12月 25, 2023 20:49 Asia/Tokyo
  • 預言者イーサーの誕生の物語
    預言者イーサーの誕生の物語

今回は前回に引き続き、マルヤムとイーサーの物語をご紹介しましょう。

イーサーは、神の偉大な預言者の一人です。彼は普通では考えられないような形で誕生し、他の預言者たちと同じように、人間を幸福や救済へと導くために神から遣わされました。聖典コーランは、預言者イーサーの偉大さについて語っています。また、彼の母であるマルヤムを賞賛し、彼女の驚くべき人生を美しい物語の形で述べています。

 

マルヤムの清らかさは人々を魅了し、病気の人々は、治癒を求めて彼女のもとを訪れました。その日も、マルヤムは人々のために祈り、それから、町のはずれの丘にある礼拝所の東側に行きました。彼女は、そこの美しい自然を愛していたのです。そのため、機会を見つけては、そこに足を運んでいました。そこに着いてまもなく、マルヤムは、誰かが自分の前に立っているように感じました。そのため、不安になって立ち上がり、言いました。

 

「あなたについて、慈悲深い神に助けを求めます。あなたが敬虔な人間でいられるように」

 

 若者は答えました。

 

「私はあなたの主の使徒であり、あなたが清らかな息子を授かることを知らせにやって来ました」

 

 マルヤムは驚きながらも、悲しんで言いました。

 

「私が子供を授かるわけはありません。どの男性も、私に触れたことはありませんし、私も同様です」

 

 若者は微笑みを浮かべて言いました。

 

「あなたの主はこのように仰いました。『それは私にとって簡単なことだ』と。私たちは、その息子が人々にとって神からの慈悲になることを望んでいます」

 

少しずつ、マルヤムの行動は、彼女の保護者となっていたザカリヤーとその妻にとって、理解のできないものとなっていました。マルヤムは様々な口実を設けて人々の前から自分の身を隠し、その表情には悲しみを溢れさせていました。誰も彼女の微笑みを目にすることがなくなりました。ある日のこと、ザカリヤーは、大急ぎで家に戻ると、妻に尋ねました。

 

「マルヤムはここにやって来たか?」

 

 妻は言いました。

 

「いいえ、今日はここにはこないはずですが」

 

 ザカリヤーは言いました。

 

「しかし、朝に出かけていったまま、礼拝所にも戻っていないのだ」 

 

妻は答えました。「それなら、すぐに探しに行きましょう」

 

夜中になり、ザカリヤーは疲れ果て、希望を失ったまま、家に戻りました。彼の不安のまなざしは、マルヤムの行方が分からないままであることを物語っていました。

 

マルヤムは臨月を迎えていました。彼女は痛みに苦しみながら、灼熱の砂漠の中で、乾いたナツメヤシの木陰に腰を下ろし、このようにつぶやいていました。

 

「神よ、私に慈悲を与えてください。私の一族は清らかで敬虔な人々でした。私に浴びせられるであろう誹謗中傷から私を助け、それに耐えられるようにしてください」

 

 そのとき、激しい痛みと共に、足元から、新生児の勇気を与える声が聞こえてきました。

 

「母よ、悲しんではなりません。神があなたの足元に小川を流してくださいました」

 

 マルヤムがまだ朦朧としている中、再び、声が聞こえました。

 

「この乾いた木をゆすりなさい。そうすれば、新鮮なナツメヤシの実が落ちてくるでしょう。そのナツメヤシを食べ、その果汁を飲みなさい。元気を出しなさい。誰かに会っても、何も言う必要はありません。そして、今日は神のために、言葉を発するのを禁じられた日であることを合図して示しなさい」

 

マルヤムは初め、驚いていました。しかし、自分が妊娠したことも、神の命による不思議なものであったことを思い出すと、落ち着きを取り戻しました。そして、いくつかのナツメヤシの実をもぎ取って食べました。それからその果汁を飲み、少し休みました。それから、生まれたばかりの子供を胸に抱き、人々のもとへと向かいました。ザカリヤーは商売の最中で、忙しく働いていました。するとそこに、突然、ユーソフが姿を現して言いました。

 

「ザカリヤーよ、マルヤムが見つかったのだが・・・」

 

 ザカリヤーは言いました。「だが、どうしたのだ?」

 

 ユーソフは言いました。

 

「彼女は一人ではない。子供を抱いている」 

 

イーサーの誕生を待っていた、この偉大な預言者ザカリヤーは、とうとう神の命が実現されたことを悟りました。そこで、急いでマルヤムに会いに行きました。ザカリヤーは、マルヤムが人々に囲まれ、卑しめられているのを目にしました。人々は彼女にこう言っていました。

 

「ハールーンの姉妹であるマルヤムよ、あなたの父親は悪い人間ではなかった。またあなたの母親も、悪い人ではなかった。それなのにあなたは、夫もいないのにその子をどのようにして産んだのか?」

 

マルヤムは、何も言わずに、ただ子供に尋ねてくれと合図しました。そのとき突然、人々の間から大きな笑い声が聞こえました。

 

「子供に尋ねろだと? 生まれてたった1日の子供に尋ねられるわけがない。私たちを馬鹿にしているのか? まだゆりかごにいる子供と話ができるはずがないだろう」

 

 すると、その子が神の命によっておもむろに口を開き、言いました。

 

「私は神の僕である。神は私に聖典を与え、私を預言者にした。そして、私がどこにいようとも、私に祝福を与られた。また、私が生きている限り、礼拝と喜捨、人々への善行に励むようにと言われ、私を反抗的な者にはされなかった。私が生きるとき、また死ぬとき、そして蘇るときに平安あれ」

 

このようにして、預言者イーサーが誕生しました。この誕生については、コーラン第19章マルヤム章マリア、第34節に次のようにあります。

 

「こうして、マルヤムの息子イーサーは、彼らが疑っている事柄について真実を語る」

 

 

 


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