11月 26, 2019 13:54 Asia/Tokyo
  • ソフラヴァルディー
    ソフラヴァルディー

今回も、前回に引き続き、12世紀のイランの名高い神秘主義哲学者、照明哲学の父とも称されるシャハーボッディーン・ソフラヴァルディーと、その業績や作品についてご紹介してまいります。

これまでにお話したとおり、照明哲学者ソフラヴァルディーはテヘランの西方にある、現在のザンジャーン州近郊の村でこの世に生を受けました。彼の出生年は1150年から1155年ごろとされ、また1191年に当時のシリア・アレッポのイスラム法学者の陰謀とアイユーブ朝サラジンの命により、1191年に38歳で暗殺されたと言われています。彼は、短くも充実したその生涯において、数多くの作品を残しており、それらのうち最も重要なものには、『照明哲学』、『光の書』、『支えの啓典』などがあります。これらの作品の一部は、ペルシャ語で執筆されており、また中にはアラビア語で執筆されたものもあります。

ソフラヴァルディーは、流れ星のようにイランの哲学や神秘主義の世界に輝き、イスラム教徒の思想に永遠の影響を残してこの世を去りました。イスラム世界のこの英才は、短い生涯ながらもペルシャ語やアラビア語により、50を超える著作を残しています。彼は、散文形式によるアラビア文学の研究者の間ではしっかりしていると同時に魅力的であると評されており、またペルシャ語による彼の作品はペルシャ文学の傑作とされ、哲学や神秘主義的な物語の散文の模範とされています。

ソフラヴァルディーの編纂した作品は、多様性に富み、躍動感に満ちているとともに、そのテーマの説明や解釈はごく哲学的なもので、奥深い神秘主義的な伝承を伴った物語のみを扱っています。また、彼の作品はアリストテレス学派、神秘主義、照明哲学といったそれぞれ異なるスタイルで執筆されています。この数十年間において、ソフラヴァルディーの作品の多くはイラン人学者のセイエドホセイン・ナスル博士、フランスの哲学者アンリ・コルバンにより一般に紹介されています。しかし、まだ数多くの作品は出版されないまま残っており、そうした作品には自然科学や数学、論理学に関して編纂されたものがあります。

フランスの哲学者アンリ・コルバンは、ペルシャ語によるソフラヴァルディーの作品の多くを翻訳しており、『照明哲学』の全訳を完成させた他、照明哲学に対するゴトボッディーン・シーラーズィーやモッラーサドラーの説明を翻訳し、ソフラヴァルディーの思想を研究する人々にとって有益な資料の多くを生み出しています。1944年生まれのオリエント学者サックストンも、ペルシャ語によるソフラヴァルディーの神秘主義関連の論文を翻訳しています。

ソフラヴァルディーの作品は、いくつかの種類に分類されています。まず、20世紀のフランスのイスラム学者ルイ・マシニョンがソフラヴァルディーの作品を、編纂された時代ごとに3つに分類しました。第1の部類には、ソフラヴァルディーが活動を始めた青年時代の作品が含まれ、第2の部類に属するのはアリストテレス学派の編纂物、そして3つ目の部類はルイ・マシニョンから見て、中世イランの哲学者イブン・スィーナーや、新プラトン主義の創始者プロティノスの思想が融合されていると見られる作品です。

ルイ・マシニョンの後には、アンリ・コルバンがソフラヴァルディーの作品を4つに分類しました。この2人のフランス人学者に次いで、イラン人学者のセイエドホセイン・ナスル博士がごくわずかな変更を加え、ソフラヴァルディーの作品をその構造の点から5種類に分類しています。ソフラヴァルディーの作品やそれらに加えられていた付録や説明の詳細な研究、さらには、ソフラヴァルディーの見解や照明哲学に関する研究の結果、この偉大な哲学者の作品は6つに分類することができます。

 

第1の部類に属する作品は、ソフラヴァルディーの照明哲学の信条を説明したものです。この部類に属するのは、彼のそのほかのいずれの作品とも異なる『照明哲学』という作品のみであり、照明哲学の最初の基盤といえるものです。彼は、この著作において自らの打ち立てた照明哲学という学派の真の様相を提示しています。

2つ目の部類に属するのは、ソフラヴァルディーの学説的、教育的な4つの著作であり、これらは全てアラビア語で執筆されています。これらの作品においてはまず、アリストテレス哲学がソフラヴァルディーの独自の解釈により説明されており、次に照明哲学が検討されています。これらの作品はいずれも、論理、自然、神学の3つの部分で構成されています。

3つ目の部類に属するのは、ペルシャ語やアラビア語による比較的短めの論文です。これらの論文においては、ソフラヴァルディーの著作『照明哲学』をはじめとする5つの彼の著作が平易な言葉で要約的に説明されています。この部類の作品には、アラビア語で書かれた2つの論文が該当し、それらはまたソフラヴァルディー自身によりペルシャ語に翻訳されています。また、この部類に属する論文には、アラビア語による『哲学的な信条において』、そしてペルシャ語による『心の庭園』もあります。『心の庭園』については一部の学者の見解では異論が存在しますが、有力な学者の間では確かにソフラヴァルディーのものであると見なされています。

4つ目の部類に属するのは、自分自身の内面を巡る旅、そして悟りを開くことや幸福について述べられている神秘的な物語です。これらの多くは、ペルシャ語で執筆されており、その一部には『灼熱の知性』、『伝説のフェニックスの口笛』、『神秘主義者の集まりとともにある日』などがあり、このほかにもまだ出版されていない論文である『天界への旅立ちにおいて』があります。

5つ目の部類に属する作品には、それ以前の哲学書の翻訳や解釈、説明、さらにはコーランやイスラムの預言者一門の伝承について書かれた著作が該当します。これには、コーランのいくつかの節や預言者ムハンマドの伝承の一部を解説した作品が含まれますが、それらはまだ出版されていません。さらに、この部類にはイブン・スィーナーの論文のペルシャ語への翻訳が含まれるほか、『愛の真実』という論文もあります。

 

そして、ソフラヴァルディーの作品の6つ目の部類とされるのは、アラビア語によるいくつもの祈祷の書ですが、残念ながらこれらの作品はまだ出版されていません。ソフラヴァルディーの作品の執筆された時期を特定することは、極めて難しいとされています。

 

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