ロル族の結婚式
今回はイランのロル族の結婚式についてお話しいたしましょう。
これまで、イランの主な民族であるロル族をご紹介しました。ロル族はイラン最大の最も古い民族の一つで、西部と南西部の山岳地帯で昔から暮らしています。さらに、ロル族の一派であるバフティヤーリー族は、イラン最大の遊牧民族の一つです。この民族は主に二つのグループから構成されており、チャハールマハールバフティヤーリー、イスファハーン、ロレスターン、フーゼスターン州の一部で暮らしています。今夜の番組ではロル族の結婚式についてお話しましょう。
求婚、婚約、結婚の儀式は、各地の社会や文化、経済状況に注目すると異なっています。ロルの様々な部族の中で、男女が夫婦となる契約は通常、様々な部族の中の良好な社会関係を樹立し、親愛関係の下地を作るものと見なされています。都市に住むロル族の間の結婚式は今日、都市の影響を受けて変化していますが、村に住むロル族の間では依然として古い慣習が広まっています。
結婚の第1段階は、求婚の儀式です。ある家庭の娘を息子の嫁にもらおうと決めた家族は、娘の家族にそれを伝えます。娘の家族からその用意が示されると、話し合いのための日時を設定します。期日に男性の家族は皆で女性の家族の家に向かいます。最初の話し合いの後、男性の家族のうちの一人が女性の父親に対してその目的を告げ、結婚を要請します。女性の家族もその意志を告げます。そして男性の近親者の一人、とくに弟が立ち上がり、女性の父と家族の年長者の手にキスをします。そのあと結婚資金などに関しての話し合いを開始します。中でもシールバハーと呼ばれるものは、男性の家族から女性の家族に支払われるもので、女性の家族はその一部を嫁入り道具の購入に使います。
バフティヤーリー族の間で、男性の家族がその財力に従って、シールバハーを用意するのは慣習となっています。この慣習は、多くの肯定的な側面を持っています。この協力は相互のものであることから、男性は自分を卑下することはありません。婚資で合意した後、結婚式の買い物のための日程が決められます。買い物は両家の女性たちによって行われます。結婚指輪やいくらかの装飾品、衣装が、この買い物のリストに必ず入っているものです。
男性は状況に応じて、同伴の女性たちに、ある場合は自分の母親と新婦の母親のために、贈り物を用意します。この儀式が終わると、一般に婚約の日を祝日や週末にあわせて設定します。婚約の儀式は通常、女性の父親の家で行われ、その資金はすべて男性が負担します。婚約の後、結婚式の日が決められます。結婚式の費用はすべて男性が負担し、新郎は客人を持てなすだけでなく、新婦の家族の客人に振舞う夕食の費用も負担する義務があります。
結婚式の夜、新郎の家族と親戚は、夕食を取った後、彼と共に花嫁の家に向かい、女性の父親の許可を得た後、彼女を花婿の家へと連れて行きます。一部の村では今も花嫁を馬に乗せて花婿の家に連れて行きます。村の結婚式は、村々が散在し、距離が離れているため、通常数日間行われます。正式なもてなしの料理は主に子羊肉を添えた米料理です。
ロレスターンの村では、客人を持て成した後、何人かが中に砂糖菓子をつめた絹の小さなハンカチを並べたお盆を持って、儀式に参加します。彼らは預言者とその一門を称える言葉を唱え、その後お盆を最も重要な人物の前に運びます。その人は包みの一つを受け取ると、財力に応じて金銭をそのお盆に載せます。お盆は順に人々の前に回ってきます。これが終わると、祝辞が述べられ、宗教的な祈祷で儀式を終えます。
この儀式は、各都市で「パータフティー」という名前で行われ、結婚式の翌日、すべての招待客が新郎の家に集まり、新郎新婦に金銭や物品の贈り物をします。結婚式の数日後、まず初めに新婦の家族、次に新郎の家族、その後に両家の親戚を夕食に招待し、宴が終わると新郎新婦には贈り物が贈られます。この宴は、パーゴシャーと呼ばれ、結婚式の後初めて行われるものであり、両家の親族が互いに知り合うことが目的です。パーゴシャーの慣習はイランの多くの地域で行われています。
ロル族が住んでいる多くの地域で、とくにアリーグーダルズ地域で、結婚式はロルの音楽と地元の歌や踊りと共に行われます。結婚式の余興の最も有名なものの一つに、棒競技があります。この遊びはチャンバラに似た競技です。バフティヤーリー族の間では、馬に乗って、矢を放ったり、地面から物を取ったりする競技なども行われます。
バフティヤーリー族の優れた伝統の中に、常に新郎が新婦の家族や親族に敬意を表するというものがあります。新郎は放牧など、年間の遊牧民の作業の時期に、配偶者の家族を助け、自らが老いるときまで、彼らのために貢献するのが義務と見なされています。この新郎の継続的な協力は、バフティヤーリー族の社会の文化の一部であり、男性は自発的にこの作業に取り組みます。新郎に加えて、両家の親族はこの結婚によって一種の連帯感を見出し、たとえ派閥が違っても幅広い協力が生み出されます。部族の対立の多くの原因が解消され、連帯の下地と他者の未来への関心が生み出されるのです。
ロル族の間では結婚式は喜びを伴い、すべての人の祝福を受けます。このため離婚は好ましいこととはされておらず、嫌悪が示されます。このことから彼らの間ではほとんど離婚は見られません。
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