ペルシャ語ことわざ散歩(29)「皿のふちにナスを並べる」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用表現、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「皿のふちにナスを並べる」です。
ペルシャ語での読み方は、Baademjaan dour-e qaap chiidanとなります。
この表現は、日本語の慣用句にある「胡麻すり」、こびへつらい、ご機嫌取りに相当するもので、その典拠はガージャール朝の国王・ナーセロッディーンシャーの時代のある現象に遡ります。
当時は、宮廷の役人や大臣、官僚たちがある特定の日に集まって、調理の知識・経験が全くないながらも、調理人のように奉仕するという習慣がありました。彼らの一部に与えられた責務は床に胡坐をかいて座り、大量のナスの皮を剥くことであり、ほかのメンバーは、それらのナスを鍋で煮込み、煮えたナスを手際よく皿に並べていくよう命じられました。これらの「にわか調理人」たちは、ナーセロッディーンシャーが調理場の視察にやって来た際、いかにも真面目な仕事ぶりを見てもらおう、王に気に入ってもらおうと、それはそれは丁寧に規則正しく、きれいにナスを並べて王のご機嫌をとろうとしたとされています。
このことから、ご機嫌取りやへつらい、胡麻すり行為をさす表現として「皿へのナス並べ」が生まれたということです。どうやら、目上の人をはじめとする他人に認められたい、気に入られたいという思いからわざとらしく偽装する、という行動は人間の本性なのでしょうか。古今東西に共通しているようですね。
このように、過去の歴史や社会的事象などから生まれた表現もイランではよく使われています。今後もそうした表現を随時ご紹介してまいります。どうぞ、お楽しみに。
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