イランの名声、世界的な栄誉
モウラーナー・ホセイン・ヴァーエズ・カーシェフィー(8)
今回も引き続き、15世紀のイランの学者ヴァーエズ・カーシェフィーについてお話しましょう。
ヴァーエズ・カーシェフィーことキャマーロッディーン・ホセイン・サブゼヴァーリーが、ティムール朝時代の宗教学者、天文学者、コーラン解釈者、数学者で、影響力ある説教師だったことは、これまでお話してきました。彼は初等教育を故郷のサブゼヴァールで終えた後、マシュハドとヘラートに赴きました。
カーシェフィーは長年、宣教活動に従事し、ティムール朝の王、ホセイン・バイカラとその大臣、アリーシール・ナヴァーイーの時代、名誉ある職であるヘラートの説教師となりました。また彼は多くの文学作品を記しました。
カーシェフィーが記した『ソヘイリーの光』は、古いインドの説話『ケリレとデムネ』を新たに、そして簡潔かつ流麗に記した本です。なお、12世紀のガズナ朝時代、アボルマアーリー・ナスロッラーはガズナ朝の王バフラームの勧めで、『ケリレとデムネ』をアラビア語からペルシャ語に訳しました。
この『ソヘイリーの光』はインド一帯やアフガニスタンで大きな注目を集め、後にインド人やアフガニスタン人のペルシャ語教育に使われました。この本はインドやアフガニスタンにおける各言語に、そしてヨーロッパ諸語に翻訳され、出版され、こうして世界的な名声を得ました。
カーシェフィーは、『ケリレとデムネ』の飾り立てられた文体が、この作品を浄化する上での主な動機になったとしています。カーシェフィーの観点では、このような散文作品は読者が退屈する要因であり、読者がこの作品を役立てるよう、この作品が捨てられないよう、ソヘイリーとして知られていたアミール・シェイフ・アフマドの指示により、この本を『ケリレとデムネ』をベースとして記しました。
カーシェフィーはこの中で、『ケリレとデムネ』とされていた作品を大幅に修正しました。200年ほど前のフランスの東洋学者ド・サシによれば、この修正の中で、2つの事柄が重要だということです。ひとつはタイトルの変更で、それまでの翻訳者が『ケリレとデムネ』というタイトルを変更したことはありませんでした。もうひとつはカーシェフィーは、アラビア語版とペルシャ語版にあった序文を省略したことです。カーシェフィーはこの序文の変わりに、新たな序文を記し、これは完全にカーシェフィー個人に属するものだとしました。
もうひとつは、この本を難しくしていたコーランやハディース、アラビア語の詩を省いたことだとされています。カーシェフィーはこれらの変わりに、サアディーやモウラヴィーやハーフェズなど、当時と近い時代のペルシャ語の詩を活用しました。彼はまた、『ケリレとデムネ』に加えて60の説話を加えました。イラン現代の文学研究家ムハンマドジャアファル・マフジューブ博士は、カーシェフィーによって追加された説話をそれぞれの章で明らかにし、サアディーの『果樹園』、『バラ園』、モウラヴィーの『精神的マスナヴィー』など、それらの原点を挙げています。また『ソヘイリーの光』では、一部の説話は韻文形式で記され、ほかから借用しています。
カーシェフィー自身は、彼の作品により、『ケリレとデムネ』は簡単になったと考えていました。しかし、多くの研究者は、彼がそれによって成功したとはいいがたいと考えています。マフジューブ博士はこの本に二面性があることがこの本の特徴だとしています。
現代イランの優れた研究者であるザビーホッラーサファー教授も、「カーシェフィーは簡潔に書きたいと思っていたが、アボルマアーリーの影響により、それができなかった」としています。しかし、『ソヘイリーの光』の注釈本を書いたモハンマド・ロウシャンは、逆に、これは『ケリレとデムネ』を純粋な形で、簡潔に記した本であり、適切な形で韻文が挿入されていると考えています。
この本がボンベイ、ラクナウ、ハイデラーバードなど、特にインド周辺で何度にもわたり出版・重版され、語学教育のために使用されてきたことは、この散文作品が一般の人々の人気を得ることができたことを示しています。これはおそらく、アラビア語の文章が省略され、有名なペルシャ語詩人の詩が使われたことによるものでしょう。これとともに、一般の人々でもわかりやすい詩や、ペルシャ語圏の人々が『精神的マスナヴィー』など有名な作品を通じて知った多くの説話を入れていることも、大きなの要因となりました。こういった物語の調査から、これらの多くが口承文学として記録されていたことがわかります。
『ソヘイリーの光』では、『ケリレとデムネ』のように、道徳的な原則が動物の言葉による物語という形で語られています。カーシェフィーの『ソヘイリーの光』で重要なのは、初めて15世紀の市井の人々の日常生活が描かれたことです。
カーシェフィーはインドやパキスタンでよく知られています。カーシェフィーの多くの作品がこの地で転写され、彼を愛する人々が、彼の著作を、貴人や学者に対する贈り物としました。
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