7月 03, 2018 21:15 Asia/Tokyo
  • 預言者ムハンマドの天界飛行
    預言者ムハンマドの天界飛行

今回は、預言者ムハンマドの天界飛行についてお話ししましょう。

聖典コーランの物語の一部は、イスラムの歴史をたどったものです。預言者ムハンマドがどのようにしてその使命を授かったのか、その中でどのような出来事が起こったのか、それらが、数多くの節の中で、美しい形で教訓や忠告として述べられています。

 

神の預言者の天界飛行の物語に関しては、コーラン第17章アル・イスラー章夜の旅の最初の節で述べられています。

 

「神は清らかで無謬の存在であり、僕を夜の間にマスジェドルハラームから、周囲に祝福を与えたマスジェドルアクサーへと一瞬にして旅させた。それは、自らのしるしを彼に示すためである。まことに神は全てをよく見聞きなさる方である」

 

夜が過ぎ、朝になろうとしていました。神の預言者ムハンマドの祈りの声が、ウンマ・ハーニーの家を精神性の香りで満たしていました。ウンマ・ハーニーが、預言者の朝の礼拝の心地よい響きの中に浸っていると、預言者が彼女を呼びました。

 

「とても重要な話がある」

 

ウンマ・ハーニーは立ち上がり、預言者に近づきました。預言者は言いました。

 

「昨日の夜、私はここで夜の礼拝を行った。その後に大天使ジブライールがやって来て、私を、天の家畜に乗せ、ベイトルモガッダスへと連れて行った。空はきれいに飾られていた。すべての天使たちは嬉しそうに私との面会を互いに知らせあっていた。私は様々な場所に行った。マスジェドルアクサーで礼拝を行い、神の預言者たちの痕跡を目にした。そして今、お前も見ている通り、私はここで、朝の礼拝を行った」

 

預言者の妻で、彼のおじの娘であったウンマ・ハーニーは、心配そうに言いました。

 

「あなたのその話が正しいことは、私にとって太陽のように明らかです。でも神に誓って、この出来事は自分の胸にしまい、誰にも言ってはなりません」

 

預言者の表情は、固い意志と確信によって光り輝いていました。預言者は微笑みをたたえながら言いました。

 

「しかし私は今、クライシュ族のところに行き、この出来事を話すことで、神の偉大さと力を理解させたいと思う」

 

ウンマ・ハーニーはなおも抵抗し、預言者の服の裾野をつかみながら言いました。

 

「あなたの使命を否定し、真理の言葉を受け入れない人々のところに行くのですか?あなたが嫌がらせを受けないか心配です」

 

預言者は何も言わずに、ウンマ・ハーニーの家を後にしました。

預言者ムハンマドの天界飛行

 

モスクは人々でごった返していました。人々は互いに語り合っていました。アブージャハルは、預言者の姿を目にすると、彼の方に近寄って来て、いつものように嘲笑しながら言いました。

 

「何か新しい出来事でもあったのか?」

 

預言者は答えました。

 

「その通り。私は昨夜、天界を飛行した」

 

 アブージャハルは驚いて尋ねました。「どこに行ったのだ?」

 

 預言者はベイトルモガッダスだと答えました。アブージャハルは尋ねました。

 

「つまり、昨夜はベイトルモガッダスにいて、今は私たちと一緒にいるということか?」

 

 アブージャハルは大きな声で笑いながら言いました。

 

「さあ、ムハンマドよ、詳しい話を聞こうではないか」

 

そのとき、人々の間からざわめきが起こり、人々が預言者の周りに集まってきました。預言者は彼らに向かって言いました。

 

「昨夜、私はベイトルモガッダスに連れていかれた。そこには、イブラヒームやムーサー、イーサーなどの神の預言者たちもいた。私たちは共に語り合い、礼拝を行った。私は礼拝のとき、彼らの先頭に立った。アーダムにも会い、彼は右を向くと喜び、左を見ると泣いていた。大天使ジブライールによれば、アーダムは子孫の一人が楽園に連れていかれると喜び、地獄に連れていかれると悲しむということだ」

 

そのとき、そこにいた一人が言いました。

 

「つまりあなたは、2か月かかる行程を、たった一晩で移動したというのか?それが真実であることを証明できる証拠は何だ?」

 

預言者は言いました。

 

「私はシャームに行く途中である土地に降り立ち、そこである部族に出会った。彼らのラクダは私が乗っている家畜の声を聞いて恐れをなし、驚いて群れになって逃げだした。ラクダのうちの一頭がいなくなり、私はその持ち主をラクダがいる場所まで案内した。それはシャームに行く途中だった。帰るとき、メッカの近くまで来ると、別の部族に出会った。彼らは眠っていて、水の器を持っていたが、その上には覆いが置かれていた。私はその覆いを取り、その水を飲んだ。それからまた覆いを被せた。この部族は今、多くの商品と共にメッカに到達しようとしている。彼らの先頭には灰色のラクダがいて、黒と白の袋をかけている」

 

人々は信じられない様子でその隊商を迎えに行きました。そして、預言者が言った通りの特徴を持った隊商が、メッカに入って来ようとしているのを目にしました。そのとき、預言者の教友の一人が言いました。

 

「ムハンマドよ、私が証言する。あなたは最も正直な人間である」 

 

その声の後に続いて、預言者を支持する別の声が聞こえました。預言者はなおも、天界飛行について語り続けました。

 

「私は天界飛行の際に7層の空に行き、その驚異を目にした。それぞれの空で壮麗な宮殿を見た。宝石の宮殿について尋ねると、大天使ジブライールは言った。この宮殿は、清らかな言葉を話し、長い断食を行う人々のものだと」

 

預言者はなおも、自分の天界飛行について語りました。彼の教友たちの数が増えていき、預言者に反対する人々はそれまでと同じように、ただただ驚いていました。

 

 

預言者の天界飛行は、実際、神の偉大さを表すものであり、その中で、預言者にとって、非常に驚くべき真実が明らかになりました。預言者は天国と地獄を目にし、天国の人々の階級や地獄の人々の苦しみを目の当たりにしました。そして、創造世界の神秘と、神の無限の力の痕跡を知りました。それからも旅を続け、大天使ジブライールですら近づけなかった場所に至ったのです。

 

預言者ムハンマドは、神の壮麗さと栄光に溢れた場所に達しました。そのとき、声が聞こえました。

 

「汝は私の僕であり、私は汝の主である。私を崇拝しなさい。そして私を拠り所とするがよい。汝は私の僕たちの間にいる私の光である。彼らのための私の最後通告は、汝である」

 

天界飛行が終わり、預言者ムハンマドは、来た道を戻るように命じられました。(了)