ユダヤ人歴史家の著作『イスラエルに関する誤った10の伝説』
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イスラエルの国旗
4年に1度開催されるサッカーワールドカップに世界が沸いている中で、シオニスト政権イスラエルがパレスチナ・ガザ地区で犯罪的な攻撃に手を染める間隙がまた生じました。
聖地ベイトルモガッダス・エルサレムの強奪者たるイスラエルは、世界が注目するイベントなどの機会を常に極悪な目的のために利用し、パレスチナ人を迫害する犯罪を行ってきました。しかし、イスラエルというまやかしの政権のこうした汚い政策は、世界各地のパレスチナの支持者にこの強奪者政権への反発を起こさせているほか、同政権に反対するユダヤ人コミュニティすらも、抗議、反応、シオニストらの手先のような諸政策の暴露といった行動へ駆り立てています。

ここで、歴史家イラン・パッペ(Ilan Pappé) 氏の著した『イスラエルに関する誤った10の伝説(Ten Myths About Israel)』という書籍をご紹介しましょう。
この本の中では、イスラエルに関する事実無根の認識が取り上げられていますが、興味深いのは、著者のパッペ氏がイスラエル人であり、それにもかかわらず、イスラエル政権や子どもさえ殺す同政権の行動に反対している点です。
ユダヤ人歴史家であるパッペ氏はイスラエルについて、捏造された基盤の上に立っており、その歴史も作られたものという認識を示しています。
同氏は自著の1つである『イスラエルに関する誤った10の伝説』において、イスラエルとそのプロパガンダ機関が広めた10の認識が大きな嘘であることを暴露し、その真実を読者に示そうとしました。同氏はその中で、イスラエル外務省がパレスチナにおけるユダヤ人の歴史として公式ウェブサイトに掲載している資料が偽物であり、苦い風刺じみているとして、抑圧されているパレスチナの人々に対して幾度も同情を示し、イスラエルをまやかしの存在かつ犯罪者だとしています。

パッペ氏は、著作の中でまずはじめに、イスラエルというまやかしの存在の基盤とされた10の歴史解釈を示し、続けて、同政権によるこれらの主張を、歴史的な証拠や資料を用いて慎重に調査しました。同氏はこの作業について「本書では、植民地化されて占領・圧制下に置かれたパレスチナ人に対して力の均衡を是正しようと試みた」と述べています。
同氏はまた、自らの著作が、現在パレスチナ領土を占領している非人道的な政権に対して記された、偏りのない、現実を直視した学術的調査の成果だとし、「歴史的事実を書き記すことが、イスラエルとパレスチナにおいて和解と平和が実現する可能性に影響を及ぼすと信じている」と述べ、同書で取り上げられたいくつかの歴史的な虚偽について説明しています。
パレスチナの歴史に関してイスラエル外務省がサイトに記している主要な嘘の1つに、パレスチナのユダヤ人コミュニティが、継続してこの地に住んでいたユダヤ人の子孫、および北アフリカやヨーロッパからの移住者で構成されている、という点が挙げられます。
パッペ氏がパレスチナについて示した事実は、イスラエルによる占領前の同国が、中心部が活気ある場所だったとはいえ住民のほとんどがイスラム教徒かつ農村部居住であったにもかかわらず、繁栄したアラブ社会と認識される状況にあったということです。同氏は、当時のパレスチナが変革と近代化にも道を開いており、シオニズムが入り込むはるか昔から、発展に向けて進み始めていたとしています。つまりパレスチナは、イスラエルにより植民地支配を受ける前に、すでに繁栄した1個の国だったのです。
同氏はこれに関して、「当時、この国にいたユダヤ人の割合はごくわずかだった。さらに注目すべき点は、それらのユダヤ人らが、シオニスト運動が広めようとしていた考えに抵抗したことである」としながら、「パレスチナという名の政府が当時なかったにもかかわらず、パレスチナが文化的立場を手にしていたことは非常に明確であり、この土地への帰属意識による一体感が見られた」と指摘しています。
このように、パレスチナはシオニズムが侵入する以前も、決してイスラエルによる繁栄を待っているような荒野ではありませんでした。パッペ氏は、「パレスチナはこの時点において、概念の上でひとつの国であり、近代的社会として、20世紀を迎える準備を進めていた」と説明しています。
パッペ氏はさらに、シオニスト運動によるこの国の植民地化が、パレスチナの近代化プロセスを失敗に追い込み、同国の人々の生活を悲劇的な状況にしたという認識を示しています。

強奪者たるイスラエルが語っているもう一つの大きな嘘は、自分たちが植民地主義者などではなく、パレスチナの土地がユダヤ人のものであり続けたということです。パッペ氏は自らの著作において、この嘘に反論して次のように記しています:
「シオニズムとは、愛国主義的な類の植民地化行動である。それは、米国・カナダといった北米、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドを植民地化し、これらの地域の先住民を殺害または追放することによって、その土地を自身の祖国にしようと新しい国を作った、当時のヨーロッパ人の行動と同類のものある」
パッペ氏は、いわゆる旧来の植民地主義と愛国主義的な植民地主義との違いを、次のように指摘しています:
「旧来の植民地主義では、例えば大英帝国のような勢力がインドのような国に入り込み、植民地化してその土地と人々から搾取したが、インド人をそこから追い出したり、その土地に自分たちの名前を付けることはなかった。対して、愛国主義的な植民地主義では、入植者は目をつけた地域または国に入り込んでそこから原住民を追い出し、彼らの後釜に座るのである。イスラエルの行動は、まさに後者のパターンであった」
パッペ氏は、アメリカのアラブ現代史第一人者であるラシッド・ハリディ(Rashid Khalidi)氏やイスラエル問題専門家のモハンマド・モスレ(Mohammad Mosleh)氏などが行った研究を参照した上で、最初のシオニスト移民がパレスチナに入った1882年以前から、パレスチナ社会のエリート層・非エリート層はともに、自らの土地にユダヤ人が入り込んで増えていくことに反対していた、と分析しています。

同氏はイスラエル人ながら、抑圧されたパレスチナ人に対してイスラエルが行う悪意ある諸政策を強く批判しており、パレスチナ人への圧制を受け入れていません。また、ユダヤ人のために設けられた「帰還法」と、この点におけるパレスチナ人との差別も批判し、自らの著作において次のように記しています:
「帰還法には、性別や出生場所に関係なく、世界中のすべてのユダヤ人の子孫を対象に、イスラエル市民権を付与すると定義されている。しかし同法は同時に、厚かましいほどに非民主的である。なぜなら、パレスチナ人の帰還の権利を完全に否定しているからだ。それは、イスラエル(の占領地)にもともと居住していたり1984年に追放されたパレスチナ人住民に対し、以前のように寄り集まって互いの側で暮らすことを許さないということを意味する。本来の住民の祖国帰還権利を否定しながら、その土地とは何の関係もない人々にこのような権利を与えることは、シオニストが行っている非民主的な行動の一例である」
パッペ氏はこのような流れから、占領者たるイスラエル政権が行う圧制に反対して形成されたパレスチナの運動を、軍事行動を取ることもあっても支持しており、彼らの行動が、このような酷い圧制に対する自然な反応であると考えています。同氏は『イスラエルに関する誤った10の伝説』で、パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマスを、パレスチナ人の権利回復運動として、「ハマス運動は、(中略)1つの解放運動であり、しかも合法ですらある」と説明しています。
同氏はまた、「私たちは、イスラエルの影響下に置かれて、ハマスをテロリスト集団と呼ぶことや、ハマス反対派が主張する内容を、そのまま受け入れるべきではない。現実は逆に、ハマスが『自分たち、つまりパレスチナ人を守るため』に戦っているのである」と指摘しました。
パッペ氏は著書の中でさらに、イスラエルだけでなくそれを支持する国々についても、多くの意味を含む興味深い皮肉を記しています。
同氏は、「ガザ地区の人々を徐々に死に追い込むようなイスラエル人の行動を阻止し、彼らが折れるように説得するには、『平和の船』以上のものが必要となるようである」とし、恐怖心からイスラエル政権と同盟を結んでその偽りの支持者となった者たちを当てこすりながら、「世界平和、地域の安定、パレスチナでの和解成立のために、イスラエルへ圧力をかけることに、それほど費用はかかるようには見えないのだが」としています。
パッペ氏は、同書の別の部分でも、勇敢にもイスラエルの政策を「今も拡大する大虐殺」と断言し、「この言葉は、2006年以降のパレスチナ・ガザ地区でのイスラエル軍の行動を説明する、唯一かつ適切な表現だ」としています。

イスラエルの創作されたアイデンティティーについては、同氏だけでなく、他の批評家たち、そして強奪者たるイスラエル政権の弾圧的政策に反対する人々も、これを世界の人々に対して明らかにする著作や記事を著しています。
パッペ氏の持つ見解は、シオニズムが19世紀半ばに形を成した当初から、中欧および東欧のユダヤ人コミュニティで生まれた、ユダヤ人の文化的存続を考慮しての、単なる解釈、ただし非人間的な解釈であったというものです。
同氏やその他の評論家らは、イスラエルという存在が、巧妙かつ緻密に作られた現実とは異なる一連の伝説を基にしていること、そして、パレスチナ人の持っている、彼ら自身の土地に関した倫理的・精神的権利に疑問を突きつけていることを、自著で示そうとしているのです。
これに加えてパッペ氏は、西側メディアの主要な流れや政治の中心にいる者たちが、これらの現実とは異なる伝説を疑う余地のない歴然とした事実として受けとめ、世界の人々にこれを信じ込ませようと、さまざまなメディアを通じてこの大きな嘘を広めてきたことも指摘しています。