスル章援助
    コーラン第110章アン・ナスル章援助

今回は、コーラン第110章アン・ナスル章援助についてお話しましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

 

アン・ナスル章はメディナで下され、全部で3節です。

 

 

「神の助けと勝利が訪れ、人々が集団になって神の宗教に入るのを見るとき、[これらの恩恵に感謝して]汝の主を賞賛しなさい。そして神に赦しを求めなさい。神は本当によく罪の悔悟を受け入れてくださる」

 

メッカの人々は、非常にイスラムの預言者を苦しめていました。そのため、メッカは預言者にとって生まれ故郷であったにも拘わらず、そこを離れてメディナに移住することを余儀なくされました。それでも預言者ムハンマドは、常に、再びメッカに戻る日が訪れるのを待っていました。そのようなときにアン・ナスル章が下され、ひとつの重要な勝利が知らされたのです。

 

預言者ムハンマドは、この神の約束を非常に喜び、その話をイスラム教徒にも伝えました。皆も喜び、その輝かしい歴史的な勝利の日の実現を待ちわびました。イスラム暦8年、イスラム教徒に対してメッカへに向かうよう神から指示がくだされました。このイスラム教徒の軍の進攻によってメッカが征服され、こうして、神がアン・ナスル章で預言者に与えていた勝利と征服の約束が実現し、コーランの奇跡の一部が明らかになりました。

 

とはいえ、預言者の時代には多くの征服が行われました。しかし、アン・ナスル章が指していると考えられる最も明らかな出来事は、メッカの征服です。なぜなら、メッカの征服は、イスラム初期のすべての征服の中でも、最も優れたものだったからです。メッカの征服は、イスラムの歴史における新たな幕開けとなり、およそ20年ののち、クライシュ族の多神教徒の抵抗を崩しました。

 

メッカ征服に関して興味深い点のひとつは、預言者が、イスラム教徒の軍勢に対して誰かに弊害を与えたり、誰かの血を流したりしてはならない、と指示したことです。この大きな勝利の中で、預言者はメッカに入り、神の家があるマスジェドルハラームに行きました。預言者は神の家の中に入り、偶像を壊しました。それから神の家の傍らに立ち、人々に、「あなた方は今日、私に何を期待しているのか?」と尋ねました。彼らは、「許しです」と言いました。預言者は目に涙をためました。人々も涙を流しました。

コーラン第110章アン・ナスル章援助

 

預言者は、メッカの多神教徒たちから多くの嫌がらせを受けていたにも拘わらず、このように語りました。

 

「私はあなた方について、兄弟のユーソフが言ったのと同じことを言う。今日、あなた方を責めることはない。神はあなた方を赦される。神は慈悲深い方であられる」

 

こうして、慈悲深い預言者は、全ての人を赦すと共に、「皆、自由である。どこでも好きなところに行くがよい」と言いました。

 

メッカはこのようにして、争いや流血が起こることなく、征服されました。このイスラム的な恩赦と慈悲は、メッカの人々も全く予想していなかったために、人々の心に強い感銘を与え、彼らは次々にイスラムを信仰するようになりました。この大きな征服は、急速にアラビア半島の全体に広がり、偶像崇拝や多神教信仰はこの土地からなくなりました。こうして、イスラムの名はすべての場所にとどろき、定着していきました。その後、イスラムの声は世界中に届くようになりました。

 

 

敵に勝利するためには、力を確保し、兵士や可能性を用意することも非常に重要なことですが、真の効果的な援助とは、至高なる神から与えられるものだということを忘れてはなりません。このような考え方を持てば、勝利や成功が人間を高慢にすることはなく、反抗に走り、覇権を振るうこともありません。

 

アン・ナスル章では、まず、神の助け、その後、勝利と征服、それからイスラムの拡大と人々のイスラムへの信仰について述べられており、この3つは共に関係しています。神の助けがなければ、勝利や成功もなく、勝利を収め、障害が取り除かれなければ、人々が次々にイスラムに入信することもありませんでした。

 

この勝利の後、神は預言者に対し、神を賞賛すること、あらゆる欠点を免れた存在であると見なすこと、罪の赦しを求めることを命じています。アン・ナスル章の節は、神が人々を放置することはなく、その約束を実現する力を持っていること、神の偉大さの前に自分が欠点のある存在であることを認めるのは僕であり、僕は神を賞賛し、神に感謝すべきであることを指摘しています。

 

伝承には次のようにあります。この章が下され、偉大なる預言者がそれを教友たちに読み上げたとき、全ての人が喜びましたが、預言者のおじであるアッバースは、それを聞いて涙を流しました。預言者が、なぜ泣いているのかと尋ねると、アッバースは言いました。「この章の中で、あなたの死の知らせが与えられた気がするからです」 預言者は言いました。「その通りである」