7月 30, 2018 17:44 Asia/Tokyo

クネセトと呼ばれるシオニスト政権の議会は、新たな法案を可決し、パレスチナの占領地をユダヤ国家とすることで、パレスチナ被占領地におけるユダヤ人の優位性確立に向けた、新たな行動を取りました。この可決された法案は、最も人種差別的な法となっています。

このユダヤ人国家に関する人種差別的な法によれば、イスラエルは今後、ユダヤ人国家であり、ユダヤ人の祖国とされるということです。占領地全土におけるユダヤ人入植地の拡大が正式な法律となり、ベイトルモガッダス・エルサレムは西も東もシオニスト政権が所有する土地で、ベイトルモガッダスも正式な首都とされています。

また、ヘブライ語は、公用語とされ、アラビア語は削除、英語が第二言語に定められました。今後2年以内に、占領地各地で、そして教育機関、政府機関の公的文書でも、アラビア語は削除されることになるのです。

 

法案の可決後、シオニスト政権のネタニヤフ首相と議員の記念写真撮影

 

 

ベイトルモガッダス東部は1967年の第3次中東戦争の中で、シオニスト政権に占領されました。オスロ合意では、ベイトルモガッダス東部は、シオニスト政権とパレスチナ自治政府の間の和平協定の締結により、パレスチナ自治政府の首都とされました。パレスチナの被占領地では、200万人のアラブ人が生活していますが、これは被占領地の人口900万人のうちの17%に当たります。議会で可決された法によれば、アラビア語を第2言語として正式に認めないだけでなく、占領地に住むパレスチナ人はユダヤ人と同等の権利を持たないことになります。確かに、現在においても、占領地に住むアラブ系のパレスチナ人は、ユダヤ人と同等の権利を持っていません。

シオニスト政権の政府関係者は、現在まで、自分たちは中東で最も民主的な政権だと主張してきました。しかし、このユダヤ人国家に関する法案が可決されたことで、シオニスト政権の人種差別的な本質にわずかでも疑いを持つ人にとっては、この政権が、30年前の南アフリカのアパルトヘイト政権と同等の唯一の政権であることが明らかになりました。

 

 

この法案の可決は、大きな反響を呼びました。この法案は過半数で可決されたのです。

シオニスト政権のネタニヤフ首相によるこの法案に対して、120人中55人の議員がこれに反対しました。この法案に一部のユダヤ人が反対したことは、この法案の実施がシオニスト政権どれほどの損害をもたらすか、ということを示しています。

ネタニヤフ首相は、地域の不安定な状況とアメリカのトランプ大統領の全面的な支持により、シオニストによる占領プロセスと、ベイトルモガッダス首都宣言、ユダヤ人入植地の建設継続を合法だとしています。

サウジアラビアやアラブ首長国連邦など、一部のアラブ諸国の政府がシオニスト政権と緊密になっていることは、ユダヤ人国家の法案可決に向けたネタニヤフ首相の行動の理由と見ることができます。しかし、多くのユダヤ人は、このように考えていません。

このシオニスト政権議会でユダヤ人国家に関する法案が可決された後、アラブ人などのユダヤ人以外の議員は、この法案が書かれた紙を破りました。

シオニスト連合に属する議員はこの法案を批判する中で、これは他者を嫌悪する低俗なナショナリズムであるとしました。

ユダヤ機関のヘルツォグ新代表は、この法案の可決に懸念を示し、疑問となるべきはこの法律がイスラエルを強くするか、それとも損害を蒙ることになるかという点だと語りました。イスラエルのある活動団体も、この法案の可決に反対し、議会の建物に上がり、黒い旗を掲げました。

アメリカのシオニストロビー、Jストリートの創設者、ジェレミー・ベンアミ会長も、このような法案を可決させたネタニヤフ内閣を強く批判し、この法律は犯罪を生み出すと語りました。さらに、アメリカ最大のユダヤ人団体、URJ・ユダヤ主義改革連合のリーダーを務めるリック・ジェイコブズ氏は「この日はイスラエルの民主主義にとって悲しみの日だ。この法律は必要ない」と語りました。

 

シオニスト政権議会でのアラブ人議員の抗議

 

 

ユダヤ人国家に関する法案の可決は、この数十年間にわたる、パレスチナの被占領地に2つの政府を作るための下地作りを中心とした、すべての和平協議に反していました。ネタニヤフ首相は、先月、次のような発表を行いました。

「パレスチナ人は独立国家を樹立することはできず、ヨルダン政府とともにヨルダン・パレスチナ連合国を作るべきだ」

この法案の可決は、シオニストとの和解という解決法は、パレスチナにとって時間の無駄でしかなく、際限なく侵略を行うシオニストに対応する上での正しい解決法は、抵抗だということを再度示しました。

この法案の可決により、トランプ大統領による「世紀の取引」計画の一部が明らかになりました。この計画は、これまでの和平計画を脇に追いやり、すべてのシオニスト政権の侵略行為を認可し、2つの政府という案を取り消しにするものなのです。

この「世紀の取引」計画で明らかなことは、パレスチナ領土でユダヤ政権のみが存在することです。ユダヤ人国家に関する可決法案の一部の条項には、次のようにあります。

「体制はユダヤ国家の子息イスラエル市民の安全・健康を維持する義務を負う。ユダヤ人、あるいはイスラエル市民という理由で問題が生じた場合、体制は国外でも、ユダヤ人国民の子孫と国の関係を維持するために措置を行う。体制は国外に住むユダヤ人の文化、歴史、宗教上の遺産を守るために措置を行う」

この条項を解釈すると、シオニストはパレスチナ的アイデンティティの消滅を追求するという意味になりますが、これは「世紀の取引」のためのトランプ大統領の計画のひとつだとみなされるのです。

 

 

実際、シオニストはユダヤ人国家に関する法案の可決により、すべての民主的な解決法の道を閉ざそうとしています。パレスチナ危機を解決するうえで、イランが提案した方法とは、住民投票であり、パレスチナの今後を、パレスチナ内部のパレスチナ人、パレスチナ人難民、国外に住むパレスチナ人、ユダヤ教徒、キリスト教徒を含む全てのパレスチナ人によって決める方法です。

このユダヤ人国家に関する法律は、ユダヤの偽りのアイデンティティに基づいた人口、歴史、文明の変化を加速するためのものです。イスラムの聖なる場所、特にベイトルモガッダスとそこにあるアクサーモスクは、その変化の最優先とされることになります。

パレスチナ危機を解決するためのトランプ政権のアプローチにおいて、パレスチナ側は存在せず、アラブ諸国の政権がその代わりとされています。この法は、パレスチナのアイデンティティをアメリカの計画の中で削除しているのです。実質的に、オスロ合意は終わっているのです。

このユダヤ人国家に関する法律は、パレスチナの人々をアイデンティティの存在しない人々だとして、再びパレスチナ人の難民化の下地を整えています。またこれは、パレスチナ難民の祖国帰還の権利の問題における、最も重大な障害とされています。この問題は、国連決議194においても強調されているのです。

トランプ大統領就任後のアメリカの行動は、国連やユネスコ、人権理事会、安全保障理事会といったその付属の国際機関の権威を失墜させる中でのものであり、またこの法案可決の下地作りだとみなされます。

パレスチナ人とイスラム諸国は、ネタニヤフ首相の人種差別的な政権の行動を座視することはありません。この数年間におけるネタニヤフ首相の行動や、シオニスト政権の侵略的な政策により、数十年間シオニスト政権を大いに支援してきたヨーロッパ諸国は、現在この政権を批判する国となっています。

ヨーロッパ諸国は、過去のようにシオニスト政権の占領を黙認していません。これらの国は、シオニスト政権が危機的状況を作り出すことで、安全保障に関してヨーロッパにどのような結果をもたらすかについて理解しています。このため、過去のように、一方的にシオニスト政権の行動を擁護していません。

このヨーロッパ諸国のアプローチは、パレスチナ人やイスラム諸国にとって、シオニスト政権の人種差別的な本質を国際、政治、メディアレベルで明らかにする上で利用すべき機会です。このため、シオニスト政権に対する抵抗は、世界の人々から見ればより合法的であるとされ、またこの抵抗が続くという展望を示しているのです。