9月 11, 2018 20:44 Asia/Tokyo
  • 結婚すること
    結婚すること

今回も、家族や結婚にまつわる話題をお届けしてまいりましょう。

ペルシャ文学、そしてイランの偉大な作家や詩人たちの作品においては、家族の重要性が特に注目されています。10世紀から11世紀にかけて活躍した、イランの英雄叙事詩人フェルドウスィーは、人間社会とその永続性は、優しさや愛情、人生のパートナーの選択と純朴な家庭の形成、中庸で上品な生活を楽しむことにかかっているとして、夫婦関係について、賢明な形で提起し、検討しています。

ベルギーの劇作家メーテルリンクは、次のように述べています。

「人生が楽しめるものとなるのは、小さな愛情や楽しみがある時である。そして、まさにこうした小さな事柄が、私たちを生活へとつなぎとめることになる」

 

現代のイラン人家庭における特徴の1つは、一家の重要な柱としての男性の位置づけが変化したことだと言えます。女性の自宅外就労、さらには消費のモデルが変化したこともあいまって、女性も財産の所有に大きなシェアを有し、またそれに伴ってある程度の決定権を持つようになっています。

現代のイラン人家庭においては、男性の領分と女性の領分が互いに接近しつつあります。女性の思想や考え方も、男性のそれに近づいており、家庭内の雰囲気にも影響を与えています。

家庭内におけるこうした変化の影響に関して、ここでイランの社会学者サッジャード・オジャーグルー博士の話をお届けする事にいたしましょう。オジャーグルー博士は、イランにおける家庭の価値観の変化について研究しており、次のように述べています。

「社会習慣の体制や価値観の変化、都市型生活の拡大に伴い、男女関係における制限は減少した。そして、このことは行動モデルや、結婚をはじめとする社会習慣、そして家庭に関する価値観に影響を及ぼしている。今や、イラン人の家庭や社会のレベルで目覚しい変化が発生しており、それに伴ってイラン人家庭の価値観にも変化を及ぼしており、これはイラン人女性の位置づけや役割の変化でもある」

「現代の世界の変化の影響により、家庭や社会組織における女性の役割も著しく変化している。女性たちの間に新たな価値観や考え方が生じたことにより、家庭であれ社会であれ、女性自身に変化が起こっている」

 

Image Caption

 

オジャーグルー博士はまた、この10年間における、イラン社会の家庭や結婚に関する価値観の変化のもっとも大きな根源となったのは、おそらく女性であると強調しています。女性の就労という役割の変化は、生活における社会的、文化的な資本の獲得とみなされ、それにより「男性は家計を支え、女性は家事をする」というそれまでの既成概念に変化が生じ、女性たちが新たなアイデンティティを見出しています。この新たなアイデンティティにより、それまでとは違った新たな価値観が生まれているのです。オジャーグルー博士は次のように語りました。

「これらの変化としては、マス・メディアの拡大や生活様式の変化、そして情報の氾濫に伴う女性の学歴や意識の向上が挙げられる。今日、イランの女性たちは、過去のどの時代よりも、大学などの高等教育機関への入学により、文化的な財産を増やしている。このことにより、低年齢での結婚が少なくなるといった変化が起きている。しかし、ここで重要な点は、イラン人女性の間における社会的な変化の要因が西側世界のそれとは異なるということである。注目すべき事は、イランでは女性たちが世界規模での変化に習うことなく、意識が向上したにもかかわらず、依然として結婚して家庭を築き、妻や母親になることを最優先にすえていることである」

イランの社会学者、オジャーグルー博士はまた、次のように述べています。

「確かに、イランにおいて社会や家庭が新たな様相を見せていることは、イランが現代の世界の影響を受け、現代世界のイデオロギーが現代の建築や都市建設、新たな社会組織や生産工場、さらには食生活や服飾のモデルといった現象や事物が社会に急速に浸透し、社会の様相を変化させた結果である。現代のイラン社会は表面的には、過去の社会とは完全に異なっているように思われる。しかし、実際には、イランのような社会は、現代的な社会に完全に一致しているわけでも、また過去の社会と完全に異なっているわけでもない。イランのような社会は、過去の伝統的な要素を維持しながら、外の世界から入ってきた新しい要素をも受容している。このことから、イラン人家庭がたどった変遷のプロセスは、1つのルートではなく、いわば現代的な要素と伝統の融合だといえる」

オジャーグルー博士によれば、結婚を重視する価値観に対し、国際化の影響は逆効果としてのマイナス影響をもたらし、一方で、宗教を持つことは直接的なプラスの効果をもたらしており、インターネットや衛星放送などを使用するといった、国際化の影響をより多く受けている人々の間では、適齢期になったら結婚すべきであるという価値観が薄れてきているとされています。

 

今日、イランを初めとする各国でも、多くの人々が国際化の流れによるこうした圧迫感を感じています。世界各地において、家庭生活の基盤を作る要素としての結婚はその役割を失いつつあり、法律が改正されて、離婚がしやすくなっています。

教育や大学、就労の場への女性の進出により、男女の役割分担が変化していますが、逆に宗教を持つ傾向が高まることで、結婚を重視する価値観が強まり、宗教を持つ人々は、結婚すべきだとする価値観の度合いが高くなっています。これについて、オジャーグルー博士は次のように述べています。

 

結婚すること

 

「イランやエジプト、マレーシアといった国々における結婚の動向、そして結婚や家族に対する捉え方は、特にイスラムの教えをはじめとする文化的な要素が、家庭志向や家庭の形成に重要な役割を果たしていることを示している」

 

それでは、ここで、ミーナーというあるイラン人女性を例にとり、彼女自身とその家庭生活についてお話することにいたしましょう。

ミーナーは、伝統的な大人数の家族で育ち、多くの知識や、自分にとって効果的で有意義な事柄を身につけるために全力を注いできました。彼女は、世界の現状を理解し、学問の分野で成功を収め、しかるべき地位を獲得しましたが、決して個人主義や自分中心主義には走りたくないと考えています。彼女は、喜びにあふれた家庭において、時代や生活環境、物事の枠組み、生活水準や技術、表面的、物的な様相などが変化しても、モラルや精神的な価値観は変化しない、ということをよく理解しています。今、彼女は結婚し、精神的な成熟にとって家庭が重要であることを把握しています。ミーナーは、グローバル化に迎合することのなかったイラン人女性の見本だといえます。

 

それでは、今夜の番組の締めくくりとして、夫婦関係について少々触れることにしましょう。

優しさは、安らぎの基盤であり、困難を伴う実生活における助け舟のようなものです。この舵を取るのは、優れたスキルを持つ女性です。それは、女性は生活に平穏と安らぎをもたらす、という使命を担っているからです。これについて、イスラムの伝承・ハディースには次のように述べられています。

“崇高なる神は、妻を夫にとっての安らぎと平穏の源になる存在としており、彼女は神からの大きな恩恵である”

一方、夫も妻にとって力強く、安心できるより所であり、家庭での夫の優しさや忠誠心により、家庭の基盤が強化され、より持続性あるものとなります。男性に対しては、家庭内で神の恩恵を大切にし、家族に良好に振る舞い、優しくあることが求められています。それは、妻である女性が安らぎと平穏の基盤であり、男性にはこれを享受する権利があるからです。

夫婦が互いに愛し合っている事をあらわす表現を口にすることは、疑いや誤解の多くを解消する上で効果的であり、夫婦間の愛情を高めることになります。宗教の偉人たちも、自らの配偶者に対する愛情を表現するよう強調しており、多くの場合においてこれを言動により実践しているケースが見受けられます。

たとえば、神の預言者は、これについて次のように述べています。

 “わが共同体において最高の男性とは、家族に対し傲慢に接したり、怒りをあらわにせず、彼らに慈愛と愛撫をもって振る舞い、そして、家族を苦しめない人々である”

次回もどうぞ、お楽しみに。

 

 

ラジオ日本語のフェイスブックもご覧ください。

https://www.facebook.com/ParsTodayJapanese