7月 03, 2018 21:57 Asia/Tokyo
  • 預言者一門の献身
    預言者一門の献身

イスラムの教えは、初めからイスラム教徒の心に浸透し、預言者ムハンマドに従う人々は、献身によってイスラムを守り続けてきました。今回は、預言者一門の献身に関する興味深い物語をご紹介しましょう。

昼前のことでした。メディナのモスクには、精神的な雰囲気が広がっていました。モスクでは人々が礼拝に勤しんでいました。コーランを読む人もいれば、祈りを捧げる人もいました。また、立ち上がる人もいれば、神にひれ伏した状態で、その偉大さを称える人もいました。神への祈りの心地よい響きが、モスクに入ってくる人々を惹きつけていました。その日、偉大なる預言者も、礼拝を行うためにモスクを訪れていました。預言者の周りには何人かが集まり、預言者は彼らの質問に答えていました。すると突然、モスクの前に一人の男が現われました。知り合いには見えませんでしたが、疲れ果てており、悲しそうに見えました。彼は人々の姿を見てモスクに入りました。そして周囲を見回した後、全ての人に聞こえるように、震える大きな声で、自分の状況を説明し、モスクにいる人々に助けを求めました。彼の悲しそうな口調は、彼が大きな苦しみを抱えていることを物語っていました。そして彼の恥ずかしそうな表情は、生活の苦しさにより、やむを得ず、助けを求めていることを示していました。

 

男は少しの間、静かに立ち、人々の反応をうかがっていましたが、誰からも何の答えも返ってこないのを目にし、再び人々に語りかけました。

 

「神の満足のために、私に施しをしてください」 

 

しかし、誰も彼に注意を払う人はいませんでした。そこにいた2人の会話が聞こえました。

 

「彼を助けることができればよかったのだが」

 

もう一人が言いました。

 

「本当だ。でも君も知っているように、私たちは皆、苦しい生活を送っている」

 

預言者ムハンマドも、誰が率先して、貧しい人を助けようとするのか、遠くから様子を見守っていました。少したつと、希望を失った哀れな男は、天に向かって言いました。

 

「神よ、私は預言者のモスクにやって来てイスラム教徒に助けを求めたというのに、誰も私の問題を解決してはくれなかった」

 

 そのとき、礼拝を行い、神を称賛するために礼拝を行っていたイマームアリーは、指輪のついた自分の手をその男の方に差し伸べました。周囲の人々は驚いて見つめていました。一人が尋ねました。

 

「どういう意味だろうか?」

 

 別の一人が言いました。

 

「あの指輪を男に差し出したのだ」 

 

貧しい男は、最初は信じられませんでした。しかし、我に返ると、すぐにアリーに近づき、その指輪をアリーの手から取りました。そして微笑みながら指輪を自分の手に握り、人々の間を通ってモスクから出て行きました。預言者はその一連の出来事を目にし、満足していました。そして神に向かって言いました。

 

「神よ、私の兄弟のムーサーは、真理を見出す力を授け、行いが簡単になるようにし、また人々が彼の言葉を理解できるように、表現力を与え、兄弟のハールーンを預言者の使命の援助者とするよう、あなたに求めた。そしてあなたもその願いを受け入れ、ムーサーが求めたものを彼に与えられた。今、あなたに選ばれた預言者である私ムハンマドも、真理を見出す力を授けてくれるようあなたに求める。そして行いを容易にし、私の一門であるアリーを私の確かな援助者としてくださるように」

 

そのとき、モスクにいたアブーザル・ガッファーリーは、この出来事を人々に話すと共に、こう続けました。

 

「預言者の祈りがまだ終わらないうちに、人々は預言者の表情が変わり、啓示が下ったようであるのを見た。そして、大天使ジブライールがこの節を預言者に下した」

 

「まことに、あなた方の主は神と神の使徒、そして信仰を寄せ、礼拝を行い、喜捨を施す者である」

(コーラン第5章アル・マーイダ章食卓の第55節)

 

今回紹介した物語については、シーア派とスンニー派の30人を超える学者たちが解釈を述べています。