7月 02, 2018 22:44 Asia/Tokyo
  • 預言者ムーサー
    預言者ムーサー

今回は預言者ムーサーと神との語らいの物語をお届けしましょう。

預言者ムーサーの人生において興味深い事柄は、彼と神との語らいです。それは、神と語り合うことの情熱と喜びを人間の中に蘇らせます。ムーサーとフィルアウンの論争は、2つの完全に異なる見解を対峙させています。人間は、人生において、常に、正義と悪の2つの流れに直面しますが、最後に勝利するのは正義、真理なのです。

 

とても寒い夜でした。ムーサーは、家族と共にエジプトに戻る途中で道に迷ってしまいました。彼は考えました。その寒さと暗闇をどのように耐え忍ぼうかと。そのときです。遠くに松明の明かりが見えました。ムーサーは妻と、同行していた人々に向かって言いました。

 

「ここに残っていなさい。遠くに明かりが見える。もしかしたら、あの明かりを頼りに歩けば道を見つけられるかもしれないし、体を温めるための火を分けてもらえるかもしれない」

 

ムーサーは木の棒を持って、明かりの方に急ぎました。すると突然、光を放っていた木から、天の声が聞こえました。

 

「ムーサーよ、私は唯一の神であり、世界の主である。履物を脱ぎなさい。あなたは今、聖なる谷間にいる」

 

ムーサーは驚いて立ち止まりました。神の言葉が、ムーサーの全身に響きました。再び声が聞こえました。

 

「あなたが手に持っているのは何か?」 

 

ムーサーははっきりと答えました。

 

「これは私の杖です。私はこれを支えにしたり、羊たちを追ったりします」 

 

天の声は言いました。

 

「その杖を地面に放り投げなさい」

 

 ムーサーは驚いたまま、それを地面に放り投げました。すると突然、杖が、恐ろしい大蛇の姿になりました。ムーサーが急いで逃げ出そうとすると、再び声が聞こえました。

 

「恐れることはない。あなたは安全だ。その杖を拾いなさい」

 

 ムーサーは神の命に従って蛇の方に手を伸ばしました。ムーサーの手が蛇の体に触れるや否や、再び杖の形となり、ムーサーの手に収まりました。

 

神は言いました。

 

「では、自分の手をそでの中に入れ、それを出しなさい」

 

 ムーサーが言われた通りにすると、荒野が輝く光で照らされました。そのとき、再び天の声が聞こえました。

 

「ムーサーよ、私はあなたを預言者に選んだ。この奇跡としるしを持ってフィルアウンのもとに行きなさい。彼は真理を拒んでいる。彼に優しい言葉で語りかけるがよい。もしかしたら、忠告を受け入れるかもしれない」

 

そのとき、ムーサーは、自分が任された使命の重大さを感じました。そこで、祈りを捧げて言いました。

 

「神よ、私の胸を開き、私のすべきことを容易なものにしてください。人々が私の言葉をきちんと理解できるよう、私が言葉につまらないようにしてください。また兄弟のハールーンを私の援助者にしてください」

預言者ムーサーとフィルアウンの物語

 

ムーサーは、決意を固めた様子で、兄弟のハールーンと共にフィルアウンのもとに行きました。そして、優しい言葉でフィルアウンに語りかけました。

 

「私は世界の創造主から遣わされた預言者です。あなたに、唯一の神を信仰し、圧制をやめるよう求めます」 

 

フィルアウンは驚いて言いました。

 

「イスラエルの民の他の誰かが、私にそのようなことを言っていたら、私は決して驚かなかっただろう。だがお前がそんなことを口にするとは。お前が幼かった頃、私たちがお前を育ててやったのを忘れたのか? 私たちの許に何年いたと思っている?」

 

ムーサーは答えました。

 

「しかし、私があなたの家で育てられることになったのも、あなたの圧制によるものでした。もしあなたが、イスラエルの民の子供たちを殺していなかったら、私の母も、恐れをなして私を川に流すことはなかったでしょう。今、私は神に選ばれたのです」

 

フィルアウンは彼を侮辱して言いました。

 

「お前の言うその神とは誰のことだ?」 

 

ムーサーは言いました。

 

「彼は天と地、そしてその間にあるものの主です」

 

 フィルアウンは周囲の人々に向かってあざ笑いながら、「彼の言葉を聞いたか?」と言いました。ムーサーは続けました。

 

「彼はあなた方と、あなた方の先祖の主です」 

 

フィルアウンはそこにいた人々に向かって言いました。

 

「あなたたちのために使わされたこの預言者は、気が狂っている」

 

しかしムーサーは、それでもなお、神について語り続けました。

 

「彼こそは、東と西、そしてその間にある全てのものの主です。もしあなたたちが考えるならば」

 

フィルアウンは言いました。

 

「ムーサーよ、もし私以外の誰かを神と捉えるならば、お前を投獄する」

 

ムーサーは言いました。

 

「もしあなたの目の前で奇跡を見せたとしてもですか?」

 

フィルアウンは言いました。

「もしお前が本当のことを言っているのなら、奇跡を起こしてみるがいい」

 

 ムーサーは自分の杖を地面に投げました。すると、それは大きな竜の形になりました。フィルアウンの側近たちは驚いて逃げ出しました。フィルアウンは、自分が恐れをなしていることをムーサーに悟られまいと努めましたが、ムーサーは新たな奇跡によって、彼を驚かせました。しかしフィルアウンは、すぐに気を取り直し、自分の権力のみを考える、他の利己的な有力者たちと同じように、ムーサーを否定し、言いました。

 

「ムーサーよ、お前はこのような魔術によって私たちを祖国から追い出すために、ここにやって来たのか? 別の日に、再びここに来るがよい。私の魔術師たちの魔術をお前に披露してやろう」

 

ムーサーはこの提案を受け入れ、大衆の前でムーサーと魔術師たちが対決する日にちが決定されました。

 

 

この物語は、コーラン第20章ター・ハー章、第26章シュアラー章詩人、そして第28章ゲサス章物語で語られています。次回は、この物語の続きをお届けする予定です。