預言者ムハンマドとサウバーン
今回は、イスラムの預言者ムハンマドとサウバーンの物語をご紹介しましょう。
これまで、人類の歴史の中で実際に起こった出来事についてお話ししてきました。これらの物語は、神が未来の人々の教訓になるように、コーランの中で述べているものです。物語は影響力があり、人間は物語を読んだり聞いたりすることに強い関心を持っています。コーランの物語はテーマが異なり、美しく興味深い形で、人間に生きる上でのメッセージを伝えています。
サウバーンは苛立っているようでした。彼はできるだけ早く、仕事を終わらせようとしていましたが、なかなかはかどりませんでした。彼の友人が尋ねました。
「一体どうしたというのだ?」
サウバーンは言いました。
「見ての通り、今日は仕事がたくさんある」
友人は言いました。
「よく考えるんだ。時間をかければ、全て終わるさ」
サウバーンは答えました。
「それは分かっている。でも今日はもう、神の預言者には会いに行けないだろう。私は彼に会うと、苦しみや疲れを癒すことができる。今日、考えていたのだが、もし全ての人の喜びを一箇所にまとめて私にくれたとしても、その日、もし神の預言者に会えなかったら、そのような人々の喜びは私にとって不快なものとなるだろう」
サウバーンの友人が、再び何かを言おうとしましたが、サウバーンは考えに耽りました。彼は何かを口元でささやきながら言いました。
「神よ、私はあなたの預言者を愛しています。彼と離れていることに耐えられません。神よ、私が毎日、預言者に会えるようにしてください」
太陽が、次第にその金色の光りを広げ、路地では人々が行き交い、活気に溢れていました。サウバーンは、深く考えこむような、不安そうな面持ちで家から仕事場に向かおうとしていました。彼は家を出てすぐに、神の預言者ムハンマドに出会いました。サウバーンはうれしくなって預言者に近づいていき、彼に挨拶をしました。預言者はサウバーンに言いました。
「ずいぶん前から、あなたはいつも悲しそうにしている。一体、何がそんなにあなたを苦しめているのだろうか?」
サウバーンは言いました。
「神の預言者よ、私はあなたに少しの間でも会うことができないと、もう二度と、あなたには会えないのかもしれないと感じます。今日もいつもと同じように、最後の審判の翌日から、どうやって、あなたとの別れに耐えようかと考えていたのです。私はたとえ楽園の人間になったとしても、あなたほどの地位にはありません。だからきっと、あなたに会うことはできなくなるでしょう」
預言者は何も言いませんでした。サウバーンは、目に涙を浮かべていたため、全てのものが暗く曖昧に見えました。そして預言者が何も言わないので、さらに続けました。
「預言者よ、私がもし、楽園の人間になれなければ、私の運命はもう完全に明らかです。いずれにせよ、私はあなたの仲間にはなれないでしょう。そのために、私はこんなに悲しんでいるのです」
そう言い終わると、サウバーンは口をつぐみ、ただ涙を流しました。預言者は、そんなサウバーンを見つめ、なおも言葉を発しませんでした。そのとき突然、預言者の表情が変わり、神の啓示が彼に下されたときの状態になりました。サウバーンは待ちきれない様子で、神がどんな重要な事柄を、偉大なる預言者に啓示したのかを知ろうとしていました。少しすると、預言者は普通の状態に戻りました。そして、サウバーンの肩に手を載せ、言いました。
「今、天使が、神のメッセージを持って私のもとに降りた。主の言葉を聞いてみたいか?」
サウバーンは尋ねました。
「もちろんです。神は、あなたに会うことについて、何と言ったのでしょうか?」
預言者は微笑みを浮かべたまま、うなずきました。それから、神の心にしみる節をつぶやきました。
「神と預言者に従う者たち、彼らは神の恩恵に授かる預言者や誠実な人々、殉教者や善良な人々の仲間となるだろう。彼らは何とよい仲間であろう」
サヴバーンは興奮した様子で、両手を天に向かって掲げ、ゆっくりと言いました。
「神よ、あなたに感謝します」
そのとき、預言者ムハンマドは、サウバーンに言いました。
「神に誓って。自分よりも、両親よりも、親戚の誰よりも、私を愛し、私の言葉に従うとき、イスラム教徒の信仰は完全なもの