紅茶を飲むイラン人の習慣
今回は、チャイと呼ばれる紅茶をたしなむイラン人の習慣、伝統的な喫茶店についてお話しすることにいたしましょう。
イラン人の間でよく飲まれる飲み物の一つが、チャイ、紅茶です。実際、イラン人の風俗習慣の一つに、チャイで客人を持て成すということがあります。イランの変動する社会において時間の経過と共に、多くの伝統が変化しているにもかかわらず、今もイランの多くの家庭では、ティーポットがサモワールの上に載せられ、そのサモワールの周りに家族が集まって団欒しています。
チャイはイラン人の間で広く飲まれています。イラン人の文化にはチャイに関連する言葉がいくつもあることから、この飲み物がイラン人の生活に深く浸透していることがわかるでしょう。
イラン人はかつて、現在とは異なり、コーヒーを飲んでいました。イランの町のあちこちにはガハヴェハーネと呼ばれるコーヒーを飲む店がありました。イラン初のガハヴェハーネは、サファヴィー朝時代、おそらくタフマーセブ王の治世に、ガズヴィーンの町に現れ、その後シャーアッバース1世の時代に、イスファハーンで広まりました。
ガハヴェハーネのガハヴェはコーヒー、ハーネは家を意味し、ガハヴェハーネは文字通り最初、コーヒーを飲む場所でしたが、イランにチャイが入ってきて、北部の地域でこれが栽培されるようになり、人々に受け入れられるようになると、少しずつガハヴェハーネでチャイがコーヒーに取って代わるにようになりました。19世紀の後半から、ガハヴェハーネでチャイが飲まれるようになりました。実際ガハヴェハーネはチャイハーネに変わりましたが、その古い名前がしばらくの間維持されていました。
ガハヴェハーネは400年の歴史の中で、当時の社会や経済状況に沿って、様々な役割を果たしていました。かつて、イランの町や道の途中、住宅地で経営されていました。町の中で開かれていたガハヴェハーネは余暇を過ごすための、町の最も人気のある公共の集まり場でした。とくに産業労働者や職人たちのグループがそこに行きました。次第にガハヴェハーネは特定の同業者階層のものとなり、職人や労働者、芸術家など様々なグループの社会的な場所となりました。この当時、ガハヴェハーネでは、ギルドの形での社会活動の場として、特別な文化・社会的な活動が行われていました。
様々な階層、グループの人々は一日の仕事が終わった後、ガハヴェハーネに集まって余暇を過ごし、社会や経済、政治問題に関する意見交換や話し合いを行っていました。一部のガハヴェハーネでは、職業や同業組合の問題が提示され、仕事を見つけたり、その準備をするための場所となっていました。。人々はここで開かれる会議で、家族や地域、物質的な問題を取り上げ、解決していました。
ガハヴェハーネの夜の集会、とくに悲歌が歌われたり、物語が語られるラマザーン月の夜の集会では、通常、多くの人々が集まり、友好的、文化的、文学的な雰囲気の中、互いに関係をつなぎます。このようにガハヴェハーネは、社会的、文化的中心として現れ、文学や芸術の才能を育て、民衆に伝統文化や文学の教育を行うための場所となりました。
ガハヴェハーネでは二つの重要な流れ、物語を語る口承芸術と絵画などの具象芸術が発達し、この芸術のそれぞれが、偉大な芸術家を育てました。ガハヴェハーネでの物語や絵画は繁栄し、文学や芸術の才能が開花しました。物語の語り手は英雄物語を語ることで、また画家はそうした物語の英雄たちや歴史的な出来事を絵画に描くことで、また詩人たちは詩を読む集会を催すことで、人々にイランの文化遺産や文学を伝える上で重要な役割を担っていました。このようにガハヴェハーネはイラン社会や人々の間でこうした記憶を継続させることに成功しました。
しかしながら、時間の経過と共に、イランの先人たちの文化や芸術の成果、伝統文化の普及の中心であったガハヴェハーネは、昔からの伝統と自らの文化的な繋がりを絶ってしまい、こうした古い文化や芸術を継承する人々がこの場所から姿を消してしまいました。結果として、ガハヴェハーネは次第にチャイを飲んだり、朝食や昼食を食べたり、休息したりする場所となりました。ガハヴェハーネは、チャイハーネとして、道の途中に置かれ、旅行者が休息したり、疲れをいたしたりする場所となりました。
イスラム革命勝利後、文化遺産を保護するために、ここ数年、一部の伝統的な喫茶店が復活しています。そして常にこの場所は文化的、芸術的な魅力を備えたものであるよう努力が注がれています。このことからこれらの建物の伝統的な建築は、時代の状況に応じて再建させており、家族が使用するのに適した空間に整えられています。
今日、国内外の旅行者は、伝統的な喫茶店を訪れることで、イラン独自の風俗習慣、衣装、料理、伝統的な職人の道具、絵画、シャーナーメなど英雄物語の語り、イラン・イスラム伝統建築などを一度に垣間見、経験することができるでしょう。この例として、テヘラン北部にある伝統的な喫茶店アミールキャビールを挙げることができます。アミールキャビールは、ガージャール朝の有名な政治家の名前です。建物は漆喰の天井に、レンガ細工の壁、ガージャール朝時代の柱が見られます。この喫茶店の給仕はガージャール朝時代の衣装を着て、イランの伝統料理や3つの味の紅茶、そして茶菓子で客をもてなします。この喫茶店ではイスラム暦のモハッラム月とサファル月に、殉教物語の語りが行われ、この期間、客を無料でもてなします。
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